1 「酒母若しくはもろみの製造者」の範囲

 法第46条《記帳義務》に規定する「酒母若しくはもろみの製造者」には、酒母等の製造免許を受けた者のほかアルコール事業法の規定によりアルコールの製造の許可又は承認を受けた者がアルコールの製造の用に供するため、酒母等を製造する場合のそのアルコールの製造者を含むことに留意する。

2 「酒類の販売業者」の範囲

 法第46条《記帳義務》に規定する「酒類の販売業者」には、酒類販売業免許を受けた者のほか、酒場、料理店その他の酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者も含むことに留意する。
 また、法第47条《申告義務》第4項において同様とする。

3 酒類製造者等の記帳事項

 酒類製造者及び酒母又はもろみの製造者が、製造、貯蔵及び販売に関し記帳しなければならない事項は、次のとおり。
 なお、アルコール事業法の適用を受ける工業用アルコールであっても、酒類の原料用として酒類製造場に移入した場合には、酒類製造の原料として記帳義務の対象となるのであるから留意する。

(1) 総則

イ 数量等の測定は、原則として、実測により行う。ただし、容器に存する酒類の全量を別の容器に移動する場合には、払出時の実測を省略することとして差し支えない(受入に係る測定は、実測により行う。)。
 なお、移出用容器に酒類を詰める場合については第30条の2第1項、第2項及び第3項関係の8〜11に規定する数量により記帳を行う。
 また、発泡性を有する酒類で、製造したときに数量の測定を行うことが困難な場合には、移出するための容器に充充填したとき等で数量を把握することができる状態になったときの数量としても差し支えない。

ロ 「アルコール分」等の測定は、原則として、国税庁所定分析法により行う。

ハ 記帳に当たっての数量の単位は、課税に直接関係のあるものはミリリットル位、その他のものはリットル位、キログラム位、グラム位又は本、箱等の単位によることとし、記帳に当たっては、それぞれの単位を明示する。

ニ 記帳事項のうち、その製造場の構造、設備又は製造操作の特殊性等から、数量の測定ができず記帳ができない事項については、その記帳を省略することができる。

(2) 原料及び副産物関係

イ 受入れ(副産物の製造を含む。)又は払出しの年月日

(注) 受入れには、原料を加工して新たに品名の異なる物品を製造(例えば、白米の精製)したときを含む。

ロ 受入れ又は払出しをした物品の品名、成分及び数量並びに価格

(注) 品名とは、例えば、米については、玄米と白米の別、うるち米ともち米の別等をいう。

ハ 引渡人又は受取人の住所及び氏名又は名称並びに引渡先又は受取先の所在地及び名称

ニ 払出事由

(注) 払出事由は、例えば、白米を清酒の掛米用に使用したときは、次のように記載する。

1 酒母掛米用(仕込みの記号及び順号を併記する。以下この(注)において同じ。)

2 初添掛米用

3 仲添掛米用

4 留添掛米用

5 四段掛米用

(3) 製造関係

(3)-1 こうじ関係

イ 製成順号

ロ 原料の品名、使用数量及び使用年月日

ハ 種こうじの種類及び使用数量

ニ 製造の年月日及び数量

ホ 酒母及びもろみに使用したときは、次の事項

(イ) 使用年月日

(ロ) 酒母又はもろみの仕込記号及び順号

(ハ) 使用数量

ヘ こうじを移出したときは、次の事項

(イ) 移出年月日

(ロ) 移出したこうじの数量及び価格

(ハ) 受取人の住所及び氏名又は名称並びに移出先の所在地及び名称

ト こうじを移入したときは、次の事項

(イ) 移入年月日

(ロ) 移入したこうじの種類、数量及び価格

(ハ) 引渡人の住所及び氏名又は名称並びに引渡先の所在地及び名称

(3)-2 糖化液(麦汁等)関係

イ 仕込みの記号及び順号

ロ 仕込年月日

ハ 原料の品名及び使用数量

ニ 製造した糖化液について次の事項

(イ) 容器番号

(ロ) 深さ、数量及び糖度

ホ 用途別の払出数量

(3)-3 酒母関係

イ 仕込みの記号及び順号

ロ 仕込年月日

ハ 容器番号

ニ 原料の品名及び使用数量

ホ 酵母の種類及び使用数量

ヘ 仕込即時並びに熟成時の深さ、数量及びアルコール分

ト 払出しの年月日、払出先のもろみの記号、順号及び払出数量並びに払出後の深さ及び数量

チ 酒母を移出したときは、次の事項

(イ) 移出年月日

(ロ) 移出した酒母の数量、アルコール分及び価格

(ハ) 受取人の住所及び氏名又は名称並びに移出先の所在地及び名称

リ 酒母を移入したときは、次の事項

(イ) 移入年月日

(ロ) 移入した酒母の種類、数量、アルコール分及び価格

(ハ) 引渡人の住所及び氏名又は名称並びに引渡先の所在地及び名称

(3)-4 もろみ関係

イ 仕込みの記号及び順号

ロ 仕込年月日

(注) この場合の仕込みとは、例えば、清酒もろみの場合は、初添、仲添、留添、四段及びアルコール添加等の各区分ごとの操作をいう(以下ヘにおいて同じ。)

ハ 容器番号

ニ 使用した酒母の記号、順号及び使用数量

ホ 原料の品名、使用数量(ニの酒母に使用した原料を含む。)及び成分

ヘ 仕込前及び仕込後の深さ、数量、品温、アルコール分、エキス分(清酒及び合成清酒については、日本酒度とする。以下(5)まで及び(7)-1において同じ。)及び糖度

ト 清酒を製造するため調味液を製造する場合は、調味液について次の事項

(イ) 記号及び順号

(ロ) 製造年月日

(ハ) 容器番号

(ニ) 原料の品名、使用数量及び成分

(ホ) 製造した調味液の深さ、数量、アルコール分及び日本酒度

(ヘ) 払出しの年月日並びに払出先のもろみの記号、順号及び払出数量

チ こす又は蒸留直前のもろみの深さ、数量、品温、アルコール分及びエキス分

リ もろみを移出したときは、次の事項

(イ) 移出年月日

(ロ) 移出したもろみの数量、アルコール分及びエキス分並びに価格

(ハ) 受取人の住所及び氏名又は名称並びに移出先の所在地及び名称

(注) 果実酒のもろみを果実酒製造場見学者に対して当該製造場内で提供する場合には、果実酒として記帳するほか、当該行為の詳細を(3)−4(もろみ関係)に記帳し、以降製成等の関連する事項を記載することに留意する。

ヌ もろみを移入したときは、次の事項

(イ) 移入年月日

(ロ) 移入したもろみの種類、数量、アルコール分及びエキス分並びに価格

(ハ) 引渡人の住所及び氏名又は名称並びに引渡先の所在地及び名称

(注) こす又は蒸留の操作を行わず原料を混和することにより酒類を製成するものについても、イからヘの事項を記載することに留意する。

(3)-5 製成関係

イ 製成した酒類について次の事項

(イ) 仕込みの記号及び順号

(注) この場合の「仕込み記号及び順号」は(3)-4(もろみ関係)のイの「仕込み記号及び順号」と合致することに留意する。

(ロ) 製成開始年月日

(ハ) 製成年月日

(ニ) 容器番号

(ホ) 深さ、数量、品温、アルコール分及びエキス分

(注)

1 ビール及び発泡酒(原料用アルコール、スピリッツ及び焼酎を原料としないものに限る。)については、アルコール分及びエキス分の記載を省略することができる(以下同じ。)。

2 焼酎(砂糖等を加えた焼酎を除く。)、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール及び連続式蒸留スピリッツについては、エキス分の記載を省略することができる(以下同じ。)。

ロ 製造した酒類かすの数量

(4) 貯蔵関係

(4)-1 酒類の移動関係

 容器の異なるごとに次の事項

イ 受入酒類の品目、アルコール分及びエキス分並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

ロ 受入れ又は払出しの年月日

ハ 受入先又は払出先の容器番号

ニ 受入数量及び受入事由

(注) 受入事由は、製成、移入、容器移動、割水、火入、ろ過、おり引、おり上そう又は残しビール等と記載する。

ホ 払出数量及び払出事由

(注) 払出事由は、詰口、移出、容器移動、火入、ろ過、おり引、おり上そう又は原料用等と記載する。

ヘ 受入れ又は払出しの前後の深さ、数量、品温、アルコール分及びエキス分

ト 受入れ又は払出しごとの増減数量

(注) 増減数量は、原則として容器の異なるごとに算出することとするが、容器移動、ろ過及び火入のために連続して移動した場合で容器ごとに正確に増減数量を算出することが困難なときは、受入れ又は払出しの一操作の区分ごとに一括した増減数量により算出しても差し支えない。

(4)-2 酒類割水関係

 酒類の割水(新たに酒類を製造することとなる場合を除く。)について次の事項

イ 割水年月日

ロ 酒類の品目

ハ 容器番号

ニ 割水前及び割水後の深さ、数量、品温、アルコール分、エキス分及び純アルコール数量

ホ 割水数量

ヘ 純アルコール数量の増減数量

(4)-3 混和関係

 酒類の混和(新たに酒類を製造することとなる場合及び同一品目に属する酒類の混和の場合を除く。)について次の事項

イ 混和年月日

ロ 混和前の酒類について次の事項

(イ) 酒類の品目

(ロ) 容器番号

(ハ) 深さ、数量、品温、アルコール分、エキス分及び純アルコール数量

ハ 混和する酒類又は物品について次の事項

(イ) 酒類については品目、物品については品名

(ロ) 数量、品温、アルコール分、エキス分及び純アルコール数量

ニ 混和後の酒類について次の事項

(イ) 酒類の品目

(ロ) 深さ、数量、品温、アルコール分、エキス分及び純アルコール数量

ホ 混和前酒類と混和酒類又は物品との合計数量及び合計純アルコール数量に対する混和後の酒類の数量及び純アルコール数量の増減数量並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

(注) 混和物品が液体でない場合は、当該物品の重量を容量に換算したものを当該物品の記載欄に括弧書で記載し、当該換算容量により増減数量を算出する。

(5) 詰口関係

イ 詰口年月日

ロ 詰口する酒類について次の事項

(イ) 酒類の品目、アルコール分及びエキス分並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

(ロ) 容器番号

(ハ) 払出前及び払出後の深さ、数量及び品温

ハ 詰口払出数量

ニ 詰口容器別の成功個数及び詰口数量

ホ 詰口残数量

(注) 詰口残数量とは、入不足、ごみ入、油入等による不合格品及び端詰のもの等をいい、ロの(ハ)の「払出後の数量」は含まれないことに留意する。

ヘ ビール又は発泡酒については、水切時等の再ろ過した数量

ト 詰口容器の破損の個数及び流失数量

チ 詰口欠減数量

(注) 詰め替えについては、イからチに準じて記載する。

(6) 移出入関係

(6)-1 課税移出関係

イ 移出年月日

ロ 移出した酒類の品目、アルコール分及びエキス分(果実酒及びリキュールに限る。以下(7)-1を除き同じ。)並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

ハ 移出した酒類の容器の容量区分、形態、個数、数量、価格(単価及び総額をいう。以下同じ。)及び適用税率

(注) 形態とは、例えば、こも樽、角樽等特殊な容器の形態をいう(以下同じ。)。

ニ 卸、小売、贈与又は場内飲用等の区分

ホ 受取人の住所及び氏名又は名称並びに移出先の所在地及び名称

(6)-2 移入及び戻入関係

イ 移入又は戻入れの年月日

ロ 移入又は戻入れをした酒類の品目、アルコール分及びエキス分並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

ハ 移入又は戻入れをした酒類の容器の容量区分、形態、個数、数量、酒税額及び適用税率

ニ 移入酒類の価格

ホ 移入酒類を原料に使用した仕込みの記号、順号及び年月日並びに法第47条第1項の規定による申告年月日

ヘ 引渡人の住所及び氏名又は名称並びに引渡先の所在地及び名称

(6)-3 未納税移出及び輸出免税関係

イ 移出年月日

ロ 移出した酒類の品目、アルコール分及びエキス分並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

ハ 移出した酒類の容器区分、個数、数量、価格及び適用税率

ニ 受取人の住所及び氏名又は名称並びに移出先又は輸出先の所在地及び名称

(6)-4 未納税移入及び未納税引取関係

イ 移入又は引取りの年月日

ロ 移入又は引取りをした酒類の品目、アルコール分及びエキス分並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

ハ 移入又は引取りをした酒類の容器の容量区分、個数、数量、価格及び適用税率

ニ 引渡人の住所及び氏名又は名称並びに引渡先の所在地及び名称

(7)その他

(7)-1 腐敗、廃棄及び亡失関係

イ 腐敗、廃棄又は亡失の区分

ロ 腐敗、廃棄又は亡失の年月日

ハ 腐敗、廃棄又は亡失した酒類、酒母又はもろみの区分並びに酒類については品目

ニ 腐敗、廃棄又は亡失した酒類、酒母又はもろみのアルコール分及びエキス分並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合

ホ 腐敗、廃棄又は亡失した酒類、酒母又はもろみの容器容量区分、容器個数及び数量又は容器番号、深さ、数量及び適用税率

ヘ 腐敗、廃棄又は亡失の理由

ト 届出年月日

チ 腐敗した酒類、酒母又はもろみに対する措置

(7)-2 試験等関係

イ 採取年月日

ロ 試験及び分析(以下「試験等」という。)の年月日

ハ 採取した酒類、酒母又はもろみの区分及び元容器の番号又は容器の容量区分(詰口後のものに限る。)

ニ 採取した数量及び試験等に使用した数量

ホ 試験等の結果

ヘ 試験等に使用した残数量の処分の内容

ト 食品衛生法、医薬品医療機器等法、食品表示法又は通則法第74条の4第2項《当該職員の酒税に関する調査等に係る質問検査権》の規定により、酒類、酒母、もろみ又はこうじを収去又は採取された場合は、当該収去又は採取の年月日、数量及び理由並びに収去又は採取した者の所属及び氏名

(7)-3 詰口酒類の容器別受払い等関係

 酒類の品目、銘柄、容器容量、形態、アルコール分、エキス分及び適用税率の別並びに連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の混和酒等については混和割合の別に次の事項

イ 受入又は払出年月日

ロ 受入個数及び受入事由

(注) 受入事由は、詰口、未納税移入、未納税引取、戻入れ及び移入等と記載する。

ハ 払出個数及び払出事由

(注) 払出事由は、課税移出、未納税移出、輸出及び詰め替え等と記載する。

ニ 破損した個数

ホ 受入れ又は払出しごとの現在個数

ヘ 酒類を改装したときは、改装を行った年月日、改装の内容及び改装を行った容器の容量別本数

4 記帳義務における記帳の取扱い

 令第52条《記帳義務》第2項〈酒類の販売業者の記帳義務〉の規定による記帳は、帳合取引、贈与、自家消費、返品等を含めて行わせることに取り扱う。
 なお、酒類の販売業者が次に掲げる事項を厳守する場合については、払出した酒類のうち卸売(製造者又は販売業者に販売することをいう。)したもの以外のものに限り、令第52条第2項第2号に規定する「払出した酒類の数量」及び「払出しの年月日」の記載に代えて、払出した酒類の数量を3か月を超えない期間中の合計数量により一括して記帳(以下「一括記帳」という。)させても差し支えない。

(1) 受入れた酒類の全部について、その受入れの都度当該酒類の引渡人から、令第52条第2項第1号に掲げる事項が記載(同号中「受入れの年月日」については受取人において記載)された伝票の交付を受け、これを5年以上保存しておくこと。

(2) 3か月を超えない月の月中(当該月が会計年度の最終月に当たる場合はその月末)において実地棚卸しを行うこと。

5 酒類の小売についての記帳命令の取扱い

 令第52条第3項《酒類の小売についての記帳省略及び記帳命令》ただし書の規定による記帳命令は、次のいずれかに該当する者に対して記帳を必要とする酒類の1回の取引数量が6リットル以上のものについて記帳するよう命ずることに取り扱う。ただし、1回の取引数量が6リットル未満であっても、酒税の取締り上取引の実態をは握する必要があると認められる者については、その全部又は一部について記載を命ずるものとする。
 なお、記帳命令をした後において、特に継続しておく必要がないと認めたときには、速やかにこれを解除する。

(1) 製造場において酒類を小売する製造者

(2) 酒類販売業免許を受けて酒類を小売する製造者

(3) 事情を知って脱税酒類を購入した販売業者

(4) その他販売業者の取引実態から判断して酒税の取締り上特に必要があると認められる者

(注) 令第52条第3項ただし書の規定により記帳を命じた者については、4に定める一括記帳の取扱いは適用しないものであるから留意する。

6 帳簿の備付場所及び保存期間の取扱い

 法第46条の規定により酒類製造者若しくは酒母等の製造者又は酒類の販売業者が作成する帳簿は、その製造場又は販売場(販売場を有しない者にあっては住所)ごとに常時備え付けておくこと及び帳簿を閉鎖したときは酒類製造者又は酒母等の製造者にあっては閉鎖後7年間、酒類の販売業者にあっては閉鎖後5年間は保存しておくこととする。


酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達目次

(前) 第43条 みなし製造

(次) 第47条 申告義務 〔第1項関係〕