昭和32・2・7 徴徴4−10
国税庁長官・国税局長

 自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)に基く所有権の移転登記が架空の者の名義によりされている場合の所有権の移転登記のまっ消手続については、法務省民事局長事務代理から各法務局長等に対する別紙のとおりの昭和31年11月16日付法務省民事甲第2636号「自作農創設特別措置法に基く登記の抹消の取扱について」通達(以下「民事局長代理通達」という。)により、不動産登記法(明治32年法律第24号)第142条第2項の規定に準じ、除権判決の謄本を添付して嘱託することに定められたから、架空名義でされた所有権移転登記のまっ消手続は、下記に留意のうえ行うこととされたい。

1 国税徴収法逐条通達(昭和30年12月28日付徴徴1−160外9課共同通達)第23条ノ3関係「38」に定める「実在しない者」は、民事局長代理通達の「架空の人物」または「架空の者」と同意義であるから、当該実在しない者に権利の移転登記等がされている場合の当該移転登記等のまっ消については、この手続により行うこと。

2 民事局長代理通達は、自作農創設特別措置法により官庁の嘱託により行われた場合であるが、他の架空名義でされた所有権移転登記のまっ消手続についても同様にこの手続によるのであり、市町村長等相当の証明力があると認められる第三者の証明書を添付しても登記権利者が単独でまっ消登記をすることは許されないものであること。

3 除権判決は、民事訴訟法(現 公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律)(明治23年法律第29号)に定める公示催告手続により行うものであるから、登記をすべき地の簡易裁判所に公示催告の申立等の手続を行うものとすること(民事訴訟法(現 平成8年法律第109号)第18条(現第5条13号)、第17条(現第5条12号)、(現 公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律)第764条第2項、第765条等参照)。(現第5条13号)
 なお、公示催告の手続については、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律(昭和22年法律第194号)の適用があることに留意すること。

※(編注)

国税徴収法遂条通達第23条の3関係

(売買等に基く権利移転の登記又は登録の嘱託)

35 売買その他の譲渡により、不動産等の実体的権利が滞納者に帰属しているにもかかわらず、権利移転の登記又は登録がされていない場合において、当該不動産等の差押の登記又は登録を嘱託しようとするときは、滞納者の有する権利移転の登記又は登録の請求権を代位行使して権利移転の登記又は登録を申請するとともに、差押の登記又は登録を嘱託する。この場合において、登記義務者又は登録義務者が協力しないため、訴により権利移転の登記又は登録を請求するときは、原則としてあらかじめ処分禁止の仮処分又は仮登記仮処分(不動産登記法第32条)を申請するものとする。(民法第423条、不動産登記法第46条ノ2、船舶登記規則第1条、建設機械登記令第9条、自動車登録令第19条、航空機登録令第15条)


(架空名義による登記又は登録のまっ消)

38 滞納者の不動産等について実在しない者又はその者の承諾を得ない第三者に権利の移転の登記又は登録がされている場合においては、つとめて滞納者をして当該権利の移転の登記又は登録をまっ消させるとともに、差押の登記又は登録を嘱託する。この場合において、その者の承諾を得ない第三者が協力しないため、訴によりまっ消の登記又は登録を請求するときの措置については、35の後段に準ずる。

別紙

法務省民事甲第2636号
昭和31年11月16日

法務局長 御中
地方法務局長 御中

法務省民事局長事務代理 平賀健太

 標記の件について、別紙甲号のとおり横浜地方法務局長から問合せがあったので、別紙乙号のとおり回答したから、この旨貴管下登記官吏に周知方しかるべく取り計らわれたい。

別紙甲号

登第1954号
昭和31年10月22日

法務省民事局長
事務代理 平賀健太殿

横浜地方法務局長 三宅琢磨



 自作農創設特別措置法に基く売渡の登記の登記名義人が架空の人物であることが判明したが、この登記を抹消するには、当該嘱託官庁より、当該登記名義人が登記嘱託当時よりその住所地の市区町村に居住しない旨の市区町村長の証明又は架空の人物である旨の農業委員会の証明を添付して、錯誤を原因とする抹消の登記を嘱託せしめるほかないものと考えますが、いささか疑義がありますので、何分の御指示をお願いいたします。

別紙乙号

法務省民事甲第2636号
昭和31年11月16日

横浜地方法務局長 殿

法務省民事局長事務代理 平賀健太

 本年10月22日付登第1954号で問合せのあった標記の件については、架空の者の名義になされた売渡による所有権移転の登記は、その嘱託者において、抹消を嘱託することができるが、この場合の嘱託書には、不動産登記法第142条第2項の規定に準じ、除権判決の謄本を添付すべきであって、所問の書面によることはできないものと考える。