【照会要旨】

 当社(年1回3月決算の同族会社)では、X年6月26日の定時株主総会において、取締役Aに対して、定期同額給与のほかに、同年12月25日及びX+1年6月25日にそれぞれ300万円の金銭を支給する旨の定めを決議し、届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。
 この定めに従い、当社は、X年12月25日には300万円を支給しましたが、X+1年6月25日には、資金繰りの都合がつかなくなったため、50万円しか支給しませんでした。
 この場合、X年12月25日に届出どおり支給した役員給与についても、損金の額に算入されないこととなるのでしょうか。

【回答要旨】

 X年12月25日に届出どおり支給した役員給与については、損金の額に算入して差し支えありません。

(理由)

 役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与のうち、1定期給与を支給しない役員に対して支給する給与(同族会社に該当しない法人が支給する給与で金銭によるものに限ります。)以外の給与(株式又は新株予約権による給与で、将来の役務の提供に係るものとして一定の要件を満たすものを除きます。)である場合には、届出期限までに納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしていること、2株式を交付する場合には、その株式が市場価格のある株式又は市場価格のある株式と交換される株式(適格株式)であること、3新株予約権を交付する場合には、その新株予約権がその行使により市場価格のある株式が交付される新株予約権(適格新株予約権)であること、の要件を満たしている場合のその給与(以下「事前確定届出給与」といいます。)は、その法人の所得の金額の計算上、損金の額に算入することができます(法法341二)。
 この事前確定届出給与は、所定の時期に確定した額の金銭等を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額又は株式数等が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られます(法基通9−2−14)。
 したがって、所轄税務署長へ届け出た支給額又は株式数等と実際の支給額又は株式数等が異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなりますが、ご質問のように、2回以上の支給がある場合にその定めのとおりに支給されたかどうかをどのように判定するのか、というのが照会の趣旨かと思われます。
 この点、一般的に、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると解されますので、その支給が複数回にわたる場合であっても、定めどおりに支給されたかどうかは当該職務執行の期間を一つの単位として判定すべきであると考えられます。
 したがって、複数回の支給がある場合には、原則として、その職務執行期間に係る当該事業年度及び翌事業年度における支給について、その全ての支給が定めどおりに行われたかどうかにより、事前確定届出給与に該当するかどうかを判定することとなります。
 例えば、3月決算法人が、X年6月26日からX+1年6月25日までを職務執行期間とする役員に対し、X年12月及びX+1年6月にそれぞれ200万円の給与を支給することを定め、所轄税務署長に届け出た場合において、X年12月には100万円しか支給せず、X+1年6月には満額の200万円を支給したときは、その職務執行期間に係る支給の全てが定めどおりに行われたとはいえないため、その支給額の全額(300万円)が事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。
 ただし、ご質問のように、3月決算法人が当該事業年度(X+1年3月期)中は定めどおりに支給したものの、翌事業年度(X+2年3月期)において定めどおりに支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度(X+1年3月期)の課税所得に影響を与えるようなものではないことから、翌事業年度(X+2年3月期)に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱っても差し支えないものと考えられます。

【関係法令通達】

 法人税法第34条第1項第2号
 法人税法施行令第69条第3項から第8項
  法人税法施行規則第22条の3第1項、第2項
 法人税基本通達9−2−14

 

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。