第1項関係

1 「混和」の意義

 法第43条《みなし製造》に規定する「混和」とは、酒類に他物を投入することにより、酒質に変化を来させる行為をいう。したがって、酒類に木片等を投入しこの成分を浸出させる行為は混和となるが、木製のたる等に酒類を貯蔵することより、樽の成分が自然に浸出した場合又は金ぱく等の成分の浸出がないものを投入した場合は、混和とはならない。

2 「混和後のものが酒類であるとき」の範囲

 法第43条《みなし製造》第1項に規定する「混和後のものが酒類であるとき」には、混和前の酒類の品目と同一の場合も含まれる。

3 清酒にアルコール等を加えた場合の取扱い

 法第43条第1項第1号《みなし製造》の規定により、清酒にアルコール又は焼酎を加えた場合において、当該アルコール又は焼酎のアルコール分の重量が、当該清酒の原料となった米(こうじ米を含む。)の重量の100分の50を超えることとなった場合又はアルコール分が22度以上となった場合には、令第50条第2項《みなし製造の規定の適用除外等》の規定の適用がないので、新たに酒類を製造したものとなり、その酒類の品目は法第3条《その他の用語の定義》により判定する。

4 混和酒の取扱い

 法第43条第1項第2号《みなし製造》の規定により清酒と合成清酒とを混和した場合、同項第3号の規定により連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎とを混和した場合又は同項第4号の規定によりウイスキーとブランデーとを混和した場合は、それぞれの酒類の混和酒となる。

5 ぶどう糖又は水あめを溶解して混和する場合の取扱い

 規則第13条《みなし製造の規定の適用除外等》第1項の規定により、清酒に混和する場合の混和の方法は、「同時又は直前」であるが、炭酸水にぶどう糖又は水あめを溶解し、それを清酒に混和する場合は、同時に混和したものとして取り扱う。

6 「香味料」の範囲

 規則第13条《みなし製造の規定の適用除外等》第1項の表に掲げる「香味料」には、同表に掲げる「清酒以外の酒類」は含まない。

7 酒類に酒類を混和した場合の取扱い

 法第43条《みなし製造》第1項第5号の規定により合成清酒に清酒以外の酒類を混和した場合において、清酒以外の酒類のアルコール分の総量が合成清酒のアルコール分の総量の100分の5を超えることとなった場合には、新たに酒類を製造したものとなり、その酒類の品目は法第3条《その他の用語の定義》の規定により判定する。

8 合成清酒に米を原料の全部又は一部として製造した物品を混和する場合の重量計算

 規則第13条《みなし製造の規定の適用除外等》第1項の規定により、合成清酒に米を原料の全部又は一部として製造した物品を混和する場合の法第3条第8号に規定する米の重量の計算は、当該混和する物品の原料となった米の重量も含めて行う。

9 砂糖等を加えた焼酎と原料用アルコール等との混和の取扱い

 法第3条第9号又は第10号ヘ《その他の用語の定義》の規定に該当する砂糖等を加えた焼酎と原料用アルコール又は連続式蒸留スピリッツ(連続式蒸留焼酎と同一の製造方法で製造したアルコール分36度以上45度以下のスピリッツをいう。以下同じ。)とを混和した酒類は、令第50条第4項《みなし製造の規定の適用除外等》の規定により、混和後の酒類のアルコール分が26度以上であるもの又は規則第13条第2項《みなし製造の規定の適用除外等》の規定により、木製の容器に貯蔵した期間が1年以上である原料用アルコール若しくは連続式蒸留スピリッツを混和したものは、それぞれスピリッツに該当するが、混和後の酒類のアルコール分が26度未満で、木製の容器に貯蔵した期間が1年未満の原料用アルコール又は連続式蒸留スピリッツを混和したものは、焼酎とする。

10 酒類に保存のためアルコール等を加える場合の取扱い

 法第43条第1項第6号《みなし製造》の規定による承認の取扱いは、次による。

(1) 酒類に保存のためアルコール又は焼酎を混和する場合は、製造者又はみなし製造者が、その者の製造場又はみなし製造場において必要最少限度と認められる数量を混和する場合に限り承認を与える。

(2) (1)の場合において、混和される酒類が果実酒であるときは原則として承認を与えない。ただし、甘味果実酒の原料用果実酒であって、その貯蔵方法等からみてアルコール分を15度以上にしなければ、酒質の保全ができないと認められる場合には、アルコール分17度を限度として承認を与えても差し支えない。

(3) (1)及び(2)により承認を与えようとする場合は、国税局長に上申することとし、国税局長は鑑定官室長の調査結果に基づき必要な指示を行う。

(4) 販売業者が混和する場合又は製造者が免許を有しない酒類(製造免許を受けた酒類の原料とする酒類を除く。)に混和する場合は、原則として承認を与えない。

第2項関係

1 ガス入り酒類として取り扱わないもの

 温度せっ氏20度の時におけるガス圧が49kPa未満の酒類は、酒類に炭酸ガスを加えた酒類として取り扱わない。

2 酒類に炭酸ガスを加える場合の取扱い

 酒類に炭酸ガス(炭酸水を含む。3において同じ。)を加える行為は、新たな製造行為となる。したがって、酒類に炭酸ガスを加える場合は、当該酒類の製造免許を有する場合に限られる。

3 「この法律で別に定める場合」の意義

 法第43条《みなし製造》第2項に規定する「この法律で別に定める場合」とは、同条により酒類に炭酸ガスを加えたことにより、酒類の品目が異なることとなる場合をいう。

第9項関係

1 連続式蒸留アルコール又は連続式蒸留スピリッツと単式蒸留アルコール及び水又は炭酸水とを混和した場合の取扱い

 連続式蒸留機で蒸留した原料用アルコール(以下「連続式蒸留アルコール」という。)又は連続式蒸留スピリッツと、単式蒸留機で蒸留した原料用アルコール(以下「単式蒸留アルコール」という。)及び水又は炭酸水とを混和してアルコール分を36度未満の酒類としたときは、新たに連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和焼酎を製造したものとする。

2 連続式蒸留スピリッツと単式蒸留焼酎とを混和した場合の取扱い

 連続式蒸留スピリッツと単式蒸留焼酎とを混和したときは、混和後の酒類のアルコール分に応じ、次のとおり新たに酒類を製造したものとすることに取り扱う。

(1) アルコール分が36度未満のものは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和焼酎を製造したものとする。

(2) アルコール分が36度以上45度以下のものは、スピリッツを製造したものとする。

(3) (2)のスピリッツに水を混和し、アルコール分を36度未満としたものは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和焼酎を製造したものとする。

3 連続式蒸留アルコール等と単式蒸留焼酎等を混和した場合の取扱い

 連続式蒸留アルコールと単式蒸留焼酎、単式蒸留アルコールと連続式蒸留焼酎又は連続式蒸留スピリッツと単式蒸留アルコールとを混和したときは、混和後のもののアルコール分に応じ次のとおり新たに酒類を製造したものとする。

(1) アルコール分が36度未満のものは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和焼酎を製造したものとする。

(2) アルコール分が36度以上45度以下のものは、スピリッツを製造したものとする。

(3) (2)のスピリッツに水を混和し、アルコール分を36度未満としたものは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和焼酎を製造したものとする。

(4) アルコール分が45度を超えるものは原料用アルコールを製造したものとする。

(5) (4)の原料用アルコールに水を混和し、アルコール分を36度以上45度以下としたものは、スピリッツを製造したものとし、これに更に水を混和し、アルコール分が36度未満としたものは、連続式蒸留焼酎と単式蒸留焼酎との混和焼酎を製造したものとする。

4 砂糖等を加えた焼酎の貯蔵期間の取扱い

 規則第13条第7項《スピリッツのみなし製造》に規定する「酒類の製造場で木製の容器に貯蔵した場合において、当該酒類が木製の容器に通算して1年以上貯蔵した」の期間の計算に当たっては、砂糖等を加えた焼酎、原料用アルコール、スピリッツ又は焼酎で過去において木製の容器に貯蔵したものがある場合は、そのうちの最長のものの期間を通算することとする。

5 酒質矯正剤等の指定の取扱い

 規則第13条第8項第3号〈酒類の保存のために混和する物品〉に規定する国税庁長官の指定する物品の指定は、酒類保存のため酒類に混和することができる物品の指定告示(平成9年国税庁告示第5号)に定めるところによる。

第10項関係

1 消費の直前において混和した酒類を販売した場合の取扱い

 酒場、料理店その他の酒類を専ら自己の営業場において飲用に供することを業とする者が当該営業場以外の場所において消費されることを予知して混和した場合又は酒類の消費者が他に販売する目的で混和した場合は、消費の直前において混和したこととはならないので、法第54条《無免許製造の罪》の規定に該当し、無免許製造となるものであるから留意する。

2 「自ら消費するため」の範囲

 令第50条《みなし製造の規定の適用除外等》第13項に規定する「自ら消費するため」には同居の親族が消費するためのものを含むものとし、他人の委託を受けて混和するものは含まないものとする。

(注) 「自ら」には、法人は含まないものであるから留意する。

第11項関係

1 「自ら消費するため」の範囲

 法第43条《みなし製造》第11項に規定する「自ら消費するため」の範囲は、第10項関係の2〈「自ら消費するため」の範囲〉の定めを準用する。

第1項関係

1 原料用酒類を移出する場合の承認の取扱い

 法第44条第1項の規定による承認は、与えないこととし、事情やむを得ない場合においては、国税局長の指示によって承認を与えることとする。

第2項関係

1 「処分」の意義

 法第44条《原料用酒類及び酒母等の処分禁止》に規定する「処分」とは、酒類を実際に消費、廃棄等(分析を除く。)することをいう。

2 酒母等を移出等する場合の承認の取扱い

 法第44条第2項《原料用酒類及び酒母等の処分禁止》の規定により、酒母又はもろみの製造者が酒母等を処分し、又はその製造場から移出しようとする場合の承認は、次による。

(1) 酒母等の製造者から製造者又は酒母等の製造者の酵母譲受けの便に資するため、酵母をあらかじめ、当該酒母等の製造者の支店・出張所又は醸造用品商に移出蔵置したい旨の酒母の移出承認申請があった場合には、移出先を所轄する税務署長と協議の上、所轄税務署長が酒税の保全又は取締り上特に支障がないと認めたときは、次の事項を遵守する範囲において、承認を与えても差し支えない。

イ 移出者は、移入者を十分管理監督することとし、移出した酒母について一切の責任を負う。

ロ 移入者は、酒類製造者又は酒母等の製造者以外の者に販売しない。

ハ 移入者は、酵母の種類ごとの受払事績(受払年月日、数量及び販売先)を明確に記帳し、毎月分の酵母の受払事績を、移出者に通知する。

(2) 残しビール等をビール若しくは発泡酒の製造に使用する場合又は乾燥酵母等の製造に使用する場合には、酒母として受払の事実が適正に記帳されており、かつ、所轄税務署長が酒税の取締り上支障がないと認めたときは、法第44条第2項第1号《原料用酒類及び酒母等の処分禁止》の規定に該当するものとして処分又は移出の承認は要しないことに取り扱う。

(3) ビール又は発泡酒の製造者から、残しビール等を医薬品、飼料等の原料として移出(売却)したい旨の酒母の移出承認申請があった場合には、所轄税務署長が酒税の保全又は取締り上特に支障がないと認めたときは、承認を与えても差し支えない。

(4) 酒類等の製造者から、酒母等を酒類以外のものの原料として使用するため処分したい旨の承認申請があった場合には、酒母等に酒類として飲用することができない処置(以下「不可飲処置」という。)を命じた上で、承認を与えても差し支えない。

(5) (1)、(3)又は(4)に掲げる承認事項について、酒母又はもろみの処分又は移出承認申請があった場合には、法第50条第1項関係の1<承認の取り扱い>に準じ、毎年4月1日から翌年3月31日までの期間の範囲内で承認を与えても差し支えない。

(6) 職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)第44条《技能検定》の規定に基づく酒造技能検定試験に使用したい旨の移出承認申請があった場合には、承認を与えても差し支えない。

(7) 果実酒等原料用ぶどう果の現地破砕にかかるもろみの移動等に関する取扱いは、次による。

イ もろみの移出の承認の要件
 現地破砕にかかるもろみを、もろみの製造場から果実酒等製造場へ移出する場合において、次の事項に該当する場合には承認を与えても差し支えない。

(イ) もろみの移出を行う者は、果実酒等製造者であること。

(ロ) もろみの移出に使用する容器、車両等は全て果実酒等製造者の管理にかかるものであること。この場合の容器は、第47条第1項関係の3〈容器の容量の測定方法〉の定めに基づき容量の測定した容器であること。

(ハ) もろみは、破砕当日中に果実酒等製造場に移入されるものであること。

ロ もろみの移出承認の処理方法

(イ) 移出承認の申請
 もろみの移出承認申請書は、全てのもろみ製造場における毎月分の移出予定について一括でとりまとめ、その月において移出を行う最初の日の3日前までに、もろみ製造場の所轄税務署長あて2部提出させる。

(ロ) 移出の承認
 もろみの移出承認申請書の提出を受けた税務署長は、申請内容、イに定める承認の要件に該当するかを検討の上、承認を与えることが相当と認められるものについては、申請書の一通に承認の旨を記載のうえ申請者に交付する。

ハ 記帳等の取扱い
 現地破砕及びもろみの移出事績については、もろみの製造場ごとに記帳することとし、その帳簿については、果実酒等製造場において保管させる。

(注) 現地破砕にかかる記帳事項については、果実酒等製造場での果実酒等製造過程におけるぶどう果の破砕にかかる記帳事項と同様である。

第3項関係

1 不可飲処置を命ずる場合の取扱い

(1) 法第44条第3項の規定により、酒母等に不可飲処置を施すべき旨を命ずる場合には、次表により処置させることとする。
不可飲処置を命ずる場合の取扱いの表

※W/V:Weight/Volume;重量/容量比

(2) (1)に掲げる物品以外の物品を加えることで明らかに飲用することができず、かつ、酒類への不可逆性が認められるものについては、国税局長に上申の上、その指示により処置させて差し支えない。
 なお、当該指示に基づき処置させたものを移出する場合は、移入者に受払実績(受払年月日、数量、処分方法等)を記帳させ、提出させる等して、移出者は、移入者を十分管理監督するよう指導することとする。

(注) 不可逆性とは、不可飲処置により加えた物品が加工等により容易に除去できず、不可飲処置前の状態(酒類)に戻すことができないことを指す。

1 「法令において認められる場合」の意義

 法第45条に規定する「法令において認められる場合」とは、次に掲げる場合をいう。

(1) 法第7条第1項ただし書《製造免許を要しない場合》の規定により、製造者がその製造場において、その免許を受けた酒類の原料とするため製造した酒類を当該製造場において所持する場合

(2) 法第8条第1号から第3号まで《酒母等の製造免許》の規定により、製造者若しくは酒母等の製造者又はアルコール事業法の規定によるアルコールの製造者が、その製造場において酒類若しくはもろみ又はアルコールの製造の用に供するため製造した酒母等を当該製造場において所持する場合

(3) 酒類若しくは酒母等の製造者が、法第44条第1項若しくは第2項《原料用酒類及び酒母等の処分禁止》の規定により、酒類若しくは酒母等を税務署長の承認を受けて移出する場合において、当該酒類若しくは酒母等を当該製造者がその製造場以外の場所で所持し、若しくは譲渡し、又は当該製造者から酒類若しくは酒母等を譲り受けた者が、当該酒類若しくは酒母等を譲り受け、若しくは譲り受けて所持する場合

(4) 通則法第11章その他の法令の規定に基づき公売若しくは払い下げられた酒類又は酒母等を譲り受け所持し、若しくは譲渡する場合

(5) 通則法第11章の規定により還付を受けた酒類又は酒母等を所持する場合

2 「所持」の意義

 法第45条に規定する「所持」とは、物が社会通念上ある者の支配に属すると認められるような事実上の状態をいい、所持の目的が自分のためであると他人のためであるとを問わない。また、現実にその物を持っている必要はなく、社会通念上、物を支配していると認められる場合には、なお所持の範ちゅうに入るものとする。

3 「譲り渡し」又は「譲り受け」の意義

 法第45条に規定する「譲り渡し」又は「譲り受け」とは、その酒類若しくは酒母等に対する所有権の移転があればよく、対価の授受又は当該酒類若しくは酒母等の場所的移動があるかどうかを問わない。


酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達目次

(前) 第36条 酒類の差押え

(次) 第46条 記帳義務