【照会要旨】

 被相続人は、米国ハワイ州に所在するコンドミニアムを相続人(長男)と合有の形態(ジョイント・テナンシー)で所有していました。ハワイ州の法律によると、この所有形態では、合有不動産権者のいずれかに相続が開始した場合には、生存合有不動産権者がその相続人であるか否かにかかわらず、また、生存合有不動産権者がその相続人であったとしてもその相続分に関係なく、被相続人の合有不動産権が生存合有不動産権者(本件の場合には長男)に移転することとされています。
  この場合、被相続人の合有不動産権については、相続税の課税対象となりますか。

【回答要旨】

 被相続人の合有不動産権が移転したことによる生存合有不動産権者の権利の増加は、対価を支払わないで利益を受けた場合に該当するため、生存合有不動産権者が移転を受けた被相続人の合有不動産権の価額に相当する金額については、被相続人から贈与により取得したものとみなされることになります(相法9)。
  したがって、生存合有不動産権者が被相続人から相続又は遺贈により財産を取得している場合には、被相続人から贈与により取得したものとみなされた合有不動産権の価額に相当する金額は、相続税の課税価格に加算され(相法19@)、相続税の課税対象となります。
  なお、合有不動産権は、ある不動産を取得する際に、当事者間で合有不動産権を創設しようとする契約上の合意により創設されるものであり、その合意は、お互いに「自分が死んだら、生存合有不動産権者に合有不動産の権利を無償で移転する」という契約、すなわち実質的な死因贈与契約であるとみることもできます。
 よって、合有不動産権者の相続開始による生存合有不動産権者への合有不動産権の移転は、死因贈与契約によるものであるといえるため、被相続人から死因贈与(遺贈)により取得したものとして相続税の課税対象としても差し支えありません。

(注) 合有不動産権とは、同一の不動産に関する同一の譲渡行為によって、2名以上の者が同時に始期を開始する同一の権利を共同所有するという不動産権(joint tenancy)であり、共有不動産権と異なり、権利者のうち1人が死亡した場合には、その権利は相続性を持たず(遺言による変更も不可)、その権利は生存者への権利帰属(survivorship)の原則に基づいて生存合有不動産権者に帰属することとされています。

【関係法令通達】

 相続税法第1条の3第1項第1号・第2号、第9条、第19条第1項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。