(適格請求書の意義)

1−8−1 適格請求書とは、法第57条の4第1項各号《適格請求書の交付義務》に掲げる事項を記載した請求書、納品書その他これらに類する書類をいうのであるが、同項各号に掲げる事項の記載があれば、その書類の名称は問わない。
 また、適格請求書の交付に関して、一の書類により同項各号に掲げる事項を全て記載するのではなく、例えば、納品書と請求書等の二以上の書類であっても、これらの書類について相互の関連が明確であり、その交付を受ける事業者が同項各号に掲げる事項を適正に認識できる場合には、これら複数の書類全体で適格請求書の記載事項を満たすものとなることに留意する。

(適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の提供)

1−8−2 適格請求書発行事業者が、法第57条の4第5項《適格請求書発行事業者の義務》の規定により、適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書の交付に代えて行う、これらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第2条第3号《定義》に規定する「電磁的記録」をいう。以下同じ。)の提供には、光ディスク、磁気テープ等の記録用の媒体による提供のほか、例えば、次に掲げるようなものが該当する。

(1) いわゆるEDI取引を通じた提供

(2) 電子メールによる提供

(3) インターネット上のサイトを通じた提供

また、適格請求書に係る記載事項につき、例えば、納品書データと請求書データなど複数の電磁的記録の提供による場合又は納品書と請求書データなど書面の交付と電磁的記録の提供による場合のいずれにおいても、1−8−1後段に準じて取り扱うこととなる。

(適格請求書及び適格簡易請求書の記載事項の特例)

1−8−3 法第57条の4第1項及び第2項《適格請求書の交付義務等》に規定する記載事項のうち、次に掲げる事項は、取引先コード、商品コード等の記号、番号等による表示で差し支えない。
 ただし、表示される記号、番号等により、当該記載事項である「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」について、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等かどうか、また、当該資産の譲渡等が課税資産の譲渡等である場合においては、軽減対象課税資産の譲渡等かどうかの判別が明らかとなるものであって、適格請求書発行事業者とその取引の相手方との間で、表示される記号、番号等の内容が明らかであるものに限るものとする。

(1) 法第57条の4第1項第1号《適格請求書の交付義務》に規定する「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」、同項第3号に規定する「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」及び同項第6号に規定する「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」

(2) 法第57条の4第2項第1号《適格簡易請求書の交付》に規定する「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」及び同項第3号に規定する「課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容」

(注) 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号につき、取引先コード等の記号、番号等で表示する場合においては、当該記号、番号等により、登録の効力の発生時期等の履歴が明らかとなる措置を講じておく必要がある。

(軽減対象課税資産の譲渡等がある場合の適格請求書の記載事項)

1−8−4 法第57条の4第1項第3号《適格請求書の交付義務》に規定する「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」の記載については、軽減対象課税資産の譲渡等であることが客観的に明らかであるといえる程度の表示がされていればよく、個々の取引ごとに適用税率が記載されている場合のほか、例えば、次のような場合もこれに該当する。

(1) 軽減対象課税資産の譲渡等に係る適格請求書と軽減対象課税資産の譲渡等以外のものに係る適格請求書とが区分して作成され、当該区分された軽減対象課税資産の譲渡等に係る適格請求書に、記載された取引内容が軽減対象課税資産の譲渡等であることを表示している場合

(2) 同一の適格請求書において、軽減対象課税資産の譲渡等に該当する取引内容を区分し、当該区分して記載された軽減対象課税資産の譲渡等に該当する取引内容につき軽減対象課税資産の譲渡等であることを表示している場合

(3) 同一の適格請求書において、軽減対象課税資産の譲渡等に該当する取引内容ごとに軽減対象課税資産の譲渡等であることを示す記号、番号等を表示し、かつ、当該適格請求書において当該記号、番号等の意義が軽減対象課税資産の譲渡等であることとして表示している場合

(注) 法第57条の4第2項第3号、同条第3項第3号《適格簡易請求書の交付等》及び令49条第6項第3号《媒介者等交付書類の記載事項》に規定する「軽減対象課税資産の譲渡等である旨」並びに令第49条第4項第4号《仕入明細書等の記載事項》に規定する「軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである旨」の記載についても同様である。

(軽減対象課税資産の譲渡等とそれ以外の資産の譲渡等を一括して対象とする値引販売)

1−8−5 事業者が、課税資産の譲渡等(軽減対象課税資産の譲渡等を除く。)、軽減対象課税資産の譲渡等及びこれら以外の資産の譲渡等のうち2以上の区分の資産の譲渡等を同時に行った場合において、例えば、顧客が割引券等を利用したことにより、当該2以上の区分の資産の譲渡等を対象として一括して対価の額の値引きが行われており、当該資産の譲渡等に係る適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の法第57条の4第1項第4号《適格請求書の交付義務》に掲げる「課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額」(以下1−8−5において「区分合計金額」という。)が明らかでないときは、割引券等による値引額を当該資産の譲渡等に係る価額の比率により按分し、適用税率ごとの値引額及び区分合計金額を算出することとなることに留意する。
 なお、当該資産の譲渡等に際して顧客へ交付する適格請求書により適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の区分合計金額が確認できるときは、当該資産の譲渡等に係る値引額又は値引額控除後の区分合計金額が、適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当する。

(家事共用資産を譲渡した場合の適格請求書に記載すべき課税資産の譲渡等の対価の額等)

1−8−6 個人事業者である適格請求書発行事業者が、事業と家事の用途に共通して使用するものとして取得した資産を譲渡する場合には、その譲渡に係る金額を事業としての部分と家事使用に係る部分とに合理的に区分するものとし、適格請求書に記載する法第57条の4第1項第4号《適格請求書の交付義務》に掲げる「課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額」及び同項第5号に掲げる「消費税額等」は、当該事業としての部分に係る金額に基づき算出することとなることに留意する。

(共有物の譲渡等における適格請求書に記載すべき課税資産の譲渡等の対価の額等)

1−8−7 適格請求書発行事業者が、適格請求書発行事業者以外の者である他の者と共同で所有する資産(以下「共有物」という。)の譲渡又は貸付けを行う場合には、当該共有物に係る資産の譲渡等の金額を所有者ごとに合理的に区分するものとし、適格請求書に記載する法第57条の4第1項第4号《適格請求書の交付義務》に掲げる「課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額」及び同項第5号に掲げる「消費税額等」は、自己の部分に係る資産の譲渡等の金額に基づき算出することとなることに留意する。

(適格請求書発行事業者でなくなった場合の適格請求書の交付)

1−8−8 適格請求書発行事業者が適格請求書発行事業者でなくなった後、適格請求書発行事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等を受ける他の事業者(法第57条の4第1項《適格請求書の交付義務》に規定する「他の事業者」をいう。)から当該課税資産の譲渡等に係る適格請求書の交付を求められたときは、当該他の事業者にこれを交付しなければならないことに留意する。

(媒介者等を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合の意義)

1−8−9 令第70条の12第1項《媒介者等による適格請求書等の交付の特例》に規定する「媒介者等を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合」には、委託販売のように課税資産の譲渡等を第三者に委託している場合のほか、課税資産の譲渡等に関する代金の精算や請求書等の交付を第三者に委託している場合もこれに含まれることに留意する。

(媒介者等に対する通知の方法)

1−8−10 適格請求書発行事業者が、媒介者等(令第70条の12第1項《媒介者等による適格請求書等の交付の特例》に規定する「媒介者等」をいう。以下1−8−11までにおいて同じ。)を介して国内において課税資産の譲渡等を行う場合において、同項の規定の適用を受けるには、当該媒介者等が当該課税資産の譲渡等の時までに当該事業者から適格請求書発行事業者の登録を受けている旨の通知を受けていることが要件となるが、当該通知の方法については、例えば、当該事業者が個々の取引の都度、事前に登録番号を当該媒介者等へ書面等により通知する方法のほか、当該事業者と当該媒介者等との間の基本契約書等に当該事業者の登録番号を記載するといった方法がある。

(媒介者等が交付する適格請求書等の写しの内容)

1−8−11 媒介者等が令第70条の12第1項《媒介者等による適格請求書等の交付の特例》の規定により課税資産の譲渡等を行う事業者に代わって適格請求書等(同項に規定する「適格請求書等」をいう。以下1−8−11において同じ。)を交付し、又は適格請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した場合には、当該適格請求書等の写し又は当該電磁的記録を当該事業者に対して交付し、又は提供しなければならないが、例えば、当該適格請求書等に複数の事業者に係る記載があるなどにより当該適格請求書等の写しをそのまま交付することが困難な場合には、当該適格請求書等に記載された事項のうち当該事業者に係る事項を記載した精算書等を交付することで差し支えないものとする。
 なお、この場合には、当該媒介者等においても交付した当該精算書等の写しを保存するものとする。

(3万円未満のものの判定単位)

1−8−12 令第70条の9第2項第1号《適格請求書の交付を免除する課税資産の譲渡等の範囲等》及び規則第26条の6第1号《適格請求書等の交付が著しく困難な課税資産の譲渡等》に規定する「税込価額が3万円未満のもの」に該当するかどうかは、一回の取引の課税資産の譲渡等に係る税込価額(法第57条の4第1項第4号《適格請求書の交付義務》に規定する「税込価額」をいう。以下1−8−12において同じ。)が3万円未満であるかどうかで判定するのであるから、課税資産の譲渡等に係る一の商品(役務)ごとの税込価額によるものではないことに留意する。

(公共交通機関特例の対象となる運賃及び料金の範囲)

1−8−13 令第70条の9第2項第1号イからニまで《適格請求書の交付を免除する課税資産の譲渡等の範囲等》に掲げる旅客の運送には、旅客の運送に直接的に附帯するものとして収受する特別急行料金、急行料金、寝台料金等を対価とする役務の提供は含まれるが、旅客の運送に直接的に附帯するものではない入場料金、手回品料金、貨物留置料金等を対価とする役務の提供は、含まれないことに留意する。

(自動販売機及び自動サービス機の範囲)

1−8−14 規則第26条の6第1号《適格請求書等の交付が著しく困難な課税資産の譲渡等》に規定する「自動販売機又は自動サービス機」とは、課税資産の譲渡等及び代金の収受が自動で行われる機械装置であって、当該機械装置のみにより課税資産の譲渡等が完結するものをいい、例えば、飲食料品の自動販売機のほか、コインロッカーやコインランドリー等がこれに該当する。

(注) 小売店内に設置されたセルフレジなどのように単に代金の精算のみを行うものは、これに該当しないことに留意する。

(適格請求書に記載すべき消費税額等の計算に係る端数処理の単位)

1−8−15 適格請求書発行事業者が適格請求書に記載すべき消費税額等(法第57条の4第1項第5号《適格請求書の交付義務》に掲げる「消費税額等」をいう。以下1−8−15において同じ。)は、令第70条の10《適格請求書に記載すべき消費税額等の計算》に規定する方法により、課税資産の譲渡等に係る税抜価額(法第57条の4第1項第4号に規定する「税抜価額」をいう。)又は税込価額(同号に規定する「税込価額」をいう。)を税率の異なるごとに区分して合計した金額を基礎として算出し、当該算出した金額の1円未満の端数を処理することとなるのであるから、当該消費税額等の1円未満の端数処理は、一の適格請求書につき、税率の異なるごとにそれぞれ1回となることに留意する。

(注) 複数の商品の販売につき、一の適格請求書を交付する場合において、一の商品ごとに端数処理をした上でこれを合計した金額を適格請求書に記載すべき消費税額等とすることはできない。

(外貨建取引における適格請求書に記載すべき消費税額等)

1−8−16 外貨建ての取引における適格請求書に記載すべき消費税額等(法第57条の4第1項第5号《適格請求書の交付義務》に掲げる「消費税額等」をいう。)は円換算した金額を記載することとなるが、円換算の方法については、10−1−7に準ずる方法のほか、例えば、適格請求書を交付する日における対顧客直物電信売相場と対顧客直物電信買相場の仲値を継続的に使用するなど、合理的な方法によることでも差し支えない。

(適格返還請求書の交付義務が免除される1万円未満の判定単位)

1−8−17 令第70条の9第3項第2号《適格返還請求書の交付義務免除》に規定する「税込価額が1万円未満である場合」に該当するかどうかは、一回の取引の課税資産の譲渡等に係る税込価額(法第38条第1項《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》に規定する「税込価額」をいう。以下1−8−17において同じ。)の返還金額又は当該課税資産の譲渡等の税込価額に係る売掛金その他の債権の額の減額金額が1万円未満であるかどうかで判定するのであるから、課税資産の譲渡等に係る一の商品(役務)ごとの対価の返還等の金額によるものではないことに留意する。

(登録前に行った課税資産の譲渡等に係る対価の返還等)

1−8−18 適格請求書発行事業者が、適格請求書発行事業者の登録を受ける前に行った課税資産の譲渡等(当該事業者が免税事業者であった課税期間に行ったものを除く。)について、登録を受けた日以後に売上げに係る対価の返還等を行う場合には、当該対価の返還等についても法第38条第1項《売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除》の規定の適用があるが、当該対価の返還等に係る法第57条の4第3項《適格返還請求書の交付義務》の規定の適用はないことに留意する。

(適格請求書発行事業者でなくなった場合の適格返還請求書の交付)

1−8−19 適格請求書発行事業者が適格請求書発行事業者でなくなった後において、適格請求書発行事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等につき、売上げに係る対価の返還等を行った場合には、当該対価の返還等に係る適格返還請求書を交付しなければならないことに留意する。

(適格返還請求書の交付方法)

1−8−20 一の事業者に対して、適格請求書及び適格返還請求書を交付する場合において、それぞれの記載事項を満たすものであれば、一の書類により交付することとしても差し支えない。
 また、その場合の適格請求書に記載すべき法第57条の4第1項第4号《適格請求書の交付義務》に掲げる「課税資産の譲渡等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額」と適格返還請求書に記載すべき同条第3項第4号《適格返還請求書の交付義務》に掲げる「売上げに係る対価の返還等に係る税抜価額又は税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額」については、継続適用を条件にこれらの金額の差額を記載することで、これらの記載があるものとして取り扱う。この場合において、適格請求書に記載すべき消費税額等(同条第1項第5号に掲げる「消費税額等」をいう。)と適格返還請求書に記載すべき売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等(同条第3項第5号に掲げる「売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額等」をいう。)についても、当該差額に基づき計算した金額を記載することで、これらの記載があるものとする。

(修正適格請求書の記載事項)

1−8−21 法第57条の4第4項《修正した適格請求書等の交付義務》に規定する「修正した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書」には、当初に交付した適格請求書、適格簡易請求書又は適格返還請求書との関連性を明らかにした上で、修正した事項を明示した書類等も含まれることに留意する。