個人課税課情報 第3号 平成28年3月31日 国税庁
個人課税課

標題のことについて、厚生労働省から照会があり、これに対して次のとおり回答したので、今後の執務の参考とされたい。

(照会要旨)

1 キャリアコンサルタントの登録制度の創設

第189回通常国会において成立した勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律(平成27年法律第72号)による職業能力開発促進法(昭和44年法律第64号)の一部改正に伴い、労働者の職業能力の開発及び向上等に関する相談に応じ、助言及び指導を業として行うことのできるキャリアコンサルタントの登録制度が平成28年4月より創設されます。

この登録キャリアコンサルタントによるキャリアコンサルティングにおいては、労働者自身の職務能力を把握し、今後その者がどのようなキャリアを歩みたいか確認した上で、身につけるべき知識・能力・スキルに見合う研修を提示することから、労働者がキャリアコンサルティングと研修を一体的に受講することにより、労働者の能力開発においてより効果を発揮することができると考えます。

2 キャリアコンサルティング費用の特定支出控除の取扱い

特定支出控除制度においては、職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得することを目的として受講する研修のための支出(研修費)が控除の対象とされています。
 給与所得者が、次の手続により、キャリアコンサルティング及び研修を受講した場合、当該キャリアコンサルティングと研修は一体的であることから、当該キャリアコンサルティングの費用は研修費に該当し、特定支出控除の対象になると考えます。

  1. 1 給与所得者は、自己負担でキャリアコンサルティングを受ける。
  2. 2 職業能力開発促進法の登録を受けたキャリアコンサルタントは、その給与所得者に必要な研修を指定するとともに、当該研修が給与所得者のキャリアアップに必要なものに該当し、かつ、当該キャリアコンサルティングにより、より一層の効果が発揮されるものであることを証明する。
  3. 3 給与所得者は、キャリアコンサルティングにおいて指定された研修を受講する。
  4. 4 給与所得者は、特定支出(研修費)に関する証明の依頼書及びキャリアコンサルタントの証明のある書類(ジョブ・カード)を使用者に提出する。
  5. 5 使用者は、特定支出(研修費)に関する証明書を発行し、当該証明書において、その研修が職務に直接必要なものであること及びその研修がキャリアコンサルタントが指定したものであることを証明する。

なお、キャリアコンサルティングを受けた年と研修を受講した年が異なる場合であっても、キャリアコンサルティング費用は研修のための費用の一部と考えられることから、研修を受けた年(研修のための費用を支出した年)に特定支出控除の適用を受けることになると考えます。

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(回答)

1 キャリアコンサルティング費用の研修費該当性

特定支出控除制度においては、職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得することを目的として受講する研修のための支出(研修費)が控除の対象とされていますが、この研修費については、研修の受講料のほか交通費など研修を受講するために必要な費用も含まれると解されています。

キャリアコンサルティング費用については、一般的には、研修を受講するために必要な費用とは認められませんが、照会にあるような手続により、キャリアコンサルティング及び研修を一体的に受講した場合には、当該キャリアコンサルティングは、研修を受講するために必要なものと認められることから、当該キャリアコンサルティングの費用は、研修を受講するために必要な費用に該当し、特定支出控除の対象になると考えます。

なお、キャリアコンサルティングを受けた者が、そのキャリアコンサルティングにおいて指定された研修費を受講しない場合には、そのキャリアコンサルティング費用は特定支出控除の対象となりません。

2 特定支出控除の適用年分

特定支出控除制度においては、居住者が特定支出をした年の所得税において適用を受けることとされています。

しかしながら、キャリアコンサルティング費用については、給与所得者が研修を受講するまで特定支出控除の対象になるかどうかが確定しないことから、研修を受講した年において特定支出控除の適用を受けて差し支えありません。