交付要求

1 法第9条の「交付要求」とは、法第82条第1項«交付要求の手続»、第86条第1項«参加差押えの手続»、第159条第9項«保全差押えに係る交付要求»(通則法第38条第4項において準用する場合を含む。)、滞調法第36条の10第1項«みなし交付要求»及び通則法第39条第3項«強制換価の場合の消費税等の徴収の特例»の交付要求をいう。

配当すべき金銭

2 法第9条の「配当すべき金銭」とは、それぞれ次に掲げる金銭をいう。

(1) 滞納処分(その例による処分を含む。以下同じ。)の場合は、法第128条第1項第1号又は第2号に掲げる金銭(法第129条第1項参照)又はこれに準ずる金銭(第128条関係5参照)

(2) 不動産、船舶、航空機、自動車、建設機械及び小型船舶に係る強制執行又は担保権の実行としての競売の場合は、その売却代金(執行法第86条第1項第1号、第121条、第188条、第189条、第192条、第193条、航空法第8条の4第2項、道路運送車両法第97条第2項、建設機械抵当法第26条第2項、小型船舶登録法第27条第2項、執行規則第84条、第97条、第98条、第98条の2、第175条から第177条の2まで)
なお、上記の売却代金には、次のものが含まれる。

イ 差押債権者が、競売手続の取り消されることを回避するため提供した保証(手続費用及び優先債権の見込額を超える額で差押債権者が申し出た額と買受可能価額との差額)がある場合には、その申出額から現実に売却された売却代金の額を控除した額(執行法第86条第1項第2号、第63条第2項第2号)

〔例〕

買受可能価額・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,100万円

執行費用及び優先債権額・・・・・・・・・1,300万円

申出額・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,310万円

提供した保証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・210万円

売却代金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,200万円

  この場合には、売却代金1,200万円のほか、提供した保証210万円のうち110万円(1,310万円−1,200万円)も売却代金となる。

ロ 買受人が買受代金を納付しないことにより売却決定が取り消された場合(執行法第80条参照)には、買受人が提供した保証(同法第86条第1項第3号)

(3) 動産に係る強制執行又は担保権の実行としての競売の場合は、売得金、差押金銭又は手形等の支払金(執行法第139条第1項、第192条)

(4) 債権及びその他の財産権に係る強制執行又は担保権の実行としての競売の場合は、次に掲げるもの(執行法第166条第1項、第193条第2項)

イ 第三債務者が供託した場合(同法第156条第1項、第2項、第157条第5項参照) 供託金

ロ 売却命令により売却した場合 売得金

ハ 動産の引渡請求権の執行としてその引渡しを受け売却した場合(同法第163条第2項参照) 売得金

(5) 強制管理及び担保不動産収益執行の場合は、執行法第98条第1項«債務者に対する収益等の分与»の規定による分与をした後の収益又はその換価代金から、不動産に対して課される租税その他の公課及び管理人の報酬その他の必要な費用を控除した金銭(同法第106条第1項、第188条)

(6) 農業用動産抵当権実行令の規定による競売の場合は、その売得金(同令第1条、執行法第139条第1項、第192条)

(7)  企業担保権の実行手続の場合は、売却代金と企業担保権の目的となる会社の金銭(管財人が費用及び報酬に充てた金銭を含む。)との合計額に相当する金銭(企業担保法第52条)

(8) 鉄道抵当法第3章«強制競売及強制管理»、軌道ノ抵当ニ関スル法律又は運河法の規定による強制競売の場合は、その競落代金(鉄道抵当法第68条、第71条、第77条の2、軌道ノ抵当ニ関スル法律第1条、運河法第13条)

(9) 鉄道抵当法第3章、軌道ノ抵当ニ関スル法律又は運河法の規定による強制管理の場合は、その鉄道財団、軌道財団又は運河財団の収入に係る金銭(鉄道抵当法第87条等)

手続に係る費用

3 法第9条の「手続に係る費用」とは、それぞれ次に掲げるものをいう。

(1) 滞納処分の場合には、法第136条«滞納処分費の範囲»に規定する費用又はこれに準ずる費用

(注) 上記の「これに準ずる費用」としては、地方税の督促手数料がある(地方税法第14条の3参照)。

(2) 強制執行の場合は、強制執行の準備費用としての執行文の付与、判決の送達、判決確定証明書の付与(裁判上の費用)、執行の申立てをするため出頭するに必要な旅費(裁判外の費用に限る。)等の費用及び強制執行の開始によって生じた費用としての執行官の手数料、立替金、鑑定費用、保証供与の費用、差押財産の保存費用等(執行法第42条第1項参照)

(3) 担保権の実行としての競売の場合又は企業担保法による企業担保権の実行手続の場合は、(2)に準ずる費用(執行法第194条及び企業担保法第17条第2項において準用する執行法第42条参照)

(4) 鉄道抵当法、軌道ノ抵当ニ関スル法律又は運河法の規定による強制競売又は強制管理の場合は、(2)に準ずる費用(鉄道抵当法第68条第1項等参照)

(5) 破産手続の場合は、破産法第148条第1項第1号«財団債権となる請求権»に規定する裁判上の費用、第2号に規定する管理、換価及び配当に関する費用(破産管財人の報酬(昭和45.10.30最高判参照)及び保全管理命令(同法第91条)が発令された場合において保全管理人が権限に基づいてした行為によって生じた請求権のうちその財産の管理及び換価に関する費用の請求権(同法第148条第4項、第152条第2項かっこ書き))並びに同法第42条第2項ただし書«強制執行等の失効の特例»の規定により破産管財人が破産財団のために強制執行等の手続を続行する場合の費用(同法第42条第4項参照)

費用の優先権

4 法第9条の「次いで徴収する」とは、納税者の財産が強制換価手続により換価された場合に、その執行機関にした交付要求に係る国税は、その換価代金からその手続の費用に次いで徴収することをいう。したがって、その手続の費用は、交付要求に係る国税(滞納処分費を含む。)に優先して徴収する。

強制換価手続の費用が優先しない場合

(強制管理)

5 不動産の強制管理又は担保不動産収益執行の場合には、執行法第106条第1項«配当等に充てるべき金銭等»(執行法第188条により準用する場合を含む。)の規定により不動産に対して課される租税は、管理の費用に先立って弁済を受ける。

(破産)

6 破産手続の場合において破産財団が財団債権の総額を弁済するに不足することが明らかになったときは、破産法第152条«破産財団不足の場合の弁済方法等»の規定により、財団債権である国税は、破産法第148条第1項第1号、第2号及び同法第152条第2項かっこ書に規定する破産手続上の費用(これに該当する国税を含む。なお、第9条関係3の(5)参照)を優先弁済した破産財団の残余の部分につき、まだ弁済されていない他の財団債権とともに、債権額の割合に応じて平等弁済を受ける。