(特定委託者)
9の2─2 法第9条の2第1項に規定する特定委託者(以下「特定委託者」という。)とは、公益信託ニ関スル法律(大正11年法律第62号)第1条((公益信託))に規定する公益信託(以下9の2−6において「公益信託」という。)の委託者(その相続人その他の一般承継人を含む。以下同じ。)を除き、原則として次に掲げる者をいうことに留意する。
(1) 委託者(当該委託者が信託行為の定めにより帰属権利者として指定されている場合、信託行為に信託法第182条第2項に規定する残余財産受益者等(以下9の2―5までにおいて「残余財産受益者等」という。)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合に限る。)
(2) 停止条件が付された信託財産の給付を受ける権利を有する者(法第9条の2第5項に規定する信託の変更をする権限を有する者に限る。)
(新設)
(説明)
 相基通9の2―1の解説で示したように平成19年度税制改正により信託に関する権利を有する者は、受益者として権利を現に有する者及び特定委託者とされ、そして、特定委託者とは、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として信託の目的に反しないことが明らかな場合に限り信託の変更をすることができる権限を除き、他の者との合意により信託の変更をする権限を有する者を含む。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることができる者(受益者を除く。)をいうこととされている(法9の25、令1の7)。また、信託財産の給付を受けることができる者には、停止条件が付された信託財産の給付を受ける権利を有する者が含まれることとされている(令1の124)。
 ところで、新信託法の下では、委託者には、例えば、次に掲げる権限が付与されていることから、原則として、委託者は信託を変更する権限を有していることとなる。
  1. 1 受託者の辞任に対する同意権(新信託法571)
  2. 2 裁判所に対する受託者の解任請求権(新信託法584)
  3. 3 裁判所に対する新受託者の選任請求権(新信託法624)
  4. 4 信託の変更、併合、分割又は終了する場合の同意権(新信託法1491、1511、1551、1591、1641)。
また、委託者は、信託行為の定めにより委託者を帰属権利者とした場合、信託行為に新信託法第182条第2項に規定する残余財産受益者等(以下「残余財産受益者等」という。)の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合には、信託の信託財産の給付を受けることができることとなる。
 そこで、相基通9の2―2では、特定委託者には、原則として次に掲げる者が含まれることを例示した。
  1. (1) 委託者(当該委託者が信託行為の定めにより委託者を帰属権利者とした場合、信託行為に残余財産受益者等の指定に関する定めがない場合又は信託行為の定めにより残余財産受益者等として指定を受けた者のすべてがその権利を放棄した場合に限る。)
  2. (2) 停止条件が付された信託財産の給付を受ける権利を有する者(法第9条の2第5項に規定する信託の変更をする権限を有する者に限る。)
なお、上記以外の者であっても、例えば、新信託法第89条第1項((受益者指定権等))に規定する受益者指定権等を有する者が、信託財産の給付を受ける権利を有している場合には、特定委託者に該当することになる。
 また、公益信託ニ関スル法律(大正11年法律第62号)第1条((公益信託))に規定する公益信託(以下「公益信託」という。)の委託者(その相続人その他の一般承継人を含む。以下同じ。)は、法附則24項の規定により、特定委託者に該当することとされている。

(参考)

新信託法(抜すい)

(受託者の辞任)
第五十七条 受託者は、委託者及び受益者の同意を得て、辞任することができる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
(以下省略)
(受託者の解任)
第五十八条  (省略)
2〜3  (省略)
4 受託者がその任務に違反して信託財産に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、委託者又は受益者の申立てにより、受託者を解任することができる。
(以下省略)
第六十二条 (省略)
2〜3  (省略)
4 第一項の場合において、同項の合意に係る協議の状況その他の事情に照らして必要があると認めるときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、新受託者を選任することができる。
(以下省略)
(関係当事者の合意等)
第百四十九条 信託の変更は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、変更後の信託行為の内容を明らかにしてしなければならない。
(以下省略)
(関係当事者の合意等)
第百五十一条 信託の併合は、従前の各信託の委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
  • 一 信託の併合後の信託行為の内容
  • 二 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
  • 三 信託の併合に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
  • 四 信託の併合がその効力を生ずる日
  • 五 その他法務省令で定める事項
(以下省略)
(関係当事者の合意等)
第百五十五条 吸収信託分割は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
  • 一 吸収信託分割後の信託行為の内容
  • 二 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
  • 三 吸収信託分割に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
  • 四 吸収信託分割がその効力を生ずる日
  • 五 移転する財産の内容
  • 六 吸収信託分割によりその信託財産の一部を他の信託に移転する信託(以下この款において「分割信託」という。)の信託財産責任負担債務でなくなり、分割信託からその信託財産の一部の移転を受ける信託(以下「承継信託」という。)の信託財産責任負担債務となる債務があるときは、当該債務に係る事項
  • 七 その他法務省令で定める事項
(以下省略)
(関係当事者の合意等)
第百五十九条 新規信託分割は、委託者、受託者及び受益者の合意によってすることができる。この場合においては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
  • 一 新規信託分割後の信託行為の内容
  • 二 信託行為において定める受益権の内容に変更があるときは、その内容及び変更の理由
  • 三 新規信託分割に際して受益者に対し金銭その他の財産を交付するときは、当該財産の内容及びその価額
  • 四 新規信託分割がその効力を生ずる日
  • 五 移転する財産の内容
  • 六 新規信託分割によりその従前の信託の信託財産責任負担債務でなくなり、新たな信託の信託財産責任負担債務となる債務があるときは、当該債務に係る事項
  • 七 その他法務省令で定める事項
(以下省略)
(委託者及び受益者の合意等による信託の終了)
第百六十四条 委託者及び受益者は、いつでも、その合意により、信託を終了することができる。
(以下省略)