第4款 必要経費等の計算

第1目 家事関連費、租税公課等

法第45条《家事関連費等の必要経費不算入等》関係

(主たる部分等の判定等)

45−1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定する。

(業務の遂行上必要な部分)

45−2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。


(山林所得を生ずべき事業の意義)

45−3 山林所得を生ずべき事業とは、山林の輪伐のみによって通常の生活費を賄うことができる程度の規模において行う山林の経営をいうものとする。

(必要経費に算入される利子税の計算の基礎となる各種所得の金額)

45−4 令第97条第1項第1号《必要経費に算入される利子税の計算》に規定する各種所得の金額並びに同項第3号及び第4号に規定する事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額とは、いわゆる黒字の金額をいい、また、当該各種所得の金額のうち長期保有資産(法第33条第3項第2号《譲渡所得》に掲げる所得の基因となる資産をいう。)に係る譲渡所得の金額又は一時所得の金額については、それぞれ法第33条第3項又は第34条第2項《一時所得》に規定する「特別控除額を控除した金額」の2分の1に相当する金額をいうものとする。(平27課個2-11、課法10-16、課審5-7改正)

(2以上の所得を生ずべき事業を営んでいる場合の各種所得の金額の計算上控除する利子税の計算)

45−5 不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業のうち2以上の所得を生ずべき事業を営む者が納付する利子税で、不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入するそれぞれの所得に係る利子税の額は、事業所得の金額の計算上必要経費に算入する場合にあっては、当該利子税の額の計算の基礎となった所得税に係る年分の各種所得の金額(給与所得の金額及び退職所得の金額を除くものとし、45−4が適用される場合には、その適用後の金額をいう。)の合計額のうちに当該年分の事業所得の金額の占める割合を乗じて計算した金額とし、不動産所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入する場合にあっては、事業所得の場合に準じ、それぞれ各別に計算した金額とする。

(注) 必要経費に算入すべき利子税が確定した年において廃業等により不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行っていない場合には、当該利子税は必要経費に算入することはできない。


〔罰金等(第7号関係)〕

(外国等が課する罰金又は科料に相当するもの)

45−5の2 法第45条第1項第7号かっこ内に規定する「外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するもの」とは、裁判手続(刑事訴訟手続)を経て外国又はその地方公共団体により課されるものをいう。(平11課所4−1追加、平21課個2-29、課審4-52、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12改正)

(注) いわゆる司法取引により支払われたものも、裁判手続(刑事訴訟手続)を経て課された罰金又は科料に相当するものに該当することに留意する。


〔損害賠償金等(第8号関係)〕

(使用人の行為に基因する損害賠償金等)

45−6 業務を営む者が使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているもの(以下この項において「家族従業員」という。)を含む。以下この項において同じ。)の行為に基因する損害賠償金(これに類するもの及びこれらに関連する弁護士の報酬等の費用を含む。)を負担した場合には、次によるものとする。

(1) 当該使用人の行為に関し業務を営む者に故意又は重大な過失がある場合には、当該使用人に故意又は重大な過失がないときであっても、当該業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入しない。

(2) 当該使用人の行為に関し業務を営む者に故意又は重大な過失がない場合には、当該使用人に故意又は重大な過失があったかどうかを問わず、次による。

イ 業務の遂行に関連する行為に基因するものは、当該使用人の従事する業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する。

ロ 業務の遂行に関連しない行為に基因するものは、家族従業員以外の使用人の行為に関し負担したもので、雇用主としての立場上やむを得ず負担したものについては、当該使用人の従事する業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入し、その他のもの(家族従業員の行為に関し負担したものを含む。)については、必要経費に算入しない。

(損害賠償金に類するもの)

45−7 法第45条第1項第8号かっこ内に規定する「これに類するもの」には、慰謝料、示談金、見舞金等の名目のいかんを問わず、他人に与えた損害をほてんするために支出する一切の費用が含まれる。(平23課個2−33、課法9−9、課審4−46、令元課個2−22、課法11−3、課審5−12改正)

(重大な過失があったかどうかの判定)

45−8 令第98条第2項((必要経費に算入されない貨物割に係る延滞税等の範囲))に規定する重大な過失があったかどうかは、その者の職業、地位、加害当時の周囲の状況、侵害した権利の内容及び取締法規の有無等の具体的な事情を考慮して、その者が払うべきであった注意義務の程度を判定し、不注意の程度が著しいかどうかにより判定するものとし、次に掲げるような場合には、特別な事情がない限り、それぞれの行為者に重大な過失があったものとする。(昭60直所3−21、直資3−5、平11課所4−1改正、平27課個2-11、課法10-16、課審5-7、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12改正)

(1) 自動車等の運転者が無免許運転、高速度運転、酔払運転、信号無視その他道路交通法第4章第1節((運転者の義務))に定める義務に著しく違反すること又は雇用者が超過積載の指示、整備不良車両の運転の指示その他同章第3節((使用者の義務))に定める義務に著しく違反することにより他人の権利を侵害した場合

(2) 劇薬又は爆発物等を他の薬品又は物品と誤認して販売したことにより他人の権利を侵害した場合


〔課徴金等(第10号関係)〕

(外国等が納付を命ずる課徴金及び延滞金に類するもの)

45−9 法第45条第1項第10号((家事関連費等の必要経費不算入等))に規定する「外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するもの」とは、外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が、法令等(市場における公正で自由な競争の実現を目的とするものに限る。)に基づいて納付を命ずるもの(同項第7号に掲げる罰金及び科料を除く。以下この項において「外国課徴金」という。)をいう。(平21課個2-29、課審4-52追加、令元課個2-22、課法11-3、課審5-12改正)

(注) 欧州連合によるカルテル等違反への制裁金は、外国課徴金に該当する。


〔簿外経費(第3項関係)〕

(「計算の基礎とされていた金額」の意義)

45−10 法第45条第3項の「計算の基礎とされていた金額」とは、同項の居住者(以下45−14までにおいて「居住者」という。)が提出した確定申告書(当該確定申告書に係る同項に規定する修正申告書を含む。)に記載された不動産所得、事業所得、山林所得若しくは雑所得に係る総収入金額から当該確定申告書に記載されたこれらの所得の金額を差し引いた金額(これらの所得の金額の計算において、損失の金額が生ずる場合には、当該総収入金額に当該損失の金額を加えた金額)を構成する同項に規定する売上原価の額及び費用の額(以下45−14までにおいて「売上原価の額等」という。)又は青色申告決算書若しくは収支内訳書に記載された売上原価の額等をいうのであるが、これらの書類にこれらの金額の記載がない場合(青色申告決算書及び収支内訳書の提出がない場合を含む。)であっても、当該居住者が保存する帳簿書類その他の物件により、売上原価の額等を明らかにした場合には、当該売上原価の額等を「計算の基礎とされていた金額」と取り扱って差し支えない。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

(帳簿書類その他の物件の意義)

45−11 法第45条第3項第1号イ又はロに掲げる帳簿書類その他の物件とは、同項各号の取引が行われたことを明らかにする、又は推測させる一切の帳簿書類その他の物件で居住者が保存しているものをいうことに留意する。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

(取引が行われたことが推測される場合)

45−12 法第45条第3項第2号の取引が行われたことが推測される場合とは、居住者が保存する帳簿書類その他の物件により、その取引が行われたことが推測される場合をいうのであるが、例えば、居住者の所得税に関する調査において、当該居住者が帳簿書類その他の物件の提示又は提出をした場合に、当該帳簿書類その他の物件に、取引の年月日や具体的な内容は記載されているが金額が記載されていないときその他その取引が存在すると見込まれるような事実の記載があるときは、同号の取引が行われたことが推測される場合に該当することに留意する。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

(相手方に対する調査その他の方法)

45−13 法第45条第3項第2号の「相手方に対する調査その他の方法」には、例えば、次に掲げる方法が該当することに留意する。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

(1) 通則法第74条の2第1項((当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権))の規定による質問検査権の行使に基づく相手方に対する調査

(2) 通則法第74条の7の2第1項((特定事業者等への報告の求め))の規定による同項に規定する特定事業者等への報告の求め

(3) 通則法第74条の12第1項((当該職員の事業者等への協力要請))の規定による同項の事業者又は官公署への協力の求め

(4) 取引の相手方が国税に関する法律その他の法令の規定に基づき所轄税務署長に提出した納税申告書、当該納税申告書に添付された書類その他当該相手方が法令の規定に基づき所轄税務署長に提出した書類の確認

(5) 居住者から提出又は提示のあった取引の相手方が保存する当該取引に関する帳簿書類その他の物件の写しの確認

(注) (1)に掲げる相手方に対する調査は、相手方が支配又は管理をする場所(事業所等)等に臨場して行うものに限られず、個々の実情に応じ、相手方に電話をかけ、又は文書を発送して回答を求める方法によることもできることに留意する。なお、相手方が国外にある者である場合には、通常、当該相手方に対し通則法第74条の2第1項の規定による質問検査権の行使ができないため、(1)に掲げる方法以外の方法によることとなる。

(所得金額を推計する場合の本規定の適用)

45−14 法第45条第3項の規定の適用を受ける居住者について、法第156条((推計による更正又は決定))の規定により、所得金額を推計する場合には、同項の規定を適用した後の必要経費の額を基礎として所得金額を推計することとなることに留意する。
この場合の必要経費の額は、次に掲げる金額を合計して算出することとする。(令4課個2-13、課法12-16、課審5-9追加)

(1) 推計した令第98条の2((必要経費に算入される資産の額))に規定する資産の取得に直接要した費用の額

(2) 推計した売上原価の額等(45−10に定める「計算の基礎とされていた金額」に係るものに限る。)

(3) 次に掲げる金額

イ 法第45条第3項第1号の規定により、明らかとなった売上原価の額等

ロ 法第45条第3項第2号の規定により、税務署長が生じたと認める売上原価の額等

(注) 事業場への旅費交通費など居住者が営む業務の内容から、確実に生じたと認められる売上原価の額等については、上記(3)ロの金額と取り扱って差し支えない。


法第46条《所得税額から控除する外国税額の必要経費不算入》関係

(必要経費算入と税額控除との選択方法)

46−1 外国所得税の額について、必要経費若しくは支出した金額に算入するか、又は外国税額控除をするか若しくは法第138条《源泉徴収税額等の還付》の規定により還付を受けるかどうかの選択は、各年ごとに、その年中に確定した外国所得税の額の全部について行わなければならないものとする。

(注) 利子所得、配当所得、給与所得、退職所得又は譲渡所得をその計算の基礎とした外国所得税の額について外国税額控除をするときは、不動産所得、事業所得、山林所得、雑所得又は一時所得をその計算の基礎とした外国所得税の額についても、必要経費又は支出した金額に算入することはできない。