消滅する権利の抹消の登記の嘱託

(嘱託をする場合)

1 法第125条の規定による抹消の登記の嘱託は、法第121条《権利移転の登記の嘱託》の規定により権利移転の登記を嘱託する場合に行うものであり、不動産登記法その他の法令に別段の定めがあるときは、これらの規定に基づいて抹消の登記を嘱託する(第121条関係4、5参照)。
 なお、法第125条の関係機関については、第121条関係2と同様である。

(注) 公売処分によって消滅する権利の抹消の嘱託に遺漏があった場合において、当該遺漏に係る権利については、後日その抹消の嘱託のみをすることができることに留意する(昭和41.11.25付民事甲第3324号民事局長回答参照)。

(消滅する権利)

2 法第125条の「換価に伴い消滅する権利に係る登記」とは、法第124条《担保権の消滅又は引受け》の規定により消滅する担保権に係る登記のほか、換価に伴い消滅する用益物権等の権利等(第89条関係8から13まで参照)に係る登記及び差押え(参加差押えを含む。)の登記をいう。

(注)

  • 1 滞調法の規定により二重差押えがされた不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械、小型船舶、債権又はその他の財産権を滞納処分により換価し、権利移転の登記をしたときは、強制執行による差押えの登記は、登記官により職権で抹消される(滞調法第16条、第19条、第20条、第20条の8、第20条の11、滞調令第12条の2、第12条の3、第12条の10)。
  • 2 不動産について差押えの登記がされる前に当該不動産に仮登記があり、その仮登記に優先する抵当権の設定登記がある不動産を公売した場合において、当該抵当権が公売処分によって消滅するときは、この抵当権に劣後する仮登記に係る権利も消滅するので、当該仮登記については、換価に伴い消滅する権利として登記の抹消の嘱託をすることに留意する(昭和41.3.1最高判、昭和41.6.17最高判参照)。
  • 3 差押えの登記に後れてなされた登記については、当該登記に係る権利の設定ないし移転が実体的に滞納処分庁ないし公売処分における買受人に対抗できるものであるか否かを問わず、公売処分における換価が行われた場合には不動産登記法第115条第2号により抹消の登記を嘱託することができることに留意する(平成6.12.26東京高判参照)。

(没収保全)

3 滞納処分による差押え後に没収保全がされた財産が滞納処分により換価された場合でも、没収保全は失効せず、法第125条の規定による抹消の嘱託をすることはできない。ただし、滞納処分により換価されたことにより、没収保全はその理由がなくなったときに該当するので、裁判所は没収保全命令を取り消さなければならないこととなる(組織的犯罪処罰法第32条、麻薬特例法第19条第4項)。この取消しにより効力を失った没収保全は、検察事務官の嘱託によりその登記は抹消される(組織的犯罪処罰法第34条、麻薬特例法第19条第4項)。
 なお、滞納処分による差押え後に没収保全がされた財産が滞納処分により換価された場合には、検察官にその旨を通知する(没収保全と滞納処分との手続の調整に関する政令第3条第1項、麻薬特例法第19条第4項)。

(嘱託書の添付書類)

4 法第125条に規定する換価に伴い消滅する権利(差押えを含む。)に係る登記の抹消の登記の嘱託をする場合には、嘱託書に配当計算書(法第131条参照)の謄本を添付しなければならない(令第46条)。

登録免許税の非課税

5 法第125条の規定により抹消の登記の嘱託をする場合には、登録免許税法第5条第11号《滞納処分に関する登記等の非課税》の規定により、登録免許税は課されない。