【照会要旨】

 A社とB社は各々の物流サービス事業を分割し、共同事業要件を満たす適格分社型分割としてC社を設立しましたが、分割後において次の事柄が生じた場合でも、共同事業要件を満たすと考えてよろしいでしょうか。

@. C社は、分割後に甲社から第三者割当増資を受けることになりますが、法人税法施行令第4条の3第8項第6号ロに規定する株式の継続保有要件を満たすことになりますか。

A. また、C社は甲社からの増資を受けて、その後に上場することを予定していますが、上場が当初から予定されていた場合でも要件該当性に影響することはありませんか。また、実際にA社及びB社がその上場後に保有株式を売却した場合はどうでしょうか。

【関係図】分割後に分割承継法人が上場する場合の株式継続保有要件についての図

【回答要旨】

1. 分社型分割の適格判定における共同事業要件について
 分社型分割において分割法人と分割承継法人(当該分割が複数新設分割である場合にあっては、分割法人と他の分割法人。以下同じです。)との間に50%超の保有関係がない場合に分割法人と分割承継法人とが共同で事業を行うための分割として適格分割に該当するための要件(以下「共同事業要件」といいます。)を満たした場合には、その分割により移転する資産及び負債について帳簿価額による譲渡をしたものとして取り扱われます。
 この共同事業要件は、次の(1)から(6)のすべての要件に該当するものとされています(法令4の38)。

(1) 事業関連性要件(法令4の38一、法規3)
 分割に係る分割法人の分割事業(分割法人の分割前に行う事業のうち、その分割により分割承継法人において行われることとなるものをいいます。)と分割承継法人の分割承継事業(分割承継法人の分割前に行う事業のうちのいずれかの事業をいい、その分割が複数新設分割である場合には他の分割法人の分割事業をいいます。)とが相互に関連するものであること。

(2) 事業規模要件又は特定役員引継要件(法令4の38二)
 分割に係る分割法人の分割事業と分割承継法人の分割承継事業(分割事業と関連する事業に限られます。)のそれぞれの売上金額、その分割事業と分割承継事業のそれぞれの従業者の数若しくはこれらに準ずるものの規模の割合がおおむね5倍を超えないこと
 又は
 その分割前の分割法人の役員等(役員及び社長、副社長、代表取締役、代表執行役、専務取締役、常務取締役に準ずる者で法人の経営に従事している者をいいます。)のいずれかと分割承継法人の特定役員(その分割が複数新設分割である場合にあっては、他の分割法人の役員等)のいずれかとが分割後に分割承継法人の特定役員となることが見込まれていること。

(3) 主要資産等移転要件(法令4の38三)
 分割法人の分割事業に係る主要な資産及び負債が分割承継法人に移転していること。

(4) 従業者引継要件(法令4の38四)
 分割に係る分割法人の分割直前の分割事業に係る従業者のうち、その総数のおおむね100分の80以上に相当する数の者がその分割後に分割承継法人の業務に従事することが見込まれていること。

(5) 事業継続要件(法令4の38五)
 分割に係る分割法人の分割事業(その分割に係る分割承継法人の分割承継事業と関連する事業に限られます。)が分割後に分割承継法人において引き続き営まれることが見込まれていること。

(6) 株式継続保有要件(法令4の38六ロ)
 分社型分割により交付される分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式の全部が分割法人により継続して保有されることが見込まれていること。

2. 本件の場合
 本件照会は、上記1の共同事業要件のうちの(6)株式継続保有要件についてのものですが、分割法人であるA社及びB社は、分社型分割により交付されたC社株式の全部を保有し続けていますので、分社型分割により交付される分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式の全部が分割法人により継続して保有されることが見込まれていることの要件を満たしており、【関係図】1の第三者割当増資や上場は、この株式継続保有要件に影響を及ぼすものではありません。
 また、【関係図】2のB社が保有するC社株式の市場での売却については、当該売却計画が、新設分割時に当初から見込まれていたものである場合には、分社型分割により交付される分割承継法人の株式又は分割承継親法人株式のいずれか一方の株式の全部が分割法人により継続して保有されることが見込まれていることの要件を満たさないことになりますが、それが事後的に決定されたものであれば株式の継続保有要件に影響するものではありません。

【関係法令通達】

法人税法施行令第4条の3第8項第6号ロ

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。