捜索ができる場合

(滞納処分のため必要があるとき)

1 法第142条の「滞納処分のため必要があるとき」とは、法第5章《滞納処分》の規定による滞納処分のため必要があるときをいい、差押財産の引揚げ、見積価額の評定等のため必要があるときも含まれる。

(所持)

2 法第142条第2項の「所持」とは、物が外観的に直接支配されている状態をいい、時間的継続及びその主体の意思を問わない(大正3.10.22大判参照)。

(引渡し)

3 法第142条第2項の「引渡をしないとき」とは、滞納者の財産を所持している者が、その財産を現実に引き渡さないときをいい、法第58条第2項《第三者が占有する動産の引渡命令》の規定により引渡命令を受けた者又は第60条第1項《差押動産の保管》の規定により保管する者が引渡しをしないときに限られない。

(相当の理由)

4 法第142条第2項第2号の「相当の理由がある場合」とは、滞納者等の陳述、帳簿書類の調査、伝聞調査等により、財産を所持すると認められる場合等をいう。

捜索ができる物及び場所

(滞納者又は第三者の物)

5 捜索ができる「物」には、滞納者又は3に規定する者が使用し、若しくは使用していると認められる金庫、貸金庫、たんす、書箱、かばん、戸棚、長持、封筒等がある。

(注) 貸金庫については、滞納者が銀行等に対して有する貸金庫の内容物の一括引渡請求権を差し押さえることもできる(平成11.11.29最高判参照)。

(滞納者又は第三者の住居その他の場所)

6 捜索ができる「場所」には、滞納者又は3に規定する者が使用し、若しくは使用していると認められる住居、事務所、営業所、工場、倉庫等の建物のほか、間借り、宿泊中の旅館の部屋等があり、また、建物の敷地はもちろん、船車の類で通常人が使用し、又は物が蔵置される場所が含まれるものとする。
なお、解散した法人について、清算事務が執られたとみられる清算人の住居は、捜索ができる「場所」に含まれる(昭和45.4.14東京高判参照)。

捜索の方法

(戸、金庫等の開扉)

7 徴収職員は、滞納者又は3に規定する者の物又は住居等の捜索に当たり、閉鎖してある戸、扉、金庫等を開かせなければ捜索の目的を達することができない場合には、その滞納者又は3に規定する者に開かせ、又は自ら開くことができる(法第142条第3項)。ただし、徴収職員が自ら開くのは、滞納者又は3に規定する者が徴収職員の開扉の求めに応じないとき、不在のとき等やむを得ないときに限るものとする。

(必要な処分)

8 法第142条第3項の「必要な処分」とは、徴収職員が自ら開扉するための錠の除去等をいう。この場合の錠の除去等は、必要に応じて第三者(3に規定する者を除く。)にさせることができる。
なお、これらの処分をするに当たっては、器物の損壊等は、必要最小限度にとどめるよう配慮する。

(立会人)

9 捜索をする場合には、法第144条《捜索の立会人》の規定により、立会人を置かなければならない。

(捜索調書)

10 捜索をした場合における捜索調書の作成等については、第146条関係に定めるところによる。

時効の完成猶予及び更新

11 差押えのため捜索をしたが、差し押さえるべき財産がないために差押えができなかった場合は、その捜索が終了した時に時効の更新の効力が生ずる(民法第148条第2項、昭和34.12.7大阪高判、昭和42.1.31名古屋地判参照)。

(注) この場合において、その捜索が第三者の住居等につきされたものであるときは、捜索による時効の更新の効力は、その捜索につき捜索調書の謄本等により滞納者に対して通知した時に生ずる(民法第154条参照)。

刑法との関係

12 捜索に際して、徴収職員に対して暴行又は脅迫を加えた者については、刑法第95条《公務執行妨害及び職務強要》の規定の適用がある。