電子帳簿保存法創設の経緯

 高度情報化・ペーパーレス化が進展する中で、会計処理の分野でもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきており、経済界をはじめとする関係各界から、帳簿書類の電磁的記録(いわゆる電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認について、かねてから強い要望が寄せられていました。
 政府においては、こうした要望を受けとめ、規制緩和推進計画等の閣議決定、緊急経済対策、市場開放問題苦情処理対策本部決定等において、平成9年度末までに、帳簿書類の電磁的記録等による保存を容認するための措置を講ずることを決定していました。
 このような関係各界からの要望や政府全体としての取組を踏まえ、平成10年度税制改正の一環として、適正公平な課税を確保しつつ納税者等の帳簿保存に係る負担軽減を図る等の観点から、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等が行われました。

基本的な考え方

 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等について、政府税制調査会の「平成10年度の税制改正に関する答申(平成9年12月16日)」では、次のような基本的な考え方が示されています。
 「新しい時代の流れに対応し、納税者の帳簿書類の保存の負担軽減を図るために、記録段階からコンピュータ処理によっている帳簿書類については、電子データ等により保存することを認めることが必要であると考えます。
 その際には、コンピュータ処理は、痕跡を残さず記録の遡及訂正をすることが容易である、肉眼でみるためには出力装置が必要であるなどの特性を有することから、適正公平な課税の確保に必要な条件整備を行うことが不可欠です。
 また、電子データ等による保存を容認するための環境整備として、EDI取引(取引情報のやり取りを電子データの交換により行う取引)に係る電子データの保存を義務づけることが望ましいと考えます。」
 国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等は、このような政府税制調査会の答申における考え方を踏まえて創設されました。

国税関係書類のスキャナ保存制度創設の経緯

 法令により義務付けられている紙での保存が、民間の経営活動や業務運営の効率化の阻害要因となっており、日本経団連をはじめとする民間企業等から政府に対して、法令により義務付けられている紙での保存について早期に電子保存が可能となるよう数度にわたり強い要望がなされました。また、技術的にも情報通信技術の進展により、紙での保存に代えて、電子的に保存することが基本的に可能となっていました。
 このような状況を踏まえ、書面の保存等に要する負担軽減を通じて国民の利便性の向上、国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与するため、民間事業者等に対して書面の保存が法令上義務付けられている場合について、税務関係書類を含めた原則としてすべての書類に係る電磁的記録による保存等を行うことを可能とするため、IT戦略本部を中心に検討が進められました。
 この結果、民間の文書保存に係る負担の軽減を図るため、紙での保存を義務付けている多数の法令について、統一的な方針の下に電子保存を容認する措置を講ずることとされ、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法に基づき作成された「e-Japan重点計画一2004」(平成16年6月15日IT戦略本部決定)において、民間における文書・帳票の電子的な保存を原則として容認する統一的な法律の制定を行うものとされたことを受けて、関係法律案が平成16年10月12日に第161回臨時国会へ提出され、衆議院内閣委員会及び参議院内閣委員会における審議を経て、全会一致で原案のまま可決成立し、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成16年法律第149号)」(以下「e-文書通則法」といいます。)と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成16年法律第150号)」(以下「e-文書整備法」といいます。)が、平成16年12月1日に公布されました。
 e-文書通則法は、民間事業者等が電磁的記録による保存等をできるようにするための共通事項を定めたものであり、通則法形式の採用により、約250本の法律による保存義務について、法改正せずに電子保存が容認されます。また、e-文書整備法は、文書の性質上一定の要件を満たすことを担保するために行政庁の承認等特別の手続きが必要である旨の規定等、e-文書通則法のみでは手当てが完全でないもの等について、約70本の個別法の一部改正により、所要の規定を整備しています。
 税務関係書類については、適正公平な課税の確保のため、税務署長の事前承認を要件としており、e-文書整備法において電子帳簿保存法を改正して措置しています。
 国税関係書類の電子化については、税務行政の根幹である適正公平な課税を確保しつつ、電子化によるコスト削減を如何に図るかという観点から、業界団体等とも意見交換しながら、積極的に検討が進められて来ました。
 平成17年度の電子帳簿保存法の改正では、適正公平な課税を確保するため、特に重要な文書である決算関係書類や帳簿、一部の契約書・領収書を除き、原則的に全ての書類を対象に、真実性・可視性を確保できる要件の下で、スキャナを利用して作成された電磁的記録による保存(以下「スキャナ保存」といいます。)を認めることとされました。
 また、平成27年度の税制改正により、スキャナ保存の要件緩和等が行われました。
 要件緩和等に係る主な改正事項は次のとおりです。

  1. 1 スキャナ保存の対象となる国税関係書類の範囲の拡充
  2. 2 スキャナ保存の要件緩和
  3. 3 適時入力方式に係る要件緩和

平成28年度の税制改正によるスキャナ保存の見直し

 近年、画質性能の高いカメラを搭載したスマートフォンやクラウドサービス等が発達してきた中、データによる経理処理を行えるよう、スマートフォン等を使用して社外において経理処理前に国税関係書類の読み取りを行う仕組みの整備が課題とされていました。
 こうした課題に対応し、適切な改ざん防止措置を講じた上で、利用者の更なる利便性の向上を図る観点から、社外における手続も可能とするなどの見直しが行われました。
 見直しに係る主な改正事項は次のとおりです。

  1. 1 読み取りを行う装置に係る要件の緩和
  2. 2 受領者等が読み取りを行う場合の手続の整備
  3. 3 相互けんせい要件に係る小規模企業者の特例