(資本的支出の例示)

37−10 業務の用に供されている固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば、次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭57直所3−1追加)

(1) 建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る金額

(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した金額

(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した金額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる金額を超える部分の金額

(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

(ソフトウエアに係る資本的支出と修繕費)

37−10の2 業務の用に供しているソフトウエアにつきプログラムの修正等を行った場合において、当該修正等が、プログラムの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等に該当するときはその修正等に要した費用は修繕費に該当し、新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときはその修正等に要した費用は資本的支出に該当することに留意する。(平12課所4−30追加、令3課個2-10、課法11-28、課審5-4改正)

(注)

1 既に業務の用に供しているソフトウエア又は購入したパッケージソフトウエア等の仕様を大幅に変更するための費用のうち、49−8の2(注)2により取得価額になったもの(49−8の3により取得価額に算入しないこととしたものを含む。)以外のものは、資本的支出に該当することに留意する。

2 本文の修正等に要した費用(修繕費に該当するものを除く。)又は上記(注)1の費用が研究開発費(自己の業務の用に供するソフトウエアに対する支出に係る研究開発費については、その自己の業務の用に供するソフトウエアの利用により将来の収益獲得又は費用削減にならないことが明らかな場合における当該研究開発費に限る。)に該当する場合には、資本的支出に該当しないこととすることができる。

(修繕費に含まれる費用)

37−11 業務の用に供されている固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又は災害等によりき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額(当該金額に係る損失につき法第51条第1項若しくは第4項《資産損失の必要経費算入》又は第72条《雑損控除》の規定の適用を受けている場合には、当該金額のうち、これらの規定に規定する損失の金額に算入された金額を除く。)が修繕費となるのであるが、次に掲げるような金額は、修繕費に該当する。(昭55直所3−19、直法6−8追加、昭57直所3−1改正)

(1) 建物の移えい又は解体移築をした場合(移えい又は解体移築を予定して取得した建物についてした場合を除く。)におけるその移えい又は移築に要した費用の額。ただし、解体移築にあっては、旧資材の70%以上がその性質上再使用できる場合であって、当該旧資材をそのまま利用して従前の建物と同一の規模及び構造の建物を再建築するものに限る。

(2) 機械装置の移設(49−5の適用のある移設を除く。)に要した費用(解体費を含む。)の額

(3) 地盤沈下した土地を沈下前の状態(業務の用に供された時において既に沈下していた土地については、その業務の用に供された時の状態とする。)に回復するために行う地盛りに要した費用の額(その土地の沈下による損失につき法第51条第1項若しくは第4項又は第72条の規定の適用を受けている場合には、当該部分の金額のうち、これらの規定に規定する損失の金額に算入された金額を除く。)。

(4) 建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の浸害を受けることとなったために行う床上げ、地上げ又は移設に要した費用の額(当該費用に係る損失につき法第51条第1項若しくは第4項又は第72条の規定の適用を受けている場合には、当該費用のうち、これらの規定に規定する損失の金額に算入された金額を除く。)。ただし、その床上工事等が従来の床面の構造、材質等を改良するものである等明らかに改良工事であると認められる場合のその改良部分に対応する金額を除く。

(5) 現に使用している土地の水はけを良くするなどのために行う砂利、砕石等の敷設に要した費用の額及び砂利道又は砂利路面に砂利、砕石等を補充するために要した費用の額

(少額又は周期の短い費用の必要経費算入)

37−12 一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理、改良等(以下37−14までにおいて「一の修理、改良等」という。)が次のいずれかに該当する場合において、その修理、改良等のために要した金額を修繕費の額としてその業務に係る所得の金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っているときは、37−10にかかわらず、これを認めるものとする。(昭57直所3−1追加、平元直所3−14、直法6−9、直資3−8改正)

(1) その一の修理、改良等のために要した金額(その一の修理、改良等が2以上の年にわたって行われるときは、各年ごとに要した金額。以下37−14までにおいて同じ。)が20万円に満たない場合

(2) その修理、改良等がおおむね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

(注) 上記の「同一の固定資産」は、一の設備が2以上の資産によって構成されている場合には当該一の設備を構成する個々の資産とし、送配管、送配電線、伝導装置等のように一定規模でなければその機能を発揮できないものについては、その最小規模として合理的に区分した区分ごととする。以下37−14までにおいて同じ。

(災害の復旧費用の必要経費算入)

37−12の2 災害により被害を受けた固定資産(以下この項において「被災固定資産」という。)の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用の額(当該費用に係る損失につき法第51条第1項若しくは第4項又は第72条の規定の適用を受けている場合には、当該費用のうち、これらの規定に規定する損失の額に算入された金額を除く。)を修繕費の額として当該業務に係る所得の金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っているときは、37−10にかかわらず、これを認めるものとする。(平7課所4−16、平29課個2−13、課資3−3、課審5−5改正)

(注)

1 被災固定資産の復旧に代えて資産の取得をし、又は特別の施設(被災固定資産の被災前の効用を維持するためのものを除く。)を設置する場合の当該資産の取得又は特別の施設の設置は新たな資産の取得に該当し、その取得のために支出した金額は、これらの資産の取得の対価及び付随費用となるのであるから、これらの資産の取得価額に含めることに留意する。

2 この取扱いは、令第140条《固定資産に準ずる資産の範囲》に規定する繰延資産につき、当該繰延資産の基因となる固定資産について損壊等の被害があった場合について準用する。

(形式基準による修繕費の判定)

37−13 一の修理、改良等のために要した金額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額があり、その金額が次のいずれかに該当する場合において、その修理、改良等のために要した金額を修繕費の額としてその業務に係る所得の金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っているときは、これを認めるものとする。(昭57直所3−1追加、平元直所3−14、直法6−9、直資3−8、平19課個2−11、課資3−1、課法9−5、課審4−26改正)

(1) その金額が60万円に満たない場合

(2) その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前年12月31日における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合

(注)

1 前年以前の各年において、令第127条第4項の規定の適用を受けた場合における当該固定資産の取得価額とは、同項に規定する一の減価償却資産の取得価額をいうのではなく、同項に規定する旧減価償却資産の取得価額と追加償却資産(同項に規定する追加償却資産をいう。以下この項において同じ。)の取得価額との合計額をいうことに留意する。

2 固定資産には、当該固定資産についてした資本的支出が含まれるのであるから、当該資本的支出が同条第5項の規定の適用を受けた場合であっても、当該固定資産に係る追加償却資産の取得価額は当該固定資産の取得価額に含まれることに留意する。

(資本的支出と修繕費の区分の特例)

37−14 一の修理、改良等のために要した金額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(37−12、37−12の2、37−13又は37−14の2の適用があるものを除く。)がある場合において、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前年12月31日における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費の額とし、残余の額を資本的支出の額としてその業務に係る所得の金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っているときは、これを認めるものとする。(昭57直所3−1追加、平7課所4−16、平19課個2−11、課資3−1、課法9−5、課審4−26改正)

(注)

1 当該修理、改良等をした固定資産に係る除却損失につき、法第51条第1項又は第4項の規定の適用を受ける場合には、上記により計算された修繕費の額であっても、51−3により必要経費に算入されないものがあることに留意する。

2 当該固定資産の前年12月31日における取得価額については、37−13の(2)の(注)による。

(災害の場合の原状回復のための費用の特例)

37−14の2 災害により損壊した業務の用に供されている固定資産について支出した費用で、その費用の額を修繕その他の原状回復のために支出した部分の額とその他の部分の額とに区分することが困難なものについては、当該損壊により生じた損失につき法第72条の規定の適用を受ける場合を除き、その費用の額の30%相当額を原状回復のために支出した部分の額とし、残余の額を資本的支出の部分の額とすることができる。(昭55直所3−19、直法6−8、昭57直所3−1、平7課所4−16改正)

(注) 当該損壊により生じた損失につき法第51条第1項又は第4項の規定の適用がある場合には、上記により計算された原状回復のために支出した費用の額であっても、51−3により必要経費に算入されないものがあることに留意する。

(機能復旧補償金による固定資産の取得又は改良)

37−14の3 業務の用に供されている固定資産について電波障害、日照妨害、風害、騒音等による機能の低下があったことによりその原因者からその機能を復旧するための補償金(令第30条の規定により非課税とされるものを除く。以下この項において同じ。)の交付を受けた場合において、当該補償金をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をしたときは、その取得又は改良に充てた補償金の額のうちその機能復旧のために支出したと認められる部分の金額に相当する金額は、修繕費等として必要経費に算入することができる。 当該補償金の交付に代えて、その原因者から機能復旧のための固定資産の交付を受け、又は当該原因者が当該固定資産の改良を行った場合についても、同様とする。(昭57直所3−1追加)

(注) 当該補償金の交付を受けた日の属する年の12月31日までにその機能復旧のための固定資産の取得又は改良をすることができなかった場合においても、その後速やかにその取得又は改良をすることが確実であると認められるときは、当該補償金の額のうちその取得又は改良に充てることが確実と認められる部分の金額に限り、その取得又は改良をする時まで仮受金として経理することができる。

(地盤沈下による防潮堤、防波堤等の積上費)

37−15 地盤沈下に基因して、業務の用に供されている防潮堤、防波堤、防水堤等の積上工事を行った場合において、数年内に再び積上工事を行わなければならないものであると認められるときは、その積上工事に要した費用を一の減価償却資産として償却することができる。(昭55直所3−19、直法6−8、昭57直所3−1、平24課個2−11、課審4−8改正)

(注) 当該減価償却資産の耐用年数については、耐用年数通達2−3−23参照

(耐用年数を経過した資産についてした修理、改良等)

37−15の2 耐用年数を経過した減価償却資産について修理、改良等をした場合であっても、その修理、改良等のために支出する金額に係る資本的支出と修繕費の区分については、一般の例によりその判定を行うことに留意する。(昭57直所3−1追加)

(損壊した賃借資産等に係る修繕費)

37−15の3 居住者が、不動産所得、事業所得又は山林所得(以下この項において「事業所得等」という。)を生ずべき事業の用に供している賃借資産等(賃借若しくは賃貸をしている又は販売をした土地、建物、機械装置等をいう。)につき、契約により修繕等を行うこととされているものでない場合においても、当該賃借資産等が災害により被害を受けたため、当該賃借資産等の原状回復を行い、その費用の額を修繕費として、事業所得等の金額の計算上必要経費に算入しているときは、これを認めるものとする。(平29課個2−13、課資3−3、課審5−5追加)

(注)

1 この取扱いにより修繕費として取り扱う費用の額は、36・37共−7の5の災害損失特別勘定への繰入れの対象とはならないことに留意する。

2 当該居住者が、その修繕費の額として、事業所得等の金額の計算上必要経費に算入した金額に相当する金額につき賃貸人等から支払を受けた場合には、その支払を受けた日の属する年分の事業所得等の金額の計算上、総収入金額に算入する。

3 居住者が賃借している法第67条の2第1項((リ−ス取引に係る所得の金額の計算))に規定するリ−ス資産が災害により被害を受けたため、契約に基づき支払うこととなる規定損害金(免除される金額及び災害のあった日の属する年の12月31日までに支払った金額を除く。) については、災害のあった日の属する年分において必要経費に算入することができることに留意する。