【照会要旨】

 甲は、相続によって取得した株式(上場株式20万株、時価約2億円)を公益信託の基本財産として出捐します。この場合、所得税法第6条の3第7号が適用され、法人課税信託である受益者等が存しない信託の受託法人に対する贈与による資産の移転があったものとみなされて譲渡所得が課税されますか。
 なお、この公益信託は、○県内の大学に在籍する学生及びアジア諸国からの留学生に対する奨学金の給付を目的とするものです。

【回答要旨】

1 所得税法における法人課税信託は、法人税法第2条第29号の2に規定する法人課税信託をいうと規定しており(所法21八の三)、その範囲を法人税法と同じくしています。法人税法においては、公益信託は法人課税信託である受益者等が存しない信託に該当しないものとされている(法法附則19の32)ことから、所得税法においても、公益信託は法人課税信託である受益者等が存しない信託に該当しないと考えられます。

2 したがって、照会の場合のように個人が譲渡所得の基因となる資産を公益信託の信託財産としても、所得税法第6条の3第7号が適用されて譲渡所得が課税されることはありません。

【関係法令通達】

 所得税法第2条第1項第8号の3、第6条の3第7号
 法人税法第2条第29号の2
 法人税法附則第19条の3第2項

(注)「公益信託」とは、信託法第258条第1項に規定する受益者の定めなき信託の内学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とするものにして主務官庁の許可を受けた信託であり(公益信託に関する法律第1条)、公益信託は主務官庁の監督に属しています(同法第3条)。

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。