国税庁告示第2号

酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律(昭和28年法律第7号。以下「法」という。)第86条の3第1項の規定に基づき、公正な取引の基準(同項に規定する公正な取引の基準をいう。以下同じ。)を次のように定め、平成29年6月1日以後に酒類製造業者又は酒類販売業者(以下「酒類業者」という。)が行う酒類の取引に適用することとしたので、同条第3項及び酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行規則(昭和28年大蔵省令第11号)第11条の規定に基づき告示する。
平成29年3月31日
国税庁長官 迫田 英典

酒類の公正な取引に関する基準

(目的)

1  この基準は、酒類が、酒税の課される財政上重要な物品であるとともに、致酔性及び習慣性を有する等、社会的に配慮を要するものであるというその特殊性に鑑み、酒類の販売価格は、一般的にはその販売に要する費用に利潤を加えたものとなることが合理的であるとの考え方の下、酒類の公正な取引に関し必要な事項を定め、酒類業者がこれを遵守することにより、酒税の保全及び酒類の取引の円滑な運行を図ることを目的とする。

(公正な取引の基準)

2  酒類業者は、次のいずれにも該当する行為を行ってはならないものとする。

  • (1) 正当な理由なく、酒類を当該酒類に係る売上原価の額と販売費及び一般管理費の額との合計額を下回る価格で継続して販売すること
  • (2) 自己又は他の酒類業者の酒類事業に相当程度の影響を及ぼすおそれがある取引をすること

(売上原価の算定方法)

3  前項⑴の売上原価の額は、酒類製造業者の製造した酒類の販売にあっては、当該酒類の販売に対応する酒類の製造原価の額とし、酒類業者の仕入れた酒類の販売にあっては、当該酒類の販売に対応する酒類の仕入価格(その付随費用を含む。)から当該酒類の仕入れに係る値引きの額を控除して算出した額とする。

4  酒類業者が、酒類製造業者及び酒類卸売業者から酒類の取引数量又は業務効率化その他これに類するものへの寄与に応じて金銭等の支払い(この項において「リベート」という。)を受けた場合において、リベートに関する基準が明確に定められており、かつ、取引の当事者間において事前に共有されているときは、当該リベートの受取り(当該リベートの受取りの対象となる酒類の仕入れと密接に関連するものに限る。)を当該酒類の仕入れに係る値引きとみなして、前項の規定を適用する。

(費用配賦の方法)

5  酒類業者が、酒類事業と他の事業を併せ行っている場合において、これらの事業に共通する費用が発生するときは、当該費用については、当該酒類業者が選択した合理的な配賦方法に従って、酒類の売上原価又はその販売に係る販売費及び一般管理費に配賦するものとする。

(販売価格の算定方法)

6  酒類業者が、酒類の販売につき値引き(これに類する行為を含む。)をした場合には、当該酒類の販売価格は、当該値引きの額を控除して算出するものとする。

(指示)

7  国税庁長官は、酒類業者に第2項の規定に違反する行為があると認める場合において、当該酒類業者に対して法第86条の3第4項の規定による指示をするときは、当該行為を取り止めること又は当該行為を再び行わないことその他必要な事項を指示するものとする。

(命令)

8  前項の規定は、国税庁長官が、法第86条の4の規定による命令をする場合について準用する。

(質問検査権)

9  国税庁長官は、法第91条の規定により、酒類業者又はこれらの者とその事業に関して関係のある事業者に対し、売上原価の算定、酒類事業の状況その他公正な取引の基準の実施に関し必要な事項について報告を求めることができる。

(公正取引委員会との連携)

10 国税庁長官は、法第94条第3項又は第4項の規定により、公正取引委員会から報告を受け、又は公正取引委員会に対し報告をするときは、その内容その他必要な事項について、公正取引委員会と十分に協議するものとする。

11 国税庁長官は、法第86条の3第4項の規定による指示をしようとするときは、必要に応じ、公正取引委員会に対し、第2項の規定に違反する行為があると認められる事実を報告し、当該事実の認定方法その他の必要な事項について意見を求めることができる。