【照会要旨】

 A社は、取引先であるB社に対して1千万円の貸付金を有しており、B社所有の土地に抵当権を設定しています。
 この度B社が倒産したため、貸付金の回収可能性を検討したところ、B社には抵当権の対象となっている土地以外には資産が見当たらない上、A社の抵当権順位は第5順位となっており、B社所有の土地が処分されたとしてもその資産価値が低く、A社に対する配当の見込みが全くないことが判明しました。B社所有の土地の処分によってA社に配当される金額がない場合、B社の資産状況、支払能力等からみて、A社が貸付金の全額を回収できないことは明らかです。
 そこで、A社は、B社所有の土地の処分を待たずに、当期においてこの貸付金について貸倒れとして損金経理しようと考えていますが、税務上もこの処理は認められますか。

【回答要旨】

 当該貸付金については、貸倒れとして損金の額に算入されます。

(理由)

1 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができることとされています(法人税基本通達9-6-2)。
 この場合において、その金銭債権について担保物があるときは、その担保物の処分後の状況によって回収不能かどうかを判断すべきですから、その担保物を処分し、その処分によって受け入れた金額を控除した残額について、その全額が回収できないかどうかを判定することになります。

2 したがって、原則としては、担保物が劣後抵当権であっても、その担保物を処分した後でなければ貸倒処理を行うことはできません。
 ただし、担保物の適正な評価額からみて、その劣後抵当権が名目的なものであり、実質的に全く担保されていないことが明らかである場合には、担保物はないものと取り扱って差し支えありません。
 お尋ねの場合、A社にとって実質的に全く担保されていないことが判明し、B社の資産状況、支払能力等からみて貸付金の全額が回収不能と判断されるとのことですから、担保物を処分する前であっても貸倒れとして処理することができます。

(注) お尋ねの場合と異なり、担保物の処分によって回収可能な金額がないとは言えない場合には、その担保物を処分した後でなければ貸倒処理することはできません(法人税基本通達9-6-2)。
 なお、担保物の処分による回収可能額がないとは言えないケースであっても、回収可能性のある金額が少額に過ぎず、その担保物の処分に多額の費用が掛かることが見込まれ、既に債務者の債務超過の状態が相当期間継続している場合に、債務者に対して書面により債務免除を行ったときには、その債務免除を行った事業年度において貸倒れとして損金の額に算入されます(法人税基本通達9-6-1(4))。

【関係法令通達】

 法人税基本通達9-6-1(4)、9-6-2

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。