【照会要旨】

 当法人は消費税法別表第三に掲げる法人であり、条例等に基づき、地方公共団体からA補助金及びB補助金の交付を受けています。これらの補助金はいずれも交付要綱等において、次のとおり使途が特定されています。
 ・ A補助金(1,000万円)のうち、300万円は人件費(給与)、700万円は課税仕入れ
 ・ B補助金(800万円)のうち、400万円は人件費(給与)、400万円は課税仕入れ
 当法人は、これらの補助金を受け入れた課税期間(X1期)において消費税法第60条第4項の規定による仕入控除税額の計算の特例の適用を受けており、これらの補助金の使途について、X2期において、地方公共団体に提出した実績報告書により次のとおり明らかにされました。なお、下記(2)(3)の金額はいずれも税込みの金額とします。

1.A補助金(1,000万円)の使途
 (1) 人件費(給与):300万円
 (2) 適格請求書発行事業者からの機械の購入費:650万円
 (3) 適格請求書発行事業者以外の者への外注費:50万円
2.B補助金(800万円)の使途
 (1) 人件費(給与):400万円
 (2) 適格請求書発行事業者からの機械の購入費:390万円
 (3) 適格請求書発行事業者以外の者への外注費:10万円

 なお、当法人は、実際に人件費(給与)、機械の購入費及び外注費の支出を行った課税期間及び実績報告書により使途が明らかにされた課税期間(X2期)において課税事業者であり、簡易課税制度の適用は受けていません。

 当法人は、X2期において、取戻し対象特定収入に係る消費税法施行令第75条第8項の特例を適用することができますか。

【回答要旨】

 実績報告書により使途が明らかにされた課税期間(X2期)において、A補助金のうち50万円((3)適格請求書発行事業者以外の者への外注費)を控除対象外仕入れに係る支払対価の額として、取戻し対象特定収入に係る消費税法施行令第75条第8項の特例を適用することができます。

(理由)
 取戻し対象特定収入とは、
 1 課税仕入れ等に係る特定収入により支出された課税仕入れに係る支払対価の額の合計額
のうちに
 2 課税仕入れ等に係る特定収入により支出された控除対象外仕入れに係る支払対価の額の合計額
の占める割合(21)が5%を超える場合のその特定収入をいうこととされています(令759)。
 なお、「課税仕入れ等に係る特定収入」とは、特定収入のうち、法令や交付要綱等により課税仕入れ等のためにのみ使用することとされている部分をいいます(令754一イ)。
 また、「控除対象外仕入れに係る支払対価の額」とは、課税事業者である課税期間、簡易課税制度又は納付税額を売上税額の2割に軽減するいわゆる「2割特例」の適用を受けない課税期間に行った課税仕入れに係る支払対価の額であって、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れであることにより仕入税額控除(法301)の適用を受けないこととなるもの(注)をいいます(令75G、平30改正令附則21の2)。

(注)適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れであっても、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる課税仕入れの支払対価の額は、「控除対象外仕入れに係る支払対価の額」には含まれません。
 また、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置(令和5年10月1日から令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%控除、令和8年10月1日から令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%控除)の適用を受ける課税仕入れの支払対価の額は、「控除対象外仕入れに係る支払対価の額」に含まれます。

 以上より、A補助金及びB補助金のうち、(1)人件費(給与)に使途が特定された部分の金額については、課税仕入れ等に係る特定収入に該当せず、また、(2)適格請求書発行事業者からの機械の購入費に使途が特定された部分の金額については、課税仕入れ等に係る特定収入には該当しますが、それにより支出された金額は、控除対象外仕入れに係る支払対価の額に該当しないこととなります。
 ご質問の場合において、この5%を超えるかどうかの判定は、A補助金及びB補助金それぞれについて、以下のとおり行うこととなります。

 (A補助金)
 

 (B補助金)
 

 A補助金については、上記の計算結果が5%を超えることから、取戻し対象特定収入に該当することとなり、実績報告書により使途が明らかにされた課税期間(X2期)において、50万円((3)適格請求書発行事業者以外の者への外注費)を控除対象外仕入れに係る支払対価の額として、取戻し対象特定収入に係る消費税法施行令第75条第8項の特例を適用することができます。
 また、B補助金については、上記の計算結果が5%を超えないことから、取戻し対象特定収入に該当しないこととなり、この特例を適用することはできません。

【関係法令通達】

消費税法第30条第1項、第7項、第60条第4項、平成28年改正法附則第51条の2第1項、第52条、第53条、消費税法施行令第49条第1項、第75条第4項、第8項、第9項、平成30年改正令附則第21条の2、第22条第2項、第23条第2項、消費税法基本通達16-2-6、16-2-7

注記
 令和5年10月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。