第6章 滞納処分に関する猶予及び停止等

第1節 換価の猶予

滞納者

1 法第151条の「滞納者」には、次に掲げる者は含まれない。

(1) 通則法第38条第3項《繰上保全差押え》の規定の適用を受ける者

(2) 通則法第52条第1項《担保の処分》の規定により処分を受ける担保財産の所有者である物上保証人

(3) 徴収法第24条第1項《譲渡担保権者からの徴収》の規定の適用を受ける譲渡担保権者

(4) 徴収法第159条第1項《保全差押え》の規定の適用を受ける納税義務があると認められる者

換価の猶予の要件

(納税についての誠実な意思)

2 法第151条第1項の「納税について誠実な意思を有する」とは、滞納者が、現在においてその滞納に係る国税を優先的に納付する意思を有していることをいう。
 納税についての誠実な意思の有無の判定は、従来において期限内に納付していたこと、過去に納税の猶予又は換価の猶予等を受けた場合において確実に分割納付を履行していたこと、滞納国税の早期完納に向けた経費の節約、借入の返済額の減額、資金調達等の努力が適切になされていることなどの事情を考慮して行う。この場合においては、過去のほ脱の行為又は滞納の事実のみで納税についての誠実な意思の有無を判定するのではなく、現在における滞納国税の早期完納に向けた取組も併せて考慮した上で判定する。

(事業継続の困難)

3 法第151条第1項第1号の「事業の継続を困難にするおそれがあるとき」とは、事業に不要不急の資産を処分するなど、事業経営の合理化を行った後においても、なお差押財産を換価することにより、事業を休止し、又は廃止させるなど、その滞納者の事業の継続を困難にするおそれがある場合をいう。

(生活維持の困難)

4 法第151条第1項第1号の「生活の維持を困難にするおそれがあるとき」とは、差押財産を換価することにより、滞納者の必要最低限の生活費程度の収入が期待できなくなる場合をいう。

(国税の徴収上有利)

5 法第151条第1項第2号の「国税の徴収上有利であるとき」とは、次のいずれかに該当するときをいう。

(1) 滞納者の財産のうち滞納処分ができる全ての財産につき滞納処分を執行したとしても、その徴収することができる金額が徴収しようとする国税に不足すると認められる場合であって、換価処分を執行しないこととした場合には、その猶予期間内に新たな滞納を生ずることなく、その猶予すべき国税の全額を徴収することができると認められるとき。

(2) 換価すべき財産の性質、形状、用途、所在等の関係で換価できるまでには相当の期間を要すると認められる場合で、換価処分を執行しないことが、その猶予すべき国税及びその猶予すべき期間内において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であると認められるとき。

(3) 滞納国税につき直ちに徴収できる場合等であっても、最近において納付すべきこととなる国税と既に滞納となっている国税との総額については、換価処分を執行しないことが徴収上有利であると認められるとき。

(猶予期間)

5-2 法第151条第1項の規定による換価の猶予をする期間は、1年を限度として、滞納者の財産の状況その他の事情からみて合理的かつ妥当な金額で分割して納付した場合において、その猶予に係る国税を完納することができる最短期間とする。

(納税の猶予等との関係)

6 法第151条第1項の「国税通則法第46条第1項から第3項まで(納税の猶予の要件等)又は次条第1項の規定の適用を受けているものを除く」とは、これらの規定により現に納税の猶予又は申請による換価の猶予をしている国税については、法第151条第1項の規定による換価の猶予をしないことをいう。

(第1号と第2号の関係)

6-2 法第151条第1項第1号の規定による換価の猶予をした国税について、改めて同号の規定による換価の猶予をすることはできない。ただし、同号の規定による換価の猶予をした国税について、その猶予期間が終了した後、その滞納者が同項第2号に該当する場合は、同号の規定による換価の猶予をすることができる。
 なお、法第151条第1項第2号の規定による換価の猶予をした国税についても、同様である。

7 削除

8 削除

猶予の効果

(差押えとの関係)

9 換価の猶予をした場合は、既にした差押財産についての差押えは解除せず、また、督促及び新たな差押えをすることもできる(法第152条第2項、第3項)。

(参加差押え等)

10 換価の猶予をした場合において、猶予に係る国税につき既にした参加差押え又は交付要求を取り消す必要がないことはもちろん、新たに参加差押え若しくは交付要求をし、又は過誤納金等若しくは交付要求に係る受入金をその猶予に係る国税に充てることができる。

(延滞税の免除)

11 換価の猶予をした場合には、原則として、猶予した国税に係る延滞税のうち、その猶予期間に対応する部分の金額の2分の1に相当する金額を免除する(通則法第63条第1項。なお、租税特別措置法第94条第2項《延滞税の割合の特例》の規定によりその額を超える額について免除できる場合には、その超える額に相当する額も免除する。)。
 また、残余の部分について、一定の事由に該当するときは、猶予期間に対応する部分の金額でその納付が困難と認められるものを限度として、さらに免除することができる(通則法第63条第3項)。

(時効の停止)

12 換価の猶予をした場合における国税の徴収権の時効は、その猶予に係る部分の国税(その国税に併せて納付すべき延滞税及び利子税を含む。)につき、その猶予されている期間内は進行しない(通則法第73条第4項)。

会社更生法による換価の猶予

13 会社更生法に基づく換価の猶予は、法第151条の換価の猶予と同様の性質を有するものであるが、その内容、効果等は会社更生法の規定によるものであって、同条の規定によるものとは異なる(会社更生法第169条、第199条、第201条参照)。
 なお、会社更生法に基づく換価の猶予については、次のことに留意する。

(1)〜(3) (省略)

猶予調査のために必要な書類の提出

(書類の提出を求めることができる場合)

13-2 法第151条第2項の「必要があると認めるとき」とは、次に掲げる場合をいう。

(1) 換価の猶予又は猶予期間の延長をするに当たって、換価の猶予の要件を充足するかどうかを判断するため、又は猶予する金額、期間のほか、猶予に係る金額を分割して納付させるための各納付期限(以下第152条関係までにおいて「分割納付期限」という。)及び分割納付期限ごとの納付金額(以下第152条関係までにおいて「分割納付金額」という。)を定めるために、滞納者の現在の資産及び負債の状況並びに今後の収入及び支出の見込み等を調査する必要があると認める場合

(2) 担保を提供させる必要があると認める場合

(分割納付のために必要な書類)

13-3 法第151条第2項の「分割して納付させるために必要となる書類」とは、分割納付期限及び分割納付金額が記載された書類をいう。この書面の様式は、別に定めるところによる。

(書類の提出との関係)

13-4 法第151条第2項の税務署長の求めに応じて提出された書類は、税務署長が職権により同条第1項の規定による換価の猶予をするに当たり、その判断の参考とするものであり、その書類を提出したことをもって同項の規定による換価の猶予がなされるものではない。

(注) 滞納者は、法第151条第2項の書類を提出した場合であっても、税務署長が換価の猶予を適用しないことについて、不服申立て又は訴えの提起をすることができないことに留意する。