(仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等の記載事項の特例)

11−6−1 法第30条第7項《仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等の保存》に規定する課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等に関して同条第8項第1号《仕入税額控除に係る帳簿》、令第49条第4項《仕入明細書等の記載事項》及び同条第6項《卸売り等に係る一定書類の記載事項》に規定する記載事項のうち、次のものは、取引先コード、商品コード等の記号、番号等による表示で差し支えない。ただし、表示される記号、番号等により、記載事項である「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」、「特定課税仕入れの内容」及び「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」について、その仕入れ又は資産の譲渡等が課税仕入れ又は課税資産の譲渡等かどうか、また、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等である場合においては、軽減対象課税資産の譲渡等かどうかの判別が明らかとなるものであって、(1)に掲げる記載事項を除き、取引の相手方との間で、表示される記号、番号等の内容が明らかであるものに限るものとする。(平9課消2−5、平27課消1-17により改正)

(1) 法第30条第8項第1号イに規定する「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」、同項第2号イに規定する「特定課税仕入れの相手方の氏名又は名称」、同項第1号ハに規定する「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」及び同項第2号ハに規定する「特定課税仕入れの内容」

(2) 令第49条第4項第1号に規定する「書類の作成者の氏名又は名称」、同項第2号に規定する「課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号」及び同項第4号に規定する「課税仕入れに係る資産又は役務の内容」

(3) 令第49条第6項第1号に規定する「書類の作成者の氏名又は名称及び登録番号」、同項第3号に規定する「課税資産の譲渡等に係る資産の内容」及び同項第6号に規定する「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」

(注)1 帳簿とは、法第30条第8項に規定する記載事項を記録したものであればよいのであるから、商業帳簿のほか、所得税又は法人税の申告の基礎となる帳簿でも差し支えない。

2 令第49条第4項第2号に規定する「課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び登録番号」又は令第49条第6項第1号に規定する「書類の作成者の氏名又は名称及び登録番号」につき、取引先コード等の記号、番号等で表示する場合においては、当該記号、番号等により、登録の効力の発生時期に関する変更等の履歴が明らかとなる措置を講じておく必要がある。

3 適格請求書及び適格簡易請求書の記載事項に関する取扱いについては、1−8−3による。

(立替払に係る適格請求書)

11−6−2 事業者が行う課税仕入れにつき、例えば、複数の事業者が一の事務所を借り受け、複数の事業者が支払うべき賃料を一の事業者が立替払を行った場合のように、当該課税仕入れに係る適格請求書(以下11−6−2において「立替払に係る適格請求書」という。)が当該一の事業者のみに交付され、当該一の事業者以外の各事業者が当該課税仕入れに係る適格請求書の交付を受けることができない場合には、当該一の事業者から立替払に係る適格請求書の写しの交付を受けるとともに、当該各事業者の課税仕入れに係る仕入税額控除に必要な事項が記載された明細書等(以下11−6−2において「明細書等」という。)の交付を受け、これらを併せて保存することにより、当該各事業者の課税仕入れに係る適格請求書の保存があるものとして取り扱う。
 なお、一の事業者が、多数の事業者の課税仕入れにつき一括して立替払を行ったことにより、当該一の事業者において立替払に係る適格請求書の写しの作成が大量となり、その写しを交付することが困難であることを理由に、当該一の事業者が立替払に係る適格請求書を保存し、かつ、当該一の事業者以外の各事業者の課税仕入れが適格請求書発行事業者から受けたものかどうかを当該各事業者が確認できるための措置を講じた上で、明細書等のみを交付した場合には、当該各事業者が交付を受けた当該明細書等を保存することにより、当該各事業者の課税仕入れに係る適格請求書の保存があるものとする。

(注)1 当該明細書等に記載する法第57条の4第1項第4号及び第5号《適格請求書の交付義務》に掲げる事項については、課税仕入れを行った事業者ごとに合理的に区分する必要がある。

2 当該各事業者の課税仕入れが適格請求書発行事業者から受けたものかどうかを当事者間で確認できるための措置としては、例えば、当該明細書等に当該各事業者の課税仕入れに係る相手方の氏名又は名称及び登録番号を記載する方法のほか、これらの事項について当該各事業者へ別途書面等により通知する方法又は立替払に関する基本契約書等で明らかにする方法がある。

(古物に準ずるものの範囲)

11−6−3 規則第15条の3《古物に準ずるものの範囲》に規定する「古物営業法(昭和24年法律第108号)第2条……第1項に規定する古物に準ずる物品及び証票」とは、古物営業法上の古物に該当しない、例えば、金、銀、白金といった貴金属の地金やゴルフ会員権がこれに該当する。
 また、同条に規定する「古物営業と同等の取引方法」とは、当該古物に準ずる物品及び証票の買受けに際して、例えば、古物営業法第15条《確認等及び申告》の規定に基づき相手方の住所、氏名等の確認等を行うとともに、同法第16条《帳簿等への記載等》の規定に基づき業務に関する帳簿等への記載等を行うなど、古物商が古物を買い受ける場合と同等の取引方法にあることをいうことに留意する。

(通常必要であると認められる出張旅費、宿泊費、日当等)

11−6−4 規則第15条の4第2号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「その旅行に必要な支出に充てるために事業者がその使用人等又はその退職者等に対して支給する金品」とは、例えば、事業者が、使用人等(同号に規定する「使用人等」をいう。以下11−6−5までにおいて同じ。)又は退職者等(同号に規定する「退職者等」をいう。以下11−6−5までにおいて同じ。)が次に掲げる旅行をした場合に、使用人等又は退職者等に出張旅費、宿泊費、日当等として支給する金品がこれに該当するのであるが、同号に規定する課税仕入れは、当該金品のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分に係るものに限られることに留意する。

(1) 使用人等が勤務する場所を離れてその職務を遂行するために行う旅行

(2) 使用人等の転任に伴う転居のために行う旅行

(3) 退職者等のその就職又は退職に伴う転居のために行う旅行

(注) 同号に規定する「その旅行について通常必要であると認められる部分」の範囲は、所基通9−3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定する。

(通常必要であると認められる通勤手当)

11−6−5 規則第15条の4第3号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「通勤者につき通常必要であると認められる部分」とは、事業者が通勤者に支給する通勤手当が、当該通勤者がその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるものとした場合に、その通勤に通常必要であると認められるものをいう。
 したがって、所法令第20条の2各号《非課税とされる通勤手当》に定める金額を超えているかどうかにかかわらないことに留意する。

(課税仕入れの相手方の確認を受ける方法)

11−6−6 法第30条第9項第3号《請求書等の範囲》に規定する「課税仕入れの相手方の確認を受けたもの」とは、保存する仕入明細書等に課税仕入れの相手方の確認の事実が明らかにされたもののほか、例えば、次のようなものがこれに該当する。(平10課消2−9により追加)

(1) 仕入明細書等への記載内容を通信回線等を通じて課税仕入れの相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けた上で自己の端末機から出力したもの

(2) 仕入明細書等に記載すべき事項に係る電磁的記録につきインターネットや電子メールなどを通じて課税仕入れの相手方へ提供し、当該相手方からその確認をした旨の通知等を受けたもの

(3) 仕入明細書等の写しを相手方に交付し、又は当該仕入明細書等に記載すべき事項に係る電磁的記録を相手方に提供し、一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおりに確認があったものとする基本契約等を締結した場合における当該一定期間を経たもの

(元請業者が作成する出来高検収書の取扱い)

11−6−7 建設工事等を請け負った事業者(以下11−6−7において「元請業者」という。)が、建設工事等の全部又は一部を他の事業者(以下11−6−7において「下請業者」という。)に請け負わせる場合において、元請業者が下請業者の行った工事等の出来高について検収を行い、当該検収の内容及び出来高に応じた金額等を記載した書類又は当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録(以下11−6−7において「出来高検収書」という。)を作成し、それに基づき請負金額を支払っているときは、当該出来高検収書は、法第30条第9項第3号《請求書等の範囲》に規定する書類又は令第49条第7項《書類に記載すべき事項に係る電磁的記録》に規定する当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録に該当するものとして取り扱う(当該出来高検収書の記載事項が同条第4項各号《仕入明細書等の記載事項》に規定する事項を記載しており、その内容について下請業者の確認を受けているものに限る。)。(平10課消2−9により追加)
 なお、元請業者は、当該出来高検収書を作成し下請業者に記載事項の確認を受けることにより、当該出来高検収書に記載された課税仕入れを行ったこととなり、法第30条第1項《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用できるものとして取り扱う。ただし、建設工事完了日において下請業者が適格請求書発行事業者でなかった場合には、建設工事完了日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額から当該出来高検収書により仕入税額控除の対象とした消費税額を控除するものとする。

(注) この取扱いは下請業者の資産の譲渡等の計上時期により影響されるものではないことに留意する。

(課税仕入れに係る支払対価の額が確定していない場合の適格請求書の保存)

11−6−8 課税仕入れに係る支払対価の額が確定していない場合の課税仕入れについて、法第30条第1項《仕入れに係る消費税額の控除》の規定の適用を受けるためには、原則として、同条第9項《仕入税額控除に係る請求書等》に規定する請求書等の保存が必要となるのであるが、当該課税仕入れの日の属する課税期間の末日までに適格請求書の交付を受けられない場合であっても、適格請求書発行事業者との間において継続して行われる取引については、後日交付される適格請求書の保存を条件として、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の末日の現況により、適正に見積もった金額により仕入税額控除を行うことを認める。
 なお、その後確定した対価の額が見積額と異なることにより課税仕入れに係る消費税額に差額が生じたときは、その差額は、その確定した日の属する課税期間における課税仕入れに係る消費税額に加算し、又は当該課税仕入れに係る消費税額から控除するものとする。

(注) 令第49条第4項第5号《仕入明細書等の記載事項》に規定する税率の異なるごとに区分して合計した課税仕入れに係る支払対価の額を見積額による場合の取扱いも同様である。

(帳簿及び請求書等の保存期間)

11−6−9 法第30条第1項《仕入れに係る消費税額の控除》の規定の適用を受けようとする事業者は、令第50条第1項ただし書《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》及び規則第15条の6《帳簿等の保存期間の特例》の規定により、帳簿及び請求書等の保存期間のうち6年目及び7年目は、法第30条第7項《仕入れに係る消費税額の控除に係る帳簿及び請求書等の保存》に規定する帳簿又は請求書等のいずれかを保存すればよいのであるから留意する。(平10課消2−9により追加、平12課消2−10により改正)