第3章 第二次納税義務

納税義務の成立

1 第二次納税義務は、法第33条から第39条まで又は第41条«第二次納税義務»に規定する特定の納税者が国税を滞納し、かつ、それらの条に規定する要件を満たすことによって成立する。
 なお、第二次納税義務が成立し、納付通知書による告知を行うことにより確定した後にその成立要件となった事実に変更があっても、いったん確定した第二次納税義務には影響がない(昭和47.5.25最高判参照)。

納付通知書による告知

(告知)

2 法第32条第1項の規定による告知は、抽象的に成立していた第二次納税義務を具体的に確定する性質を有するもので、形式的には独立の課税処分である(昭和37.3.23大阪地判、昭和42.11.21名古屋地判、昭和50.8.27最高判参照)と同時に、実質的には、主たる課税処分等によって確定した主たる納税義務の徴収手続上の一処分としての性格を有する(昭和50.8.27最高判参照)。
 なお、その効力は、納付通知書が送達された時に生ずる。

(注)

1 納付通知書は、主たる納税者(第二次納税義務の基因となった納税義務を負う者をいう。以下同じ。)に対する督促の有無を問わず発することができる。

2 第二次納税義務は、主たる納税義務が発生し存続する限り、必要に応じいつでも課せられる可能性を有するものであって、法第32条第1項の規定による告知は、その義務の発生を知らしめる徴収のための処分にほかならないため、独立した期間制限は設けられていない(平成6.12.6最高判参照)。したがって、主たる納税者の国税が滞納になっている間はこの告知をすることができる。

(納付通知書)

3 法第32条第1項の「納付通知書」は、令第11条第1項各号«納付通知書の記載事項»に掲げる事項を記載した規則第3条«書式»に規定する別紙第1号書式による。

(徴収しようとする金額)

4 納付通知書に記載すべき令第11条第1項第3号«納付通知書の記載事項»の「徴収しようとする金額」については、それぞれ次に掲げる旨を記載するものとする。

(1) 合名会社等の社員の第二次納税義務(法第33条)については、主たる納税者の滞納国税(第二次納税義務の基因となった国税に限る。以下4において同じ。)の全額

(2) 財産等の価額を限度とする第二次納税義務(法第34条第1項、第34条第2項、第35条、第36条第3号、第38条、第39条、第41条第2項)については、その財産等の価額(金額で表示する。)を限度として主たる納税者の滞納国税の全額

(3) 財産を限度とする第二次納税義務(法第36条第1号、第36条第2号、第37条、第41条第1項。以下第32条関係において「物的第二次納税義務」という。)については、その財産(財産自体を表示する。)を限度として主たる納税者の滞納国税の全額

(注) 一つの財産が、物的第二次納税義務に係る財産(以下第32条関係において「追及財産」という。)と他の財産とで構成されている場合における納付通知書に記載する「徴収しようとする金額」には、「追及財産が一つの財産に対して占める割合を限度とする」旨付記する(16の(1)参照)。

(滞納処分費との関係)

5 第二次納税義務者から徴収するために要した滞納処分費は、納付通知書に記載された「徴収しようとする金額」のほかに徴収することができる。ただし、物的第二次納税義務の場合には、任意納付される場合を除き、その財産以外のものからは徴収できないものとする。

(納付の期限)

6 法第32条第1項の納付通知書に記載する「納付の期限」は、納付通知書を発する日の翌日から起算して1月を経過する日としなければならない(令第11条第4項)。

(第二次納税義務に関する規定)

7 令第11条第1項第4号«納付通知書の記載事項»の「その者につき適用すべき第二次納税義務に関する規定」とは、第二次納税義務者につき適用することとした法第33条、第34条第1項、第34条第2項、第35条、第36条第1号、第36条第2号、第36条第3号、第37条、第38条、第39条、第41条第1項又は第41条第2項をいう。

(納付の手続)

8 第二次納税義務に係る国税は、主たる納税者の国税であることを記載した納付書によって、その第二次納税義務者の名義により納付させるものとする(国税通則法施行規則(以下「通則規則」という。)第16条に規定する別紙第1号書式備考7参照)。

(税務署長に対する通知)

9 法第32条第1項後段の規定により、第二次納税義務者の住所又は居所の所在地を所轄する税務署長に対する通知は、令第11条第2項各号«通知書の記載事項»に掲げる事項を記載した書面により行う。この書面の様式は、別に定めるところによる。

(納付催告書)

10 法第32条第2項の「納付催告書」は、令第11条第1項第1号に掲げる事項及び同項第3号«納付通知書の記載事項»に規定する金額を記載した規則第3条«書式»に規定する別紙第2号書式による。

(別段の定め)

11 法第32条第2項後段の「国税に関する法律に別段の定めがあるもの」とは、通則法第48条第1項«納税の猶予の効果»の規定により新たに督促ができない場合をいうが、同法第105条第2項«不服申立てがあった場合の徴収の猶予等»の規定による徴収の猶予の場合等も、督促が制限される。

通則法の準用

(繰上請求)

12 法第32条第3項の規定により通則法第38条第1項«繰上請求»の規定を準用するに当たっては、次のとおり読み替える。

(1) 「納付すべき税額の確定した国税」は、「納付通知書により告知をした徴収しようとする金額」

(2) 「納期限」は、「納付通知書に記載された納付の期限」

(納税の猶予)

13 法第32条第3項の規定により通則法第46条第1項第1号及び第2号«災害に係る納税の猶予の要件»並びに通則令第15条の2第1項«納税の猶予の申請書の記載事項»の規定を準用するに当たっては、次のとおり読み替える。
 なお、通則法第46条第1項第3号及び第3項«納税の猶予の要件»の規定は、準用されない。

(1) 「納期限」は、「納付通知書に記載された納付の期限」

(2) 「納付すべき税額の確定したもの」は、「納付通知書により告知をした徴収しようとする金額」

(3) 「納付すべき国税の年度、税目、納期限及び金額」は、「納付通知書に記載された告知年月日、納付の期限及び納付すべき金額並びに主たる納税者の住所、氏名及び滞納税額の年度、税目、納期限、金額」

(換価の制限)

14 法第32条第4項に規定する第二次納税義務者の財産の換価の制限については、次のことに留意する。

(1) 法第32条第4項の「換価に付した」とは、公売の日時(随意契約により売却する場合には、その売却をする日)に公売を実施したことをいう。この場合においては、入札及び買受申込みの有無を問わないことに留意する。

(2) 第二次納税義務者の差押財産が金銭を取り立てるものであるときは、法第32条第4項の制限を受けない。ただし、当該差押財産につき、支払督促の申立て、給付の訴えの提起等の強制的な取立ては、時効により消滅するおそれがある場合等やむを得ない場合を除き、行わないものとする。

(3) 主たる納税者の差押財産が金銭を取り立てるもので、第二次納税義務者の差押財産が換価するものであるときは、法第32条第4項の制限を受けない。ただし、主たる納税者の当該財産につきその取立てが困難と認められる場合を除き、第二次納税義務者の差押財産の換価は行わないものとする。

(価額が著しく減少するおそれがあるとき)

15 法第32条第4項の「価額が著しく減少するおそれがあるとき」とは、差押財産を速やかに換価しなければその価額が著しく減少するおそれがあるときをいい、保存費を多額に要する場合を含むものとする(第95条関係4及び5参照)。

物的第二次納税義務の特質

16 物的第二次納税義務については、次のことに留意する。

(1) 第二次納税義務者に対する滞納処分は、追及財産以外のものについては、することができない。
 なお、追及財産と他の財産とが一つの財産を構成している場合には、その財産について滞納処分をすることができるものとする。この場合において、公売の日時の始期の属する日(随意契約により売却する場合には、その売却をする日)の前日までに、その財産を追及財産と他の財産とに分割し、その旨及び差押えを解除すべき旨の申出があったときは、他の財産の部分について差押えを解除するものとする。

(注) 一つの財産が、追及財産と他の財産とに分割されないまま換価された場合には、換価代金のうち他の財産の部分に相当するものは、第二次納税義務者に交付する(第129条関係6参照)。

(2) 第二次納税義務者が納付する場合には、追及財産の価額にかかわらず、その第二次納税義務の基因となった主たる納税者の滞納国税が存する限り、その金額に相当する第二次納税義務額について納付しなければならない。ただし、法第37条«共同的な事業者の第二次納税義務»の規定による物的第二次納税義務額について、追及財産の価額に相当する金額を一時に納付した場合で、徴収上支障がないと認められるときは、その後は、その第二次納税義務額について追及しない取扱いとしても差し支えない。

(3) 第二次納税義務者が過誤納金及びその還付加算金の請求権を有する場合には、その請求権が追及財産であるときを除き、第二次納税義務者の意思に反する充当はしないものとする。

主たる納税義務との関係

(財産の差押えの時期)

17 第二次納税義務者の財産は、主たる納税者の財産の差押えに着手する前に差し押さえても差し支えない。

(納税の猶予)

18 主たる納税者の国税について納税の猶予をしている間は、その国税の第二次納税義務について納付通知書若しくは納付催告書を発し、又は滞納処分をすることはできないが、第二次納税義務者に対してした納税の猶予は、主たる納税者には効力を及ぼさない。

(換価の猶予)

19 主たる納税者の国税につき換価の猶予をしても、その国税の第二次納税義務について納付通知書若しくは納付催告書を発し、又は滞納処分をすることは妨げないが、換価については法第32条第4項の規定による制限がある。

(納付等)

20 第二次納税義務者による納付又は第二次納税義務者について過誤納金等(国税に係る過誤納金、国税に関する法律の規定による国税の還付金及びこれらについての還付加算金をいう。以下同じ。)の充当等があったことにより、その第二次納税義務が消滅したときは、主たる納税者の国税は、その範囲内において消滅する。また、主たる納税者の国税について納付、過誤納金等の充当、税額を減少させる更正等があったことにより、その国税の一部が消滅したときは、なお主たる納税者の国税の残額の範囲内において、その第二次納税義務者の第二次納税義務は存続する。

(免除)

21 第二次納税義務者に対する第二次納税義務の免除は、主たる納税者に対しては効力を及ぼさないが、主たる納税者に対する納税義務の免除は、その納税義務が第二次納税義務の範囲に含まれている限り、その効力が及ぶ。

(主たる納税義務者につき更生手続開始の決定があった場合)

22 主たる納税者につき会社更生法による更生手続開始の決定があった場合においても、その者の国税に係る第二次納税義務者に対して滞納処分をすることができる(昭和45.7.16最高判参照)。

(滞納処分の停止)

23 第二次納税義務者がその第二次納税義務について滞納処分の停止を受けた場合であっても、その効力は、主たる納税者に及ばない(第153条関係7参照)。また、法第153条第4項又は第5項«滞納処分の停止に係る納税義務の消滅»の規定によりその第二次納税義務が消滅した場合においても同様である。

(過誤納金の還付)

24 納税者及び第二次納税義務者の納付に係る国税の一部につき過誤納が生じた場合には、その過誤納金の還付又は充当に関しては、まず、第二次納税義務者が納付した額につきその過誤納が生じたものとする(通則令第22条第1項)。
 なお、上記による還付又は充当をした場合においては、国税局長(沖縄国税事務所長を含む。以下同じ。)、税務署長又は税関長(沖縄地区税関長を含む。以下同じ。)は、その旨を主たる納税者に通知しなければならない(通則令第22条第2項)。

(限定承認の効果)

25 主たる納税者の相続人が相続財産について限定承認をした場合においても、その責任は相続財産に限定されるにすぎないものであることから(通則法第5条第1項後段)、第二次納税義務の額には増減がない。

(注) 相続人全員が相続の放棄をした場合又は相続人が不存在の場合には、被相続人の国税を徴収するため、相続財産法人(民法第951条)を主たる納税者として、被相続人が生存していたときに第二次納税義務者となるべき者に対し、第二次納税義務の追及をすることができる。

(会社更生法による免責の効果)

26 株式会社である主たる納税者が会社更生法第204条«更生債権等の免責等»の規定により国税の納付義務について免責された場合においても、その効力は株式会社と共に債務を負担する者に対して有する権利には影響を及ぼさないことから(同法第203条第2項)、第二次納税義務の額には増減がない。

(第二次納税義務を負うべき者の破産との関係)

27 第二次納税義務を負うべき者が破産手続開始の決定を受けた場合には、次のことに留意する。

  • (1) 破産手続開始の決定前に納付通知書による告知をした第二次納税義務に係る請求権は、その納期限から1年を経過していないものに限り、財団債権(破産法第148条第1項第3号)に該当すること(第47条関係40(注)1参照)。
  • (2) 破産手続開始の決定前に第二次納税義務の成立要件を満たしている場合(ただし、徴収すべき額に不足するかどうかの判定については第33条関係1、第22条関係4参照)において、破産手続開始の決定後に納付通知書による告知をした第二次納税義務に係る請求権は、財団債権に該当すること。

(時効の完成猶予及び更新)

28 第二次納税義務者について生じた時効の完成猶予及び更新の効力は、主たる納税者には及ばないが、主たる納税者について生じた時効の完成猶予及び更新の効力は、第二次納税義務者に及ぶものとする(民法第457条第1項参照)。
 なお、主たる納税者の納税義務が時効の完成により消滅するおそれがある場合には、その納税義務の存在確認の訴えの提起等時効の完成猶予及び更新の措置を採ることに留意する(平成6.6.28名古屋地判等参照)。この場合において、国がこの訴訟に勝訴したときは、主たる納税者の国税の徴収権の時効は10年になる(通則法第72条第3項、民法第169条第1項)。

第二次納税義務の重複賦課

29 第二次納税義務の成立要件を満たす場合において、その基因となった処分等に基づき他の行政機関等が既に第二次納税義務を負わせているときにおいても、重ねて第二次納税義務を負わせることができる(昭和45.7.29東京地判参照)。

第二次納税義務者を主たる納税者とする第二次納税義務

30 第二次納税義務者がその第二次納税義務を履行しない場合において、その第二次納税義務について更に第二次納税義務の成立要件を満たす第三者がいるときは、その第二次納税義務者を主たる納税者として、その第三者に対し、更に第二次納税義務を負わせることができる。
 なお、第二次納税義務の成立要件との関係から、第二次納税義務者を主たる納税者とする第二次納税義務が成立しない場合がある。例えば、特定の国税(実質所得者課税の原則により課された国税等)についてだけ第二次納税義務を追及できることとされている場合においては、第二次納税義務に係る国税は、この特定の国税に該当しない。

第二次納税義務と詐害行為取消権との関係

31 滞納者がした行為が、第二次納税義務の成立要件と詐害行為取消権の要件(通則法第42条、民法第424条等)の双方を満たす場合には、いずれによることもできる。