徴徴4−19(例規)
昭和33年6月4日

国税局長 殿

国税庁長官

 標題のことについて、最高裁判所事務総局民事局長から別紙一のとおり照会があつたので、別紙二のとおり回答したから、了知されたい。

【別紙二】

徴徴4−18
昭和33年6月4日

最高裁判所事務総局民事局長 関根小郷 殿

国税庁長官 北島武雄

標題のことについては、貴見のとおりと考えられます。
 なお、照会事項に関する岐阜地方裁判所長の意見のうちに、当庁の見解又は取扱を誤解していると思われる点があるので念のために、下記のとおり申し添えます。

一 照会事項(一)の2について

 「売却決定の日以前に競売申立の登記がなされ、かつ、滞納者に対し売却代金の残余金を交付する前に競売開始決定通知が収税官吏等に到着しなければ、強制執行による差押は無効とすると指示している」とあるが、当庁としては、無効として指示しているのではなくて、残余金を滞納者に交付した後は、裁判所に対して交付することがないことを定めているものであること。(滞納処分と強制執行等の手続の調整に関する法律の逐条通達(昭和32年9月30日付徴徴4−30外2課共同通達)の「九十二」参照)

ニ 照会事項(六)について

 「差押通知書及び交付要求書」の副本の添付については、当庁では特に通達で指示しないで、各税国局において、適宜行うこととしていること。

【別紙一】

最高裁判所民事甲第一六二号
昭和33年5月12日

最高裁判所事務総局民事局長 関根小郷

国税庁徴収部長 殿

 標記について、岐阜地方裁判所所長から別紙の照会がありました。
 当局としては、左記のとおり考えますが、貴見を承知したく、照会します。

(一)について

1 滞納処分による差押がされている不動産に対する強制競売手続開始の決定は、先行の滞納処分による売却により滞納者が目的物の所有権を失う時まですることができる。

2 強制競売手続開始の決定による差押の効力の発生については、一般の場合と同様であり、法第一二条第二項の規定による通知は、差押の発生とは関係がない。

3 執行裁判所は、滞納者が当該不動産の所有権を失つた後に強制競売手続開始の決定をしたことが明らかになつたときは、民事訴訟法第六五三条の規定により、直ちに、競売手続を取り消すべきであるが、所問の通知については、2の趣旨により、とくに考慮する必要はない。

(二)について

1 強制競売手続開始の決定があつた不動産に対する滞納処分による差押は、先行の強制執行による売却により債権者が目的物の所有権を失う時まですることができる。

2 滞納処分による差押の効力の発生については、一般の場合と同様であり、法第二九条第二項の規定による通知は、差押の効力の発生とは関係がない。

3 通知の必要はない。

4 3により了承されたい。

(三)について

1 債権者が数人あるかぎり、配当手続を実施すべきである。

2 強制執行は、当然終了したものとして取り扱うべきであるから、事件の終局種別は、収税官吏等から売却代金の残余が生じなかつた旨の通知があつたことによる終了とする。

(四) 所問の事件は、当該仮差押債権の存否が確定し、これに伴う手続が終了した時に完結する。なお、抵当権者は、滞納処分においてその債権額につき弁済を受けることができるから(国税徴収法第二八条第二項参照)配当手続を要しないが、仮差押債権者が数人ある場合で各債権者を満足させないときは、配当手続をすべきである。

(五) 不動産に関する滞納処分続行承認の決定は、民事訴訟法第二〇四条第一項の規定により、差押債権者、債務者および滞納処分続行承認の決定の請求者に相当と認める方法で告知すれば足りる。

(六) 強制競売手続開始決定通知書には、その副本を添付する必要はない。

【別紙】

岐地裁訟第三七号(訟ろ一二)
昭和33年3月4日

岐阜地方裁判所長 江場盛次

最高裁判所事務総局民事局長 関根小郷 殿

 標記について左記のとおり疑義がありますので貴局の御意見を承りたく照会します。

(一)

1 強制執行による差押は、滞納処分の如何なる段階まで許されるか。

2 右差押は、どのような手続を完了したとき有効になされたと云えるか。

3 収税官吏等から、強制執行による差押のされたのが右1の段階経過後である旨の通知を受けたとき、裁判所は如何にして事件を完結させるべきか。
 1について、法は何ら規定を設けていませんが、国税庁と自治庁では、それぞれ通達(昭和32年9月30日各国税局長宛国税庁長官通達、同月27日各都道府県知事宛自治庁事務次官通達)で公売処分による売却決定の日までとの見解を示しております。この見解が妥当なのでありましようが、一応民事局の御意見を御伺いします。
 2について国税庁と自治庁では、売却決定の日以前に競売申立の登記がなされ、かつ、滞納者に対し売却代金の残余金を交付する前に競売開始決定通知が収税官吏等に到着しなければ強制執行による差押は無効とすると指示しているのであります。(前記通達参照)しかしながら、債権者に対する関係では競売開始決定が送達されたとき差押の効力を生ずることから考えても、開始決定通知が二重差押を許す終期までに収税官吏等に送達されればそれによつて二重差押は有効になされたものと見るべきで、対抗要件に過ぎない競売申立登記を二重差押の有効要件とする解釈は誤りではないかと考えられるのであります。
 3は競売手続取消決定の要否についての疑問であります。
 取消決定が必要であるとすれば、その手続は民訴653条に準ずるのでしょうか。また不要とすれば事件終局の日および終局種別をどのようにすべきでしょうか。

(二)

1 滞納処分による差押は、強制執行事件の如何なる段階まで許されるか。

2 右差押は、どのような手続を完了したとき有効になされたと認めるべきか。

3 右1の段階経過後に滞納処分による差押がなされたとき、裁判所はその収税官吏等に対し、何時どのような事項を通知すべきか。

4 右の通知書の様式を定める必要はないか。
 1については競落期日の終わりに至るまでと考えますが、この点については法の定めがないのみならず、自治庁は競落許可決定の確定までとしており(前記自治庁事務次官通達参照)、意見調整の必要があると思います。
 2については、(一)2と同趣旨。
 3、4については、差押通知書が受理できない旨を通知するのか、二重差押が無効であることを通知するのか、或いは単に二重差押を許す終期経過後に差押通知書が到着した旨を通知すれば足りるのか、という疑問がありますので、この通知書の様式を一定しておいた方がよいと思われるのであります。
 かりに前記1が競落期日の終りまでとすると、その後にされた二重差押は無効の筈でありますが、競落人が代金不払いのため再競売が行われる場合はその二重差押が遡つて有効となりますから、差押通知書が競落期日後に到着したからと云つて、直ちに収税官吏等に対し通知を出すことはいささか早計のように思われますし、代金支払期日後では遅すぎるようでもあり、取扱いに疑問があります。

(三)

1 法第17条で準用する法第6条第1項により交付を受けた売却代金の残余が競売手続の費用に満たないときでも、配当手続を実施すべきか。

2 同条第3項の、売却代金の残余が生じなかつた旨の通知を受けた場合、事件の終局種別をどうするか。
 1のような場合は競売手続が行われない筈なので、売却代金が手続の費用にも満たないのに配当手続が行われることを民訴法は予想していないのであります。また債権に対する配当が皆無とわかつていながら利害関係人を呼び出して配当期日を開くことは、費用と時間を空費するに過ぎません。
 そこで、そのような場合には交付を受けた残余金から手続の費用を控除して残余が生じなかつた旨を債権者等に通知するのみで事件を完結させることはできないかと思うのであります。
 2について、民事局ではその旨を債権者等に通知すれば足り、競売手続の取消決定を必要としないとの御意見の由でありますが、事件は自然終了するとしても終局種別が決まらないと、事件簿等の処理上、非常に困るのであります。

(四) 裁判所が法第18条第2項により売却代金の残余の交付を受けたとき立件する事件の完結方法如何。
 本問については、事件が申立によるものでなく、それに対する裁判もないわけですから、立件すると同時に既済としても良いのではないかと思います。
 また、交付を受けた残余金に対しては、配当要求ができないのですから、仮差押債権者、抵当権者が二名以上ある場合は、配当手続をしておくべきではないでしようか。

(五) 滞納処分の続行承認の決定をした場合、これを利害関係人に通知する必要はないか。
 規則27条は、承認請求があつたときその旨を通知すべきことを定めていますが、決定をしたときの通知については規定がありません。しかし利害関係としては、承認請求があつたこと以上に承認の決定がされたか否かを知る必要があるのではないかと思います。強制執行続行の決定をした場合には、規則第20条によつてこれを利害関係人に通知しなければならないのに本問の通知をなすべき規定がないのは疑問であります。

(六) 事務総長通達第17によれば、収税官吏等が裁判所に差押通知書を交付する場合その副本を添付すべきように思われるが、その逆の場合、則ち裁判所が収税官吏等に競売手続開始決定通知書を交付するときは、通知書の副本を添付する必要がないか。
 昭和32年8月26日に行われた最高裁と国税庁、自治庁との協議会では、相互に副本の添付を実施する旨了解ができているそうでありますが(国税庁側協議事項要領による)、それが事実とすれば事務総長通達で右趣旨が明確になつていないのは、その後において裁判所は副本を添付する必要がないと考えられたからなのでしょうか。

以上