【照会要旨】

 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金は、公的年金等に該当しますが、確定給付企業年金の規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される加入者の負担した金額がある場合は、以下の算式によって計算した金額を控除した金額に相当する金額が公的年金等に係る収入金額とされています(所得税法第35条第3項第3号、所得税法施行令第82条の3第1項、第2項)。

(算式)

控除額=その年において規約に基づいて支給される年金の金額(剰余金を除く。)×その年金が支給される起因となった加入者が負担した金額/規約において定められている年金の年額(剰余金を除く。)×その受給権者に係る支給開始日における余命年数

 ところで、確定給付企業年金が終身年金である場合には、年金受給者が生存し続ける限り、年金の給付を受けることになりますが、上記算式で算出した控除額の累計額が加入者が実際に負担した金額の総額を超える場合も、上記算式で算出した金額を控除し続けることができるのでしょうか。

【回答要旨】

 控除額は加入者が負担した金額の総額に達するまでの金額が限度とされますので、控除額の累計額がその総額を超える場合には控除することはできません。

 確定給付企業年金法の規定に基づいて支給を受ける年金の収入金額は、確定給付企業年金に係る規約に基づいて拠出された掛金のうちにその年金が支給される加入者の負担した金額がある場合には、その年金の額からその負担した金額のうちその年金の額に対応するものとして政令で定めるところにより計算した金額を控除した金額に相当する部分に限るものとされています(所得税法第35条第3項第3号、所得税法施行令第82条の3第1項)。
 ところで、確定給付企業年金制度に係る掛金は、その制度を導入した企業のほか、その制度の加入者も拠出ができることとされており(確定給付企業年金法第55条第2項)、加入者が負担した掛金は生命保険料控除の対象とされています(所得税法第76条第5項第4号)。
 つまり、この掛金は、社会保険料控除の対象となる厚生年金基金の加入者掛金と異なり、拠出段階で既に課税後の所得から支払われたものとして取り扱われていることから、二重課税の問題が生じないようにするために年金の収入段階で掛金を控除することとされていると考えられます。
 このような趣旨からすると、「その負担した金額」とは、加入者が実際に支払った掛金の額を示すものと解されます。そして、その年金の額に対応するものとして計算した金額を給付額から控除するとされているのですから、控除額の累計額が加入者の負担した金額の総額を上限とすることは明らかです。
 したがって、終身年金において、収入金額から控除する額は加入者が負担した金額の総額に達するまでの金額が限度とされますので、控除額の累計額がその総額を超える場合には、控除することはできないことになります。

【関係法令通達】

 所得税法第35条第3項第3号、第76条第5項第4号、所得税法施行令第82条の3第1項、第2項

注記
 令和5年8月1日現在の法令・通達等に基づいて作成しています。
 この質疑事例は、照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答であり、必ずしも事案の内容の全部を表現したものではありませんから、納税者の方々が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあることにご注意ください。