(当該業務に係るものの意義)

161−33 法第161条第1項第11号に掲げる「当該業務に係るもの」とは、国内において業務を行う者に対し提供された同号イ、ロ又はハに規定する資産の使用料又は対価で、当該資産のうち国内において行う業務の用に供されている部分に対応するものをいう。したがって、例えば、居住者又は内国法人が非居住者又は外国法人から提供を受けた工業所有権等を国外において業務を行う他の者(以下この項において「再実施権者」という。)の当該国外における業務の用に提供することにより当該非居住者又は外国法人に対して支払う使用料のうち、再実施権者の使用に係る部分の使用料(当該居住者又は内国法人が再実施権者から受領する使用料の額を超えて支払う場合には、その受領する使用料の額に達するまでの部分の金額に限る。)は、同号に掲げる使用料に該当しないことに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5改正)。

(工業所有権等の意義)

161−34 法第161条第1項第11号イに規定する「工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの」(以下第161条関係において「工業所有権等」という。)とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の工業所有権及びその実施権等のほか、これらの権利の目的にはなっていないが、生産その他業務に関し繰り返し使用し得るまでに形成された創作、すなわち、特別の原料、処方、機械、器具、工程によるなど独自の考案又は方法を用いた生産についての方式、これに準ずる秘けつ、秘伝その他特別に技術的価値を有する知識及び意匠等をいう。したがって、ノーハウはもちろん、機械、設備等の設計及び図面等に化体された生産方式、デザインもこれに含まれるが、海外における技術の動向、製品の販路、特定の品目の生産高等の情報又は機械、装置、原材料等の材質等の鑑定若しくは性能の調査、検査等は、これに該当しない(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。

(使用料の意義)

161−35 法第161条第1項第11号イの工業所有権等の使用料とは、工業所有権等の実施、使用、採用、提供若しくは伝授又は工業所有権等に係る実施権若しくは使用権の設定、許諾若しくはその譲渡の承諾につき支払を受ける対価の一切をいい、同号ロの著作権の使用料とは、著作物(著作権法第2条第1項第1号((定義))に規定する著作物をいう。以下この項において同じ。)の複製、上演、演奏、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物の利用又は出版権の設定につき支払を受ける対価の一切をいうのであるから、これらの使用料には、契約を締結するに当たって支払を受けるいわゆる頭金、権利金等のほか、これらのものを提供し、又は伝授するために要する費用に充てるものとして支払を受けるものも含まれることに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5改正)。

(図面、人的役務等の提供の対価として支払を受けるものが使用料に該当するかどうかの判定)

161−36 工業所有権等を提供し又は伝授するために図面、型紙、見本等の物又は人的役務を提供し、かつ、当該工業所有権等の提供又は伝授の対価の全てを当該提供した物又は人的役務の対価として支払を受ける場合には、当該対価として支払を受けるもののうち、次のいずれかに該当するものは法第161条第1項第11号イに掲げる使用料に該当するものとし、その他のものは当該物又は人的役務の提供の対価に該当するものとする(平28課2−4、課法11−8、課審5−5改正)。

(1) 当該対価として支払を受ける金額が、当該提供し又は伝授した工業所有権等を使用した回数、期間、生産高又はその使用による利益の額に応じて算定されるもの

(2) (1)に掲げるもののほか、当該対価として支払を受ける金額が、当該図面その他の物の作成又は当該人的役務の提供のために要した経費の額に通常の利潤の額(個人が自己の作成した図面その他の物を提供し、又は自己の人的役務を提供した場合には、その者がその物の作成又は人的役務の提供につき通常受けるべき報酬の額を含む。)を加算した金額に相当する金額を超えるもの

(注) 上記により物又は人的役務の提供の対価に該当するとされるものは、通常その図面等が作成された地又は人的役務の提供が行われた地に源泉がある所得となる。
なお、これらの所得のうち、国内源泉所得とされるものは、同項第1号、第6号又は第12号に掲げる所得に該当する。

(使用料に含まれないもの)

161−37 工業所有権等又は著作権の提供契約に基づき支払を受けるもののうち次に掲げる費用又は代金で、当該契約の目的である工業所有権等又は著作権の使用料として支払を受ける金額と明確に区分されているものは、161−35及び161−36にかかわらず、法第161条第1項第11号イ又はロに掲げる使用料に該当しないものとする(平28課2−4、課法11−8、課審5−5改正)。

(1) 工業所有権等の提供契約に基づき、工業所有権等の提供者が自ら又は技術者を派遣して国内において人的役務を提供するために要する費用(例えば、派遣技術者の給与及び通常必要と認められる渡航費、国内滞在費、国内旅費)

(2) 工業所有権等の提供契約に基づき、工業所有権等の提供者のもとに技術習得のために派遣された技術者に対し技術の伝授をするために要する費用

(3) 工業所有権等の提供契約に基づき提供する図面、型紙、見本等の物の代金で、その作成のための実費の程度を超えないと認められるもの

(4) 映画フィルム、テレビジョン放送用のフィルム又はビデオテープの提供契約に基づき、これらの物とともに提供するスチール写真等の広告宣伝用材料の代金で、その作成のための実費の程度を超えないと認められるもの

(工業所有権等の現物出資があった場合)

161−38 非居住者又は外国法人が、内国法人に対し当該内国法人の国内において行う業務に係る工業所有権等の現物出資をした場合には、その出資により取得する株式又は持分は、それぞれ次により権利の譲渡の対価又は使用料に該当するものとする(平28課2−4、課法11−8、課審5−5、平29課法10−13、課個2−22、課審5−8改正)。

(1) 現物出資をしたものが工業所有権又はその出願権である場合には、これらの権利の譲渡の対価とする。

(2) 現物出資をしたものが(1)以外のもの(例えば、工業所有権の実施権又は工業所有権若しくはその出願権の目的となっていない特別の技術による生産方式等)である場合には、その出資をした権利又は技術の使用料とする。

(注) 工業所有権等を提供することにより取得するものが権利の譲渡の対価に該当するか又は使用料に該当するかの区別は、租税条約(例えば、日本メキシコ租税条約第12条、日本ブラジル租税条約第11条等)において軽減税率の適用上譲渡の対価と使用料とを区別している場合に限り行えば足りるものであることに留意する。

(備品の範囲)

161−39 令第284条第1項((国内業務に係る使用料等))に規定する器具及び備品には、美術工芸品、古代の遺物等のほか、観賞用、興行用その他これらに準ずる用に供される生物が含まれることに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。