【照会要旨】

 当社(年1回3月決算)は、X年5月25日に開催した定時株主総会において、前年から引き続き取締役甲に対し毎月20日に月額50万円の役員給与を支給することを決議していますが、甲の統括する営業部門の業績が好調であることから、X+1年2月10日に臨時株主総会を開催し、同月分の給与から月額20万円ずつ増額して支給することを決議しました。
 X+1年2月の増額改定は、臨時改定事由による改定に該当しない改定ですが、1事業年度開始の日から定時株主総会による給与改定の前までの定期給与(4月及び5月の給与)、2定時株主総会による給与改定後から事業年度終了の日までの定期給与(6月から翌年3月までの給与)について、それぞれ定期同額給与に該当しますか。また、定期同額給与に該当しない場合、損金不算入額の算定はどのように行えばよいですか。

【回答要旨】

 取締役甲に支給する4月及び5月の給与は定期同額給与に該当します。また、6月以降の給与について、増額改定後の期間(翌年2月及び3月の2か月間)においては増額改定前の支給額である50万円に20万円を上乗せして支給することとしたものであるともみることができることから、その増額改定前の定期給与の額(50万円)に相当する部分が引き続き定期同額給与として支給されているものと考えられます。したがって、損金不算入額は、増額改定後の定期給与の額のうち増額改定前の支給額に上乗せして支給した部分の金額40万円(20万円×翌年2月及び3月の2か月分)となります。

(理由)

 定期給与の額の改定(法人税法施行令第69条第1項第1号イからハまでに掲げる改定に限ります。)があった場合において、当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるものは、定期同額給与に該当することとされています(法令691一)。
 すなわち、一事業年度中に複数回の改定(法人税法施行令第69条第1項第1号イからハまでに掲げる改定に限ります。)が行われた場合には、改定の前後で期間を区分し、それぞれの期間ごとに、その期間中の各支給時期において支給される定期給与の額が同額であるかを判定することとなります。
 例えば、年1回3月決算の法人が毎月20日に役員給与を支給することとしている場合において、5月25日に開催した定時株主総会において定期給与の額は前年の定時株主総会において決議された額と同額とすること(以下「同額改定」といいます。)を決議した後、翌年2月10日に法人税法施行令第69条第1項第1号ロに掲げる臨時改定事由による改定を行ったときには、次の1から3までに掲げる各支給時期における支給額がそれぞれごとに同額である場合には、それぞれが定期同額給与に該当し、それぞれ損金算入の対象となることとなります。

  • 1 当該事業年度開始の日(4/1)から同額改定後の最初の支給時期の前日(6/19)までの間の各支給時期 ⇒4月20日、5月20日
  • 2 同額改定前の最後の支給時期の翌日(5/21)から臨時改定事由による給与改定後の最初の支給時期の前日(2/19)までの間の各支給時期 ⇒6月20日、7月20日、……、1月20日
  • 3 臨時改定事由による給与改定前の最後の支給時期の翌日(1/21)から当該事業年度終了の日(3/31)までの間の各支給時期 ⇒2月20日、3月20日
     照会の場合には、翌年2月に行われた改定が法人税法施行令第69条第1項第1号に掲げるいずれの改定にも該当しないことから、定時株主総会の決議による同額改定の前後で期間を区分し、それぞれの期間ごとに、その期間中の各支給時期において支給される定期給与の額が同額であるかどうかを判定することとなります。具体的には、次の1又は2に掲げる各支給時期における支給額が同額である場合には、それぞれが定期同額給与に該当することとなります。
    • 1 当該事業年度開始の日(4/1)から同額改定後の最初の支給時期の前日(6/19)までの間の各支給時期 ⇒4月20日、5月20日
    • 2 同額改定前の最後の支給時期の翌日(5/21)から当該事業年度終了の日(3/31)までの間の各支給時期 ⇒6月20日、7月20日、……、3月20日
       ただし、定期給与の額について、照会のように法人税法施行令第69条第1項第1号に掲げる改定以外の増額改定後(翌年2月以降)の各支給時期における支給額が同額であるときなどは、増額改定後の期間(翌年2月及び3月の2か月間)において増額改定前の支給額に改定による増額分を上乗せして支給することとしたものであるともみることができると考えられます。
       したがって、照会の場合は、1に掲げる各支給時期における支給額は同額となっているため、1に掲げる各支給時期における定期給与は定期同額給与に該当し、損金算入の対象となります。また、2に掲げる各支給時期における支給額は、翌年2月に行われた改定後の各支給時期における支給額が同額であるため、増額改定後の期間(翌年2月及び3月の2か月間)において増額改定前の支給額である50万円に20万円を上乗せして支給することとしたものであるともみることができることから、その増額改定前の定期給与の額(50万円)に相当する部分が引き続き定期同額給与として支給されているものと考えられます。これにより、損金不算入額は、増額改定後の定期給与の額のうち増額改定前の支給額に上乗せして支給した部分の金額40万円(20万円×翌年2月及び3月の2か月分)となります。

 (注) 本照会は、役員給与の額を株主総会で決議することとしていますが、例えば、株主総会で役員給与の支給限度額を定め、各人別の支給額は取締役会で決議するなど、会社法等の法令の規定に従って役員給与の額を決議するものは、この事例における株主総会での決議と同様に取り扱って差し支えありません。

【関係法令通達】

 法人税法第34条第1項第1号、法人税法施行令第69条第1項第1号

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。