(不動産所得の基因となっていた建物の賃借人に支払った立退料)

37−23 不動産所得の基因となっていた建物の賃借人を立ち退かすために支払う立退料は、当該建物の譲渡に際し支出するもの又は当該建物を取壊してその敷地となっていた土地等を譲渡するために支出するものを除き、その支出した日の属する年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する。

(技能の習得又は研修等のために支出した費用)

37−24 業務を営む者又はその使用人(業務を営む者の親族でその業務に従事しているものを含む。)が当該業務の遂行に直接必要な技能又は知識の習得又は研修等を受けるために要する費用の額は、当該習得又は研修等のために通常必要とされるものに限り、必要経費に算入する。

(民事事件に関する費用)

37−25 業務を営む者が当該業務の遂行上生じた紛争又は当該業務の用に供されている資産につき生じた紛争を解決するために支出した弁護士の報酬その他の費用は、次に掲げるようなものを除き、その支出をした日の属する年分(山林に関するもので、当該山林の管理費その他その育成に要した費用とされるものは、当該山林の伐採又は譲渡の日の属する年分)の当該業務に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する。(令元課個2-22、課法11-3、課審5-12改正)

(1) その取得の時において既に紛争の生じている資産に係る当該紛争又はその取得後紛争を生ずることが予想される資産につき生じた当該紛争に係るもので、これらの資産の取得費とされるもの

(注) これらの資産の取得費とされるものには、例えば、その所有権の帰属につき紛争の生じている資産を購入し、その紛争を解決してその所有権を完全に自己に帰属させた場合の費用や現に第三者が賃借している資産で、それを業務の用に供するため当該第三者を立ち退かせる必要があるものを購入して当該第三者を立ち退かせた場合の費用がある。

(2) 山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡に関する紛争に係るもの

(注) 譲渡契約の効力に関する紛争において当該契約が成立することとされた場合の費用は、その資産の譲渡に係る所得の金額の計算上譲渡に要した費用とされる。

(3) 法第45条第1項《家事関連費等の必要経費不算入等》の規定により必要経費に算入されない同項第2号から第5号までに掲げる租税公課に関する紛争に係るもの

(4) 他人の権利を侵害したことによる損害賠償金(これに類するものを含む。)で、法第45条第1項の規定により必要経費に算入されない同項第8号に掲げるものに関する紛争に係るもの

(刑事事件に関する費用)

37−26 業務を営む者が当該業務の遂行に関連する行為について刑罰法令違反の疑いを受けた場合における弁護士の報酬その他その事件の処理のため支出した費用は、当該違反がないものとされ、若しくはその違反に対する処分を受けないこととなり、又は無罪の判決が確定した場合に限り、必要経費に算入する。

(注) 必要経費に算入される費用は、その違反がないものとされ、若しくは処分を受けないこととなり、又は無罪の判決が確定した日の属する年分とその費用を支出すべきことが確定した日の属する年分とのいずれかの年分の必要経費に算入することができる。

(業務用資産の取得のために要した借入金の利子)

37−27 業務を営んでいる者が当該業務の用に供する資産(37−28において「業務の用に供される資産」という。)の取得のために借り入れた資金の利子は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。ただし、当該資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、当該資産の取得価額に算入することができる。(昭52直所3−33、直法6−10、直資3−15改正)

(注) 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を開始する前に、当該業務の用に供する資産を取得している場合の当該資産の取得のために借り入れた資金の利子のうち当該業務を開始する前の期間に対応するものは、この項の適用はなく、「38−8」の適用があることに留意する。

(賦払の契約により購入した資産に係る利息等相当部分)

37−28 業務の用に供される資産を賦払の契約により購入した場合において、その契約において購入代価と賦払期間中の利息及び賦払金の回収のための費用等に相当する金額とが明らかに区分されている場合のその利息及び費用等に相当する金額は、当該賦払期間中の各年分の必要経費に算入する。ただし、当該資産の使用開始の日までの期間に対応する部分の金額については、当該資産の取得価額に算入することができる。(昭52直資3−14、直所3−22改正)

(退職金共済掛金等の必要経費算入の時期)

37−29 令第64条第1項第1号から第6号まで《確定給付企業年金規約等に基づく掛金等の取扱い》に掲げる掛金、保険料、事業主掛金又は信託金等(以下この項において「掛金等」という。)は、翌年分以後の掛金等を前納した場合を除き、現実に支払(中小企業退職金共済法第2条第5項に規定する特定業種退職金共済契約に係る掛金については、共済手帳への退職金共済証紙の貼付けを含む。)をした日の属する年分の必要経費に算入する。ただし、その年中において支払期限の到来した掛金等を未払金として計上している場合において、その年分の確定申告期限までに当該掛金等の支払をしたときは、当該支払期限の到来した日の属する年分の必要経費に算入することができる。(昭57直所3−1、昭63直所3−3、直法6−2、直資3−3、平13課個2−30、課資3−3、課法8−9、平14課個2−22、課資3−5、課法8−10、課審3−197、平30課個2−19、課審5−2、令2課個2-23、課審5−12改正)

(注) これらの掛金等について現実に支払をするまで必要経費に算入しないこととするのは、これらの掛金等を所定の期日までに支払わない場合には、その契約が解除され、未払掛金等の支払を要しないこととなるからである。

(前納掛金等の必要経費算入)

37−30 37−29の掛金等を前納した場合において、当該前納した掛金等のうちに翌年以後の期間分の掛金等があるときは、その前納した期間の属するそれぞれの年分の必要経費に算入する金額は、次の算式により計算した金額とする。

前納した掛金等の総額(前年により割引された場合には、その割引後の金額)×(前納した掛金等に係るその年中に到来する支払期日の回数)÷(前納した掛金等に係る支払期日の総回数)

(短期の前払費用)

37−30の2 前払費用(一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるために支出した費用のうちその年12月31日においてまだ提供を受けていない役務に対応するものをいう。以下この項において同じ。)の額はその年分の必要経費に算入されないのであるが、その者が、前払費用の額でその支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものを支払った場合において、その支払った額に相当する金額を継続してその支払った日の属する年分の必要経費に算入しているときは、これを認める。(昭55直所3−19、直法6−8追加)

(消耗品費等)

37−30の3 消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する年分の必要経費に算入するのであるが、その者が、事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各年ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する年分の必要経費に算入している場合には、これを認める。(昭55直所3−19、直法6−8追加)

(注) この取扱いにより必要経費に算入する金額が製品の製造等のために要する費用としての性質を有する場合には、当該金額は製造原価に算入するのであるから留意する。

(繰延消費税額等につき相続があった場合の取扱い)

37−30の4 令第182条の2第3項又は第4項に規定する繰延消費税額等につきこれらの規定の適用を受けている居住者が死亡し、これらの規定に従い計算される繰延消費税額等の金額のうち、その死亡した日の翌日以後の期間に対応する金額がある場合には、当該金額は当該死亡した者のその死亡した日の属する年分の必要経費に算入するものとする。

 ただし、当該死亡した者の業務を承継した者がある場合で、当該死亡した者のその死亡した日の属する年分の必要経費に、当該死亡した者の業務を行っていた期間に対応する繰延消費税額等の金額を算入し、かつ、当該業務を承継した者が、その業務を承継した日以後の業務を行っていた期間に対応する繰延消費税額等の金額を各年分の必要経費に算入している場合は、これを認める。(平13課個2−30、課資3−3、課法8−9追加)