【照会要旨】

私が所有しているA社社債について、A社が民事再生手続開始の申立てを行ったことにより期限の利益を喪失するとともに、債務不履行となりました。
 その後、再生計画認可の決定が確定し、A社社債の元本については、再生計画に基づき指名債権に権利変更され、90%は無償で消滅されましたが、残り10%については弁済が行われました。
 A社社債は、税法上、「上場株式等」に該当するものですが、この再生計画に基づき行われた弁済は、上場株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる「公社債の元本の償還」に該当し、無償で消滅されたことにより生じる損失の金額は、上場株式等に係る配当所得等との損益通算及び繰越控除ができる「上場株式等に係る譲渡損失の金額」に該当しますか。

【回答要旨】

A社社債は、今回の再生計画に基づき「会社法上の社債」から「民法上の指名債権」に権利変更されており、再生計画認可の決定の確定時以後、所得税法上の社債に該当しません。そのため、本件再生計画に基づき行われた弁済は、指名債権(金銭債権)の弁済であることなどから、租税特別措置法第37条の10第3項第8号(同法第37条の11第3項)に規定する「公社債の元本の償還」には該当しません。
 また、本件再生計画に基づき無償で消滅されることにより生じる損失の金額についても、租税特別措置法第37条の12の2第1項に規定する「上場株式等に係る譲渡損失の金額」に該当しないことから、「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の適用はできません。
 なお、この無償で消滅されることにより生じる損失の金額については、A社社債が上場株式等の譲渡に係る譲渡所得の基因となる資産であったときは上場株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額の計算上考慮されませんが、上場株式等の譲渡に係る事業所得又は雑所得の基因となる資産であったときは、次のとおり、その損失が生じた年分の上場株式等の譲渡に係る事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されます。

1 A社社債が上場株式等の譲渡に係る事業所得の基因となるものであった場合

 その損失の発生した年分の上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額の計算上、売上原価として必要経費に算入されます(所法37@、48@)。

2 A社社債が上場株式等の譲渡に係る雑所得の基因となるものであった場合

 その損失の金額を必要経費に算入しないで計算した上場株式等の譲渡に係る雑所得の金額を限度として、その損失が発生した年分の上場株式等の譲渡に係る雑所得の金額の計算上必要経費に算入されます(措令25の9L等の規定による読替後の所法51C)。

(注) 1 この場合の無償で消滅されることにより生じる損失の金額とは、A社社債の取得費から弁済が行われた金額(無償消滅しない10%相当額)を差し引いた金額となります。ただし、民事再生手続に係る再生債権のうちに、A社社債の元本債権に相当する部分とそれ以外の部分がある場合は、合理的な方法によりA社社債の元本債権に相当する部分の損失の金額を算出することになるものと考えられます。

2 本件再生計画の内容に基づく回答であるため、他の民事再生手続に係る再生計画の場合は、この取扱いと異なる場合があることに留意してください。

〔関係法令通達〕

所得税法第2条第1項第9号、第37条第1項、第48条第1項、第51条第2項・第4項

租税特別措置法第2条第1項第5号、第37条の10第1項〜第3項、第37条の11第2項・第3項、
第37条の12の2第1項・第5項

租税特別措置法施行令第25条の8第15項、第25条の9第13項

所得税基本通達2−11

租税特別措置法関係通達37の10・37の11共−2、37の10・37の11共−20

民法第467条

会社法第2条、第676条、第687条、第688条第1項

社債、株式等の振替に関する法律 第66条、第73条、第76条、第86条の4

民事再生法第33条、第84条、第85条第1項、第174条第1項、第176条、第178条第1項、第179条第1項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。