第3編 非居住者及び法人の納税義務

第1章 国内源泉所得

法第161条《国内源泉所得》関係

(その他事業を行う一定の場所)

161−1 令第1条の2第1項第3号((恒久的施設の範囲))に掲げる「その他事業を行う一定の場所」には、倉庫、サーバー、農園、養殖場、植林地、貸ビル等のほか、非居住者又は外国法人が国内においてその事業活動の拠点としているホテルの一室、展示即売場その他これらに類する場所が含まれる(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加、平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8改正)。

(準備的な性格のものの意義)

161-1の2 令第1条の2第4項に規定する事業の遂行にとって準備的な性格のものとは、本質的かつ重要な部分を構成する活動の遂行を予定し当該活動に先行して行われる活動をいうことに留意する(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5-8追加)。

(注) 本文の「先行して行われる活動」に該当するかどうかの判定は、その活動期間の長短によらないことに留意する。

(補助的な性格のものの意義)

161-1の3 令第1条の2第4項に規定する事業の遂行にとって「補助的な性格のもの」とは、本質的かつ重要な部分を構成しない活動で、その本質的かつ重要な部分を支援するために行われるものをいうのであるから、例えば、次に掲げるような活動はこれに該当しない(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8追加)。

(1) 事業を行う一定の場所の事業目的が非居住者又は外国法人の事業目的と同一である場合の当該事業を行う一定の場所において行う活動

(2) 非居住者又は外国法人の資産又は従業員の相当部分を必要とする活動

(3) 顧客に販売した機械設備等の維持、修理等(当該機械設備等の交換部品を引き渡すためだけの活動を除く。)

(4) 専門的な技能又は知識を必要とする商品仕入れ

(5) 地域統括拠点としての活動

(6) 他の者に対して行う役務の提供

(1年を超える建設工事等)

161−2 令第1条の2第2項の建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供(以下この項において「建設工事等」という。)で1年を超えて行われるものには、次に掲げるものが含まれる(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加、平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8改正)。

(1) 建設工事等に要する期間が1年を超えることが契約等からみて明らかであるもの

(2) 一の契約に基づく建設工事等に要する期間が1年以下であっても、これに引き続いて他の契約等に基づく建設工事等を行い、これらの建設工事等に要する期間を通算すると1年を超えることになるもの

(注)1 建設工事等は、その建設工事等を独立した事業として行うものに限られないのであるから、例えば、非居住者又は外国法人が機械設備等を販売したことに伴う据付けの工事等であっても当該建設工事等に該当することに留意する。

 2 上記(1)又は(2)に該当しない建設工事等であっても、令第1条の2第3項の規定の適用により、1年を超えて行われるものに該当する場合があることに留意する。

(契約の締結の意義)

161−3 令第1条の2第7項の「契約」の締結には、契約書に調印することのほか、契約内容につき実質的に合意することが含まれる。(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加、平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8改正)。

(契約の締結のために主要な役割を果たす者の意義)

161−4 令第1条の2第7項に規定する「主要な役割を果たす者」とは、同項各号に掲げる契約が締結されるという結果をもたらす役割を果たす者をいい、例えば、非居住者又は外国法人の商品について販売契約を成立させるために営業活動を行う者がこれに該当する(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8追加)。

(反復して非居住者又は外国法人に代わって行動する者の範囲)

161−5 令第1条の2第7項に規定する「契約締結代理人等」には、長期の代理契約に基づいて非居住者又は外国法人に代わって行動する者のほか、個々の代理契約は短期的であるが、2以上の代理契約に基づいて反復して一の非居住者又は外国法人に代わって行動する者が含まれる(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8追加)。

(注) 本文の「一の非居住者又は外国法人に代わって行動する者」は、特定の非居住者又は外国法人のみに代わって行動する者に限られないことに留意する。

(独立代理人)

161−6 令第1条の2第8項に規定する「国内において非居住者又は外国法人に代わって行動する者が、その事業に係る業務を、当該非居住者又は外国法人に対し独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合」における当該者は、次に掲げる要件のいずれも満たす必要があることに留意する(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8追加)。

(1) 代理人として当該業務を行う上で、詳細な指示や包括的な支配を受けず、十分な裁量権を有するなど本人である非居住者又は外国法人から法的に独立していること。

(2) 当該業務に係る技能と知識の利用を通じてリスクを負担し、報酬を受領するなど本人である非居住者又は外国法人から経済的に独立していること。

(3) 代理人として当該業務を行う際に、代理人自らが通常行う業務の方法又は過程において行うこと。

(発行済株式)

161−7 令第1条の2第9項に規定する「発行済株式」には、その株式の払込み又は給付の金額(以下161―7の2において「払込金額等」という。)の全部又は一部について払込み又は給付(以下161―7の2において「払込み等」という。)が行われていないものも含まれるものとする(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8追加)。

(直接又は間接保有の株式)

161−7の2 令第1条の2第9項に規定する「特殊の関係」(以下この項において「特殊の関係」という。)に該当するかどうかを判定する場合の直接又は間接に保有する株式には、その払込金額等の全部又は一部について払込み等が行われていないものも含まれるものとする(平30課個2‐29、課法12‐104、課審5‐8追加)。

(注) 名義株は、その実際の権利者が保有するものとして特殊の関係の有無を判定することに留意する。


〔恒久的施設帰属所得(第1号関係)〕

(恒久的施設帰属所得の認識に当たり勘案されるその他の状況)

161−8 恒久的施設を有する非居住者の法第161条第1項第1号に掲げる国内源泉所得(同条第3項の規定により同号に掲げる所得とされるものを除く。161−9において「恒久的施設帰属所得」という。)の認識に当たり勘案される同号に規定する「その他の状況」には、恒久的施設に帰せられるリスク及び恒久的施設に帰せられる外部取引が含まれることに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。

(注)1 リスクとは、為替相場の変動、市場金利の変動、経済事情の変化その他の要因による利益又は損失の増加又は減少の生ずるおそれをいう。以下161−10までにおいて同じ。

(注)2 リスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能を恒久的施設が果たす場合には、当該リスクは当該恒久的施設に帰せられる。

(注)3 外部取引とは、恒久的施設を有する非居住者が他の者との間で行った取引をいう。161−9において同じ。

(恒久的施設帰属所得の認識)

161−9 恒久的施設帰属所得は、非居住者の恒久的施設及びその事業場等(法第161条第1項第1号に規定する事業場等をいう。以下この項において同じ。)が果たす機能(リスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能、資産の帰属に係る人的機能その他の機能をいう。以下この項において同じ。)並びに当該恒久的施設及びその事業場等に関する事実の分析を行うことにより、当該恒久的施設が果たす機能、当該恒久的施設に帰せられるリスク、当該恒久的施設において使用する資産、当該恒久的施設に帰せられる外部取引、内部取引(同号に規定する内部取引をいう。161−11において同じ。)その他の恒久的施設帰属所得の認識に影響を与える状況を特定し、これらの状況を総合的に勘案して認識する。この場合において、当該機能及び当該事実の分析は、当該非居住者が行った外部取引ごと又は当該恒久的施設とその事業場等との間で行われた資産の移転、役務の提供等の事実ごとに、かつ、当該恒久的施設が当該非居住者から独立して事業を行う事業者であるものとして行うことに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。

(恒久的施設が果たす機能の範囲)

161−10 法第161条第1項第1号に規定する「恒久的施設が果たす機能」には、恒久的施設が果たすリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能、資産の帰属に係る人的機能、研究開発に係る人的機能、製造に係る人的機能、販売に係る人的機能、役務提供に係る人的機能等が含まれることに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。

(注) 本文の「恒久的施設が果たすリスクの引受け又はリスクの管理に関する人的機能」とは、当該恒久的施設を通じて行う事業に従事する者が行うリスクの引受け又はリスクの管理に関する積極的な意思決定が必要とされる活動をいう。

(恒久的施設において使用する資産の範囲)

161−11 法第161条第1項第1号に規定する「恒久的施設において使用する資産」には、165の3−4の判定により恒久的施設に帰せられることとなる資産のほか、例えば、賃借している固定資産(令第6条第8号イからソまで((減価償却資産の範囲))に掲げる無形固定資産を除く。)、使用許諾を受けた無形資産(令第291条の2第2項第1号イからソまで((租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得))に掲げるもののほか、顧客リスト、販売網等の重要な価値のあるものをいう。)等で当該恒久的施設において使用するものが含まれることに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加、平28課個2−22、課審5−18、令2課個2−12、課法11−3、課審5−6改正)。

(注) 本文の「賃借」及び「使用許諾」には、賃借及び使用許諾に相当する内部取引が含まれる。


〔国内にある資産の所得(第2号及び第3号関係)〕

(国内にある資産)

161−12 法第161条第1項第2号又は第3号の規定の適用上、非居住者の有する資産(棚卸資産である動産を除く。以下この項において同じ。)が国内にあるかどうかは、令第280条((国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得))又は令第281条((国内にある資産の譲渡により生ずる所得))に定めるところによるもののほか、おおむね次に掲げる資産の区分に応じ、それぞれ次に掲げる場所が国内にあるかどうかにより判定する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。

(1) 動産その所在地。ただし、国外又は国内に向けて輸送中の動産については、その目的地とする。

(2) 不動産又は不動産の上に存する権利その不動産の所在地

(3) 登録された船舶又は航空機その登録機関の所在地

(4) 鉱業権、租鉱権又は採石権(これらの権利に類する権利を含む。)その権利に係る鉱区又は採石場の所在地

(振替公社債等の運用又は保有)

161−13 令第280条第1項第1号に掲げる債券には、社債、株式等の振替に関する法律又は廃止前の社債等登録法の規定により振替口座簿に記載若しくは記録又は登録されたため債券の発行されていない公社債が含まれる。(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)

(資産の運用又は保有により生ずる所得)

161−14 法第161条第1項第2号に掲げる所得には、次のようなものが該当する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加、令3課個2-10、課法11-28、課審5-4改正)。

(1) 公社債を国内において貸し付けた場合の貸付料及び令第280条第1項第1号に掲げる国債、地方債、債券若しくは資金調達のために発行する約束手形に係る償還差益又は発行差金

(2) 令第280条第1項第2号に掲げる債権の利子及び当該債権又は法第161条第1項第10号に規定する貸付金に係る債権をその債権金額に満たない価額で取得した場合におけるその満たない部分の金額

(3) 国内にある供託金について受ける利子

(4) 個人から受ける動産(当該個人が国内において生活の用に供するものに限る。)の使用料

(特殊関係株主等が譲渡した発行済株式又は出資の総数又は総額に占める割合の判定時期)

161−15 令第281条第6項第2号に規定する特殊関係株主等の譲渡した株式又は出資の総数又は総額が同号の内国法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の5%以上になるかどうかは、同号に規定する譲渡年の中途において当該内国法人が行った増資等により当該発行済株式又は出資の総数又は総額に異動があった場合においても、当該譲渡年において最初に当該株式又は出資を譲渡した直前の当該発行済株式又は出資の総数又は総額に基づいて計算することに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5追加)。

〔国内にある土地等の譲渡による所得(第5号関係)〕

(土地等の範囲)

161−16 法第161条第1項第5号に掲げる国内にある土地若しくは土地の上に存する権利又は建物及びその附属設備若しくは構築物(以下161−18までにおいて「土地等」という。)には、鉱業権(租鉱権及び採石権その他土石を採掘し又は採取する権利を含む。)、温泉を利用する権利、配偶者居住権(当該配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(土地の上に存する権利を含む。)を当該配偶者居住権に基づき使用する権利を含む。)、借家権及び土石(砂)などは含まれないことに留意する(平28課2−4、課法11−8、課審5−5、令2課資3−7、課個2−18、課法11−4、課審7−9改正)。

(自己又はその親族の居住の用に供するために該当するかどうかの判定)

161−17 令第281条の3《国内にある土地等の譲渡による対価》に規定する「自己又はその親族の居住の用に供するため」には、土地等を譲り受けた者が事業の用若しくは貸付けの用その他居住の用以外の用に供するため又は他への譲渡のために譲り受けた場合は含まれないのであるが、例えば、当該土地等を譲り受けた後居住の用に供していない場合でも、当該土地等を譲り受ける時の現況において自己又はその親族の居住の用に供するために譲り受けたことについて、合理的な理由があるときはこれに含まれることに留意する。(平2直法6−5、直所3−6追加、平17課法8−2、課個2−19、課審4−89改正)

(譲渡対価が1億円を超えるかどうかの判定)

161−18 令第281条の3に規定する土地等の譲渡による対価の金額が1億円を超えるかどうかの判定に当たっては、例えば、当該土地等を居住の用と居住の用以外の用とに供するために譲り受けた個人から支払われるものである場合には、居住の用に供する部分に係る対価の金額及び居住の用以外の用に供する部分に係る対価の金額の合計額により判定することに留意する。(平2直法6−5、直所3−6追加、平17課法8−2、課個2−19、課審4−89改正)