第2節 滞納処分の停止
1 法第153条の「滞納者」には、通則法第38条第3項《繰上保全差押え》の規定の適用を受ける納税者、同法第52条第1項《担保の処分》の規定により処分を受ける担保財産の所有者である物上保証人、法第24条第1項《譲渡担保権者からの徴収》の規定の適用を受ける譲渡担保権者及び法第159条第1項《保全差押え》の規定の適用を受ける納税義務があると認められる者は、含まれない。
(滞納処分の執行)
2 法第153条第1項第1号の「滞納処分の執行」をすることができる財産がないときとは、滞納処分の停止をするかどうかを判定する時(以下第153条関係において「判定時」という。)において、次に掲げる場合のいずれかに該当するときをいう。
(1) 既に差し押さえた財産及び差押えの対象となり得る財産の処分予定価額が、滞納処分費(判定時後のものに限る。)及び法第2章第3節《国税と被担保債権との調整》の規定等により国税に優先する債権の合計額を超える見込みがない場合
(2) 差押えの対象となり得る全ての財産について差し押さえ、換価(債権の取立てを含む。)を終わったが、なお徴収できない国税がある場合
(徴収の共助の要請による徴収)
2-2 法第153条第1項第1号の「徴収の共助の要請による徴収」をすることができる財産がないときとは、判定時において、次に掲げる場合のいずれかに該当するときをいう。
(1) 法施行地域外に滞納者の財産がないと認められるとき
(2) 法施行地域外に滞納者の財産があると認められる場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき
イ その財産があると認められる国又は地域との間に徴収の共助に関する規定を有する租税条約等が締結されていないとき
ロ その財産があると認められる国又は地域との間に徴収の共助に関する規定を有する租税条約等が締結されている場合において、次に掲げる場合のいずれかに該当するとき
(イ) その国税が租税条約等に定める徴収の共助の要請に係る要件(税目、期間等)に該当しないとき
(ロ) その財産が相手国等の法令若しくは行政上の慣行により差押えが禁止されているとき、又はその財産の処分予定価額が相手国等の法令若しくは行政上の慣行により徴収の共助の要請に係る国税に優先する債権の合計額を超える見込みがないとき
(ハ) 上記(イ)又は(ロ)に掲げる場合のほか、相手国等における戦乱、天災、通信又は送金の途絶、相手国等の税務当局との行政上の負担の不均衡その他の事情により、徴収の共助の要請により徴収することが困難であると認められるとき
(生活の窮迫)
3 法第153条第1項第2号の「生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」とは、滞納者(個人に限る。)の財産につき滞納処分の執行又は徴収の共助の要請による徴収(以下16において「滞納処分の執行等」という。)をすることにより、滞納者が生活保護法の適用を受けなければ生活を維持できない程度の状態(法第76条第1項第4号に規定する金額で営まれる生活の程度)になるおそれのある場合をいう。
(住居所及び財産不明の場合)
4 法第153条第1項第3号の規定は、滞納者の住所又は居所及び財産がともに不明な場合に限り、適用される。
(申請に基づかないこと)
5 法第153条第1項の「執行を停止することができる」とは、法第153条第1項第1号から第3号までのいずれかの理由に該当する場合には、滞納者の申請に基づかないで、税務署長が職権をもって滞納処分の停止ができることをいう。したがって、滞納者は、滞納処分の停止を受けないことについて不服申立て又は訴えを提起することができない。
(交付要求等をしている場合)
6 滞納者の財産について、強制換価手続が行われ、執行機関に対して交付要求(参加差押えを含む。)をしている場合には、滞納処分の停止をしないものとする。ただし、徴収見込額がないと認められるときは、滞納処分の停止をして差し支えない。
(第二次納税義務者等がある場合)
7 第二次納税義務者、譲渡担保財産、保証人又は物上保証に係る財産から滞納税金の徴収ができる場合には、主たる納税者の国税(第二次納税義務、譲渡担保権者の物的納税責任、保証又は物上保証に係る国税に限る。)については、滞納処分の停止をしないものとする。
なお、第二次納税義務者又は保証人について滞納処分の停止の理由がある場合には、それらの者に対しては、主たる納税者に関係なく、滞納処分の停止をすることができる。
(一部停止)
8 滞納処分の停止は、原則として、滞納者の有する滞納国税の全部について行うものとする。ただし、次のいずれかに該当する場合において、徴収可能と認められる金額に相当する金銭の配当が見込まれる滞納国税以外の滞納国税について滞納処分の停止をすることができると認められるときは、その滞納国税について滞納処分の停止をして差し支えない。この場合においては、滞納処分の停止の通知に際し、その旨を明らかにするものとする。
(1) 滞納処分により差し押さえた債権について、その全部又は一部の取立てに長期間を要すると認められる場合
(2) 強制換価手続の執行機関に対して交付要求をしているが、その執行機関からの配当を受けるまでに長期間を要すると認められる場合
(3) 滞納処分により差し押さえた不動産について、その不動産を再公売に付しても売却できないなど換価に長期間を要すると認められる場合
9 法第153条第2項の規定による滞納処分の停止の通知は、原則として書面により行うものとする。この書面の様式は、別に定めるところによる。
(差押えの解除)
10 滞納処分の停止をしたときは、その停止の期間内はその停止に係る国税につき新たな差押えをすることができず、既に差し押さえた財産についてはその差押えを解除しなければならない(法第153条第3項)。
なお、滞納処分の停止をした場合においても、交付要求又は参加差押えをすることができる。この場合において、参加差押えが差押えの効力を生じたときは、法第153条第3項の規定に該当することがある。
(納付等)
11 滞納処分の停止をした場合において、滞納者が自発的にその停止に係る国税を納付したときにその納付金を収納し、又は過誤納金等若しくは交付要求(参加差押えを含む。)に係る受入金をその停止に係る国税に充てることは差し支えない。
(時効)
12 滞納処分の停止の期間中においても、その滞納処分の停止に係る国税の消滅時効は進行する(通則法第73条第4項、第72条第3項参照)。
(延滞税の消滅)
13 法第153条第4項又は第5項の規定により、滞納処分の停止をした国税の納税義務が消滅した場合においては、その延滞税についても、その納付の義務は消滅する。
(延滞税の免除)
14 滞納処分の停止をした場合には、停止をした国税に係る延滞税のうち、その停止をした期間に対応する部分の金額に相当する金額を免除する(通則法第63条第1項本文)。この場合の「停止をした期間」とは、その停止をした日から起算してその取消しの日又は停止に係る国税の完納等による納税義務の消滅の日までをいう。
なお、法第154条第1項《滞納処分の停止の取消し》の規定による取消しの基因となる事実が生じた場合には、その生じた日以後の期間に対応する部分の金額については免除しないことができる(通則法第63条第1項ただし書)。
(3年間の継続)
15 滞納処分の停止をした場合において、その処分が取り消されないで3年間継続したときは、その3年の期間を経過した時に、その滞納処分の停止をした国税を納付する義務は当然に消滅する(法第153条第4項)。この場合の「3年間継続したとき」とは、滞納処分の停止をした日の翌日から起算して3年を経過した日をいう。
(直ちに消滅させることができる場合)
16 法第153条第5項の「その国税が限定承認に係るものであるとき、その他その国税を徴収することができないことが明らかであるとき」とは、おおむね次のいずれかに該当する場合をいう。
(1) 限定承認をした相続人が相続によって承継した国税を有する場合において、その相続による相続財産について滞納処分の執行等をすることができないとき(第153条関係2−2(2)イ及びロ(ハ)に該当する場合を除く。)。
(2) 相続人が不存在の場合又はすべての相続人が相続を放棄した場合において、相続財産法人について滞納処分の執行等をすることができる財産がないとき(第153条関係2−2(2)イ及びロ(ハ)に該当する場合を除く。以下この項において同じ。)。
(3) 解散した法人又は解散の登記はないが廃業して将来事業再開の見込みが全くない法人について、滞納処分の執行等をすることができる財産がないとき、又はその所在及び滞納処分の執行等をすることができる財産がともに不明であるとき。
(4) 株式会社又は協同組織金融機関等について会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律による更生計画が認可決定された場合において、更正又は決定の遅延等により未納の国税及び滞納処分費を更生債権として期日までに届け出なかったために更生計画により認められず、会社更生法第204条《更生債権等の免責等》又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律第125条《更生債権等の免責等》等の規定によりその会社が免責されたとき。
17 法第153条第4項又は第5項の規定により納税義務が消滅したときは、滞納者に対してその旨を通知するものとする。この書面の様式は、別に定めるところによる。