「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について

所得税法第57条の4《株式交換等に係る譲渡所得等の特例》関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

57の4−1 法第57条の4第1項及び第2項の規定を適用する場合において、同条第1項に規定する株式交換完全親法人又は同条第2項に規定する株式移転完全親法人が、同 条第1項に規定する株式交換又は同条第2項に規定する株式移転に際し株主に対し交付しなければならない株式に一株に満たない端数が生じたため、会社法第 234条第1項の規定等によりその端数の合計数に相当する株式の競売等をし、その競売等による代金が株主に交付されたときは、その一株に満たない端数に相 当する株式については、その一株に満たない端数に相当する株式の株主に対して当該株式交換完全親法人又は当該株式移転完全親法人の株式が交付されたものとして取り扱う。
 なお、この場合において、その株主に交付された一株に満たない 端数に相当する数の株式については令第167条の7の規定による取得価額の計算が行われ、その上で譲渡があったものとして措置法第37条の10、第37条 の11、第37条の11の2、第37条の12、第37条の12の2又は第37条の14の規定が適用されることに留意する。

≪説明≫

1 平成18年度税制改正により、従来、措置法で定められていた株式交換・株式移転に係る課税の特例制度が廃止され、新たに所得税法(所法57の412)において株式交換・株式移転に係る譲渡所得等の課税の繰延制度が創設されたことから、旧措置法通達37の14−2を廃止し、本項及び次項において同様の留意通達を新設したものである。

2 平成18年度税制改正により新設された株式交換等に係る譲渡所得等の特例制度の概要は、次のとおりである。

(1) 株式交換に係る譲渡所得等の特例
居住者が、その有する株式(旧株)につき、その旧株を発行した法人の行った株式交換(注1)により株式交換完全親法人(注2)(法人税法第2条第12号 の6の4に規定する株式交換完全親法人をいう。)に対し旧株の譲渡をし、かつ、当該株式交換完全親法人の株式の交付を受けた場合には、事業所得の金額、譲 渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その旧株の譲渡がなかったものとみなされる(所法57の41)。

(注1) この場合における株式交換とは、その法人の株主に株式交換完全親法人の株式(出資を含む。)以外の資 産(その株主に対する剰余金の配当として交付された金銭その他の資産及び株式交換に反対するその株主に 対する買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されなかったものに限ら れる。

(注2) 法人税法第2条第12号の6の4に規定する株式交換完全親法人とは、株式交換により他の法人の株式を 取得したことによって当該法人の発行済株式の全部を有することとなった法人をいう。

(2) 株式移転に係る譲渡所得等の特例
居住者が、その有する株式(旧株)につき、その旧株を発行した法人の行った株式移転(注1)により株式移転完全親法人(注2)(法人税法第2条第12号 の7に規定する株式移転完全親法人をいう。)に対し旧株の譲渡をし、かつ、当該株式移転完全親法人の株式の交付を受けた場合には、事業所得の金額、譲渡所 得の金額又は雑所得の金額の計算については、その旧株の譲渡がなかったものとみなされる(所法57の42)。

(注1) この場合における株式移転とは、その法人の株主に株式移転完全親法人の株式以外の資産(株式移転に反対するその株主に対する買取請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産を除く。)が交付されなかったものに限られる。

(注2) 法人税法第2条第12号の7に規定する株式移転完全親法人とは、株式移転により他の法人の発行済株式の全部を取得した当該株式移転により設立された法人をいう。

3 ところで、株式交換等に際して株式交換比率等に端数がある場合には、株主に交付される株式交換完全親法人等の 株数に一株未満の端数が生ずる場合があり、会社法第234条第1項では、「・・・その端数の合計数に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてそ の競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。」とされ、また、会社法第234条第2項では、「株式会社は、前項の規定による競売に代え て、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許 可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。・・・」とされている。

4 このような場合において、従来の「株式交換又は株式移転に係る課税の特例」(旧措法37の14)の適用に当 たっては、その譲渡代金の交付は特定子会社の株主に対して一株未満の株式に相当する新株を割り当てたものとすることとされており、会社法の制定及びこれに 伴う税制改正により従来と異なる取扱いをする特段の理由はない。
 したがって、本項は、旧措置法通達37の14−2と同様に、所得税法第57条の4第1項及び第2項を適用する場合においては、次の1のとおり取り扱うとともに、2を留意的に明らかにしている。

1  所得税法第57条の4第1項及び第2項を適用する場合において、株式交換等に際して株主に交付される株式交換完全親法人等の株数に一株未満の端数が生ずる ときに、会社法第234条第1項の規定等により、会社がその端数の合計数に相当する株式の競売等を行いその競売等による代金が株主に交付されたときは、株 主に対して一株未満の株式に相当する株式交換完全親法人等の株式が交付されたものとして取り扱うこと。

2 個人株主に交付された譲渡代金は、所得税法令第167条の7第2項及び第3項の規定による取得価額の計算を行った上で、株式等に係る譲渡所得等として課税されること。