第10章 罰則

趣旨

1 法第187条は、納税者又は納税者と一定の関係がある者が、納税者に対する滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税(租税条約等実施特例法第11条の2第1項に規定する共助対象国税をいう。以下同じ。)の徴収の共助の要請による徴収を免れ、又は免れさせる目的で、その納税者の所有に属する財産を、隠蔽、損壊その他財産の価値を減少させる等の行為をした場合には、それらの行為者に対し、一定の刑罰を科することを定めたものである。

犯罪の成立

(滞納処分の執行等を免れる目的)

2 法第187条第1項の「滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収を免れる目的」とは、滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収の実益をなくそうとする意図をいう。

(滞納処分等との関係)

3 法第187条の犯罪の成立については、滞納処分の執行若しくは租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収をしたかどうか又は滞納処分の執行若しくは租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収の対象となった国税の徴収ができたかどうかは、関係がない。

犯罪行為の態様

(隠蔽)

4 法第187条第1項の「隠蔽」とは、財産についての仮装売買、仮装贈与、財産の隠匿等によって、徴収職員又は相手国等の税務当局の職員(徴収の共助の要請による徴収に関する事務に従事する者に限る。)による財産の発見を困難にさせる行為をいう。

(損壊)

5 法第187条第1項の「損壊」とは、財産の構造の一部又は全部について損傷を与え、その性質、形状を変える等その財産の財産的価値を害する行為をいう。

(国に不利益な処分)

6 法第187条第1項の国に不利益な「処分」とは、贈与、不当に低額な対価による売買、換価容易な財産と換価困難な財産との交換、賃借権の設定、債務免除その他財産の処分によって国を不利益にさせる一切の行為をいう。

(財産の負担を虚偽に増加させる行為)

7 法第187条第1項の「財産に係る負担を偽つて増加する行為」とは、虚偽に地上権、賃借権を設定する等その財産の価値の減少を仮装する一切の行為をいう。

(現状を改変して財産の価額を減損させる又は滞納処分費等を増大させる行為)

7-2 法第187条第1項の「現状を改変して、その財産の価額を減損し、若しくはその滞納処分に係る滞納処分費若しくは租税条約等の相手方に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収に関する費用を増大させる行為」とは、不動産上に廃棄物を持ち込む等、財産自体に直接損傷を与えずにその現状を改変して、財産の価額を減損し、又はその滞納処分に係る滞納処分費若しくは租税条約等の相手方に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収に関する費用を増大させる一切の行為をいう。

処罰を受ける者

(納税者)

8 法第187条の「納税者」とは、法第2条第6号《納税者の定義》の納税者をいう。
 また、法第24条第1項《譲渡担保財産からの徴収》の規定の適用を受ける譲渡担保権者は、罰則の規定の適用については納税者とみなすことに留意する(同条第9項)。

(納税者の財産を占有する第三者)

9 法第187条第2項の「納税者の財産を占有する第三者」とは、正当な権原の有無にかかわらず、納税者の財産を占有している第三者をいう。

(納税者又はその財産を占有する第三者の相手方)

10 法第187条第3項の「納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となつたとき」とは、納税者又は納税者の財産を占有する第三者がした4から7-2までの行為について、それらの行為の相手方となったときをいう。

(情を知って)

11 法第187条第3項の「情を知つて」とは、納税者又はその財産を占有する第三者が、滞納処分の執行又は租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収を免れ、又は免れさせる目的で法第187条第1項所定の行為をすることを、10の者が知っていることをいう。

告発

12 徴収職員は、その職務を行うことにより犯罪があると認めるときは、告発をしなければならない(刑事訴訟法第239条第2項)。

公訴時効

13 法第187条に規定する犯罪の公訴時効は、犯罪行為が終わった時から3年を経過することによって完成する(刑事訴訟法第250条第2項第6号、第253条参照)。

国外犯

14 法第187条第1項から第3項までの罪は、納税者又はその財産を占有する第三者が日本国外において租税条約等の相手国等に対する共助対象国税の徴収の共助の要請による徴収を免れ、若しくは免れさせる目的で法第187条第1項所定の行為をした場合又は情を知ってこれらの行為につき納税者又はその財産を占有する第三者の相手方となった場合にも適用される(同条第4項、第5項)。