第3節 財産の換価

第1款 通則

換価執行決定をすることができる場合

(後順位の参加差押えに基づく換価執行決定)

1 参加差押えをした税務署長は、その参加差押えよりも先に参加差押えをした他の行政機関等がある場合であっても、換価執行決定をすることができる。この場合の換価執行決定は、先に参加差押えをした他の行政機関等の同意を要しない。

(2以上の参加差押えに基づく換価執行決定)

2 同一の不動産につき2以上の参加差押えをした税務署長は、当該2以上の参加差押えに基づき換価執行決定をすることができる。

(仮差押え)

3 参加差押えをした不動産に仮差押えがされている場合であっても、換価執行決定をすることができる。

(国税に関する法律による制限)

4 法第89条の2第1項の「国税に関する法律の規定で換価をすることができないこととするものの適用があるとき」とは、参加差押えに係る国税によりその財産を差し押さえたとしたときに換価が制限される場合であり、その規定については、第89条関係6と同様である。
 なお、上記の「国税に関する法律」とは、法その他の法律で、差押財産の換価の制限を規定している全ての法律をいう。

(配当見込みがない場合)

5 参加差押えをした不動産の価額がその参加差押えに係る滞納処分費及び参加差押えに係る国税に先立つ国税、地方税その他の債権の合計額を超える見込みがないときは、換価執行決定をすることができない。

換価の執行に係る同意

(相当と認めるとき)

6 法第89条の2第2項の「換価の執行を相当と認めるとき」とは、他の参加差押えをした行政機関等による換価の執行に同意していない場合であって、おおむね次のいずれにも該当しないときをいう。

(1) 差押えをした行政機関等において換価の見込みがある場合

(2) 差押えをした行政機関等が納税の猶予又は徴収若しくは滞納処分に関する猶予をした場合(これらが見込まれる場合を含む。)

(3) 差押処分に対する不服申立て又は訴訟が係属中であり、その争点が差押財産の帰属など、換価執行決定をしようとする税務署長の参加差押えの違法事由となり得るものである場合

換価執行決定の告知

7 換価執行決定の告知(法第89条の2第3項)は、その旨を換価同意行政機関等に通知することによって行う。

換価執行決定後の交付要求の効力

8 換価執行決定をする前に換価同意行政機関等に対してされた交付要求は、その換価同意行政機関等に交付要求書又は参加差押書(以下「交付要求書等」という。)が送達された順序に従い、当該換価執行決定をした行政機関等に対して交付要求をしたものとみなされる。

換価に伴い消滅する権利

9 換価執行行政機関等による換価に伴い消滅する権利に係る登記は、換価同意行政機関等が、その差押えに基づき換価をする場合と同様である(第125条関係2参照)。

強制執行等の実施に伴い必要な措置

10 令第42条の2第3項の「その他強制執行等の実施に伴い必要な事務」とは、強制執行又は仮差押えの執行(以下この項において「強制執行等」という。)と滞納処分との手続を調整するために必要な事務をいい、例えば、換価同意行政機関等が裁判所から強制執行続行の決定に係る意見を求められた場合に、その旨を換価執行決定をした行政機関等に速やかに通知し、その行政機関等の意見を踏まえて回答すること及び換価同意行政機関等が強制執行続行の決定の告知を受けた場合に、その旨を換価執行決定をした行政機関等へ通知すること等が含まれる。

(注)

  1. 1 令第42条の2第3項の「強制執行等が開始されたとき」とは、強制執行が開始されたとき又は仮差押えの執行がされたときをいう。
  2. 2 強制執行等が開始し、又は終了した旨の通知(滞調法第12条第2項、第15条、第18条第1項、第20条)は、換価執行決定がされている場合であっても、換価同意行政機関等に対してされるため、換価同意行政機関等は、当該通知を受けた場合には、その旨を速やかに換価執行行政機関等へ通知することに留意する(令第42条の2第3項)。