「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「所得税基本通達の制定について」の一部改正について

所得税法第33条《譲渡所得》関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

33の6−4 譲渡所得の基因となる有価証券を譲渡した場合において、当該有価証券と同一銘柄の有価証券を当該譲渡の日の前5年前及 び当該譲渡の日前5年以内に取得しているときは、当該譲渡した有価証券は先に取得したものから順次譲渡したものとして、当該有価証券のうちに法第33条第 3項第1号に掲げる所得の基因となる有価証券が含まれているかどうかを判定する。この場合において、株式の分割 又は併合により取得した有価証券、株主割当てにより取得(令第111条第1項に規定する旧株の数に応じて割り当てられた株式を取得した場合及び同条第2項 に規定する旧株を発行した法人の株式無償割当てにより割り当てられた株式を取得した場合をいう。)した有価証券及び法人の合併、法人の分割又は組織変更により取得した有価証券(措置法第37条の10第3項の規定により株式等に係る譲渡所得等に係る収入金額とみなされることとなる金額がある場合における法人の合併、法人の分割又は組織変更により取得した有価証券を除く。)の取得の日は、その取得の基因となった有価証券の取得の日とする。

(注) 1 株式無償割当てのうち、旧株と異なる種類の株式の割当てを受けた場合の取得の日は、当該株式無償割当ての効力を生ずる日となることに留意する。

   2 当該譲渡した有価証券の取得費は、令第118条((譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等))の規定により計算することに留意する。

≪説明≫

1 譲渡所得は、譲渡資産の保有期間の長短によって、長期譲渡所得と短期譲渡所得に区分され、前者は2分の1課税の対象とされるのに対して、後者は全額が課税の対象とされる(所法222二、333二)。 申告分離課税の対象となる株式等の譲渡による所得については、株式等の保有期間の長短による課税上の差異は設けられていないため、長期・短期の区分は要し ないが、ゴルフ会員権の譲渡に類似する株式等の譲渡による所得など総合課税の対象となる有価証券の譲渡による譲渡所得については、長期・短期の区分を要す ることとなる。

2 改正前の本項では、譲渡した同一銘柄の有価証券の取得の日が当該譲渡の 日の前5年前であるものと当該譲渡の日前5年以内であるものとがある場合の長期・短期の区分の方法を明らかにするとともに、増資・減資、株式の分割・併合 又は会社の合併・分割により取得した有価証券は、本来、その取得の基因となった有価証券と同一性を有するものであることから、これらの有価証券は、その取 得の基因となった元の有価証券の取得の日をもってその取得の日とすることを明らかにしている。

3 平成18年度税制改正等に伴い、本項について次の改正を行ったものである。

(1) 所得税法令第111条において、条文の見出しが「株主割当てにより取得した株式の取得価額」に改められるとともに、有償による株主割当てがあった場合の株式の取得価額の計算(所令1111)と株式無償割当てがあった場合の取得価額の計算(所令1112)とに整理されたことによる文言の整理を行った。

(2)  会社法第185条において新たに創設された株式無償割当ては、株主に対して払込みや申込み等の手続を採ることなく株式が割り当てられるものであり、この 株式無償割当てにより株主が有している株式(旧株)と同一の種類の株式を取得した場合には株式の分割が行われたことと同様であることから、長期・短期の判 定に当たっては、株式無償割当てにより取得した株式(旧株と同一の種類の株式を取得した場合に限る。)についても、株式の分割により取得した株式と同様 に、その取得の基因となった元の株式の取得の日をもってその取得の日としている。
 なお、株式無償割当てのうち旧株と異なる種類の株式の割当てを受けた場合の取得の日は、その取得の基因となった元の株式の取得の日ではなく、当該株式無償割当ての効力を生ずる日となることを、注書きにおいて留意的に明らかにしている。

(3)  組織変更をした法人の株主等に、その組織を変更した法人(以下「組織変更法人」という。)の株式又は出資のみが交付された場合には、その組織変更後にお いても従前と株式又は出資の所有実態が変わらないこと等から、長期・短期の判定に当たっては、組織変更により取得した株式又は出資(組織変更法人の株式又 は出資のみが交付されたものに限る。)についても、その取得の基因となった元の株式又は出資の取得の日をもってその取得の日としている。

(4) 会社法において、「剰余金の配当」として従来の利益配当と資本剰余金の減少による配当が統合されるとともに、「株式の消却」について、株主の手元にある株式を消却するという方法がな くなり、株式会社が自己株式を取得した上で消却を行う方法に整理された。
これを受けて、平成18年度税制改正において、1所得税法第25条に規定する配当等とみなす金額、2措置法第37条の10第3項に規定する株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる金銭等の額及び3所 得税法令第114条第1項に規定する株式の取得価額の調整を行う事由が、「資本の減少(株式が消却されたものを除く。)」から「資本の払戻し(資本剰余金 の額の減少に伴う剰余金の配当のうち法人税法第2条第12号の9に規定する分割型分割によるもの以外のものをいう。)」とされたところである。
 すなわち、旧商法におけるいわゆる有償減資(従来の株式の消却による方法を含む。)は、会社法において、1資本金から資本剰余金への振替、2剰余金の配当という形で行うこととなり、こ の場合に個人株主に交付される金銭等の額については、すべて株式等に係る譲渡所得等の収入金額(みなし配当の金額を除く。)とみなされることから、改正前の取扱いに含まれていた「減資」 については、削除することとしたものである。