「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)

○ 「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて」の一部改正について

措置法第37条の10《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》関係

※ アンダーラインを付した部分が改正関係部分である。

37の10−19 株式等に係る譲渡所得等の金額を計算する場合における株式の「取得をした日」の判定は、次による。

(1) 他から取得した株式は、引渡しがあった日による。ただし、納税者の選択により、当該株式の取得に関する契約の効力発生の日を取得をした日として申告があったときは、これを認める。

(2) 金銭の払込み又は財産の給付(以下「払込み等」という。)により取得した株式は、その払込み等の期日(払込み等の期間が定められている場合には払込み等を行った日)による。

(3) 新株予約権の行使(新株予約権付社債に係る新株予約権の行使を含む。)により取得した株式は、その新株予約権を行使した日による。

(4) 株式の分割又は併合により取得した株式及び株主割当てにより取得(所得税法令第111条第1項に規定する旧株の数に応じて割り当てられた株式を取得した場合をいう。)した株式は、その取得の基因となった株式の「取得をした日」による。

(5) 株式無償割当てにより取得した株式は、その取得の基因となった株式の「取得をした日」による。ただし、当該株式無償割当ての基因となった株式と異なる種類の株式が割り当てられた場合には、当該株式無償割当ての効力を生ずる日による。

(6) 法 人の合併又は法人の分割により取得した株式は、その取得の基因となった株式の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第3項第1号又は第2 号の規定により、株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされることとなる金額がある場合における法人の合併又は法人の分割により取得した株式は、その契 約において定めたその効力を生ずる日(新設合併又は新設分割の場合は、新設合併設立会社又は新設分割設立会社の設立登記の日)による。

(7) 組 織変更により取得した株式は、その取得の基因となった出資の「取得をした日」による。ただし、措置法第37条の10第3項第6号の規定により、株式等に係 る譲渡所得等の収入金額とみなされることとなる金額がある場合における組織変更により取得した株式は、組織変更において定めたその効力を生ずる日による。

(8) 株式交換により取得した株式は、その契約において定めたその効力を生ずる日による。

(9) 株式移転により取得した株式は、所得税法第57条の4第2項に規定する株式移転完全親法人の設立登記の日による。

(10) 取得請求権付株式の請求権の行使の対価として交付された株式は、当該請求権の行使をした日による。

(11) 取 得条項付株式(取得条項付新株予約権及び取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債を含む。)の取得対価として交付された株式は、取得事由が生じた 日(当該取得条項付株式を発行する法人が当該取得事由の発生により当該取得条項付株式の一部を取得することとするときは、当該取得事由が生じた日と取得の 対象となった株主等への当該株式を取得する旨の通知又は公告の日から2週間を経過した日のいずれか遅い日)による。

(12) 全部取得条項付種類株式の取得対価として交付された株式は、全部取得条項付種類株式に係る取得決議において定めた会社が全部取得条項付種類株式を取得する日による。

(13) 信用取引の買建てにより取得していた株式をいわゆる現引きにより取得した場合には、当該買建ての際における(1)に定める日による。

(14) 上場株式等償還特約付社債の償還により取得した株式は、その償還の日による。

(15) 有価証券オプション取引による権利の行使又は義務の履行により取得した株式は、当該オプション対象株式の売買に係る決済の日による。ただし、納税者の選択により、その権利の行使の日又は義務の履行の日を取得をした日として申告があったときは、これを認める。

(注) 所得税法第60条第1項の規定は、株式についても適用されることに留意する。

≪説明≫

 本項は、株式等に係る譲渡所得等の金額を計算する場合における株式等の「取得をした日」を、その取得の形態別に明ら かにしているものであるが、会社法の制定により法人が新たに発行できることとなった各種種類の株式も含め、その「取得をした日」について以下の改正を行っ たものである。

1 金銭の払込み又は財産の給付により取得した株式

 金銭の払込み又は財産の給付(以下「払込み等」という。)により取得した株式の「取得をした日」は、その払込み等の期日(払込み等の期間が定められている場合には払込み等を行った日)としている。

(参考)

 会社法において、募集株式の引受人は、その払込み等の期日(払込み等の期間が定められている場合には払込み等を行った日)に株主となるとされている(会社法209)

2 新株予約権の行使により取得した株式

 新株予約権の行使(新株予約権付社債に係る新株予約権の行使を含む。)により取得した株式の「取得をした日」は、その新株予約権を行使した日としている。

(参考)

 会社法において、新株予約権を行使した新株予約権者は、当該新株予約権を行使した日に当該新株予約権の目的である株式の株主となるとされている(会社法282)。

3 株式の分割又は併合により取得した株式及び株主割当てにより取得した株式

 株式の分割又は併合により取得した株式は、その取得の基因となった株式と同一性を有するものであることから、その分割又は併合により取得した株式の「取得をした日」は、その取得の基因となった株式の「取得をした日」としている。
また、所得税法令第111条第1項に規定する株主割当てにより取得した株式(その有する株式(旧株)について、その旧株の数に応じて割り当てられた株式 を取得した場合をいい、金銭の払込みを要するものに限る。)の「取得をした日」は、その株主割当てにより取得した株式の取得の基因となった株式の「取得を した日」としている。

4 株式無償割当てにより取得した株式

 会社法第185条においては、「株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新 たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当てをすることができる。」と規定され、株主に対して払込みや申込み等の手続を経ることなく株式が割り当て られる株式無償割当て制度が創設された。
この株式無償割当てによる株主が有している株式と同一の種類の株式の取得については、株式の分割が行われた場合と同様であることから、その「取得をした日」は、その株式無償割当てにより取得した株式の取得の基因となった株式の「取得をした日」としている。
ただし、割り当てられた株式が、その株式無償割当てにより取得した株式の取得の基因となった株式と同一の種類の株式ではない場合には、当該株式無償割当てがその効力を生ずる日に取得したものとなる。

(参考)

 会社法において、株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、「株式無償割当てがその効力を生ずる日」を定めなければならないとされており(会社法1861二)、株式無償割当てを受けた株主は、 その効力を生ずる日に、株主となる(会社法1871)。

5 法人の合併又は法人の分割により取得した株式

 法人の合併又は法人の分割により取得した株式は、その取得の基因となった株式と同一性を有するものであることから、その合併又は分割により取得した株式の「取得をした日」は、その取得の基因となった株式の「取得をした日」としている。
ただし、その合併又は分割により、合併法人又は分割承継法人の株式以外の資産の交付がされた場合は、その取得の基因となった株式につき譲渡所得等の課税関係が生じることととなり(措法37の103一、二)、この場合において取得した当該合併法人又は分割承継法人の株式以外の株式の「取得をした日」は、その契約において定めたその効力を生ずる日(新設合併又は新設分割の場合は、新設合併設立会社又は新設分割設立会社の設立登記の日)としている。

(参考1)

 会社法において、会社が吸収合併をする場合、吸収合併後に存続する会社が株式会社又は持分会社であるときは、吸収合併契約において「吸収合併がその効力を生ずる日(効力発生日)」を定めなければならないとされており(会社法7491六、7511七)、吸収合併存続会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継するとされている(会社法7501、7521)。
また、二以上の会社が新設合併をする場合、新設合併により設立する会社が株式会社又は持分会社であるときは、当該新設合併設立会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継するとされている(会社法7541、7561)。

(参考2)

  会社法において、会社が吸収分割をする場合、吸収分割により一の会社(株式会社又は合同会社に限る。)が事業に関して有する権利義務の全部又は一部を承継 する会社が株式会社又は持分会社であるときは、吸収分割契約において「吸収分割がその効力を生ずる日(効力発生日)」を定めなければならないとされ(会社 法758七、760六)、吸収分割承継会社は、効力発生日に、吸収分割会社の権利義務を承継するとされている(会社法7591、7611)。
また、一又は二以上の株式会社又は合同会社が新設分割をする場合、新設分割により設立する会社が株式会社又は持分会社であるときは、当該新設分割設立会社は、その成立の日に、新設分割会社の権利義務を承継するとされている(会社法7641、7661)。

6 組織変更により取得した株式

 従来の組織変更は、株式会社と有限会社の間及び合名会社と合資会社の間においてのみ認められており、また、合名会 社や合資会社については、合併により株式会社となることは可能とされていたが、会社法においては、持分会社一般について、株式会社との間の組織変更を認め ることとされ、会社法上、組織変更は、株式会社から持分会社への変更又は持分会社から株式会社への変更をいうものと整理された(会社法2二十六)。この組 織変更により取得した株式の「取得をした日」は、その取得の基因となった出資の「取得をした日」としている。
ただし、組織変更に際し、当該組織変更をしたその法人の株式以外の資産を取得した場合は、その取得の基因となった出資につき譲渡所得等の課税関係が生じることとなり(措法37の103六)、 この場合における当該組織変更により取得した株式の「取得をする日」は、当該組織変更において定めたその効力を生ずる日としている。

(参考)

 会社法において、株式会社(又は持分会社)が組織変更をする場合には、当該株式会社(又は当該持分会社)は、組織変更計画において、「組織変更がその効力を生ずる日」を定めなければならないとされ(会社法7441九、746九)、組織変更をする株式会社(又は持分会社)は、効力発生日に、持分会社(又は株式会社)となる(会社法7451、7471)。

7 株式交換により取得した株式

 株式交換により取得した株式の「取得をした日」は、当該株式交換契約において定めたその効力を生ずる日としている。

(参考)

 会社法において、株式会社が株式交換をする場合には株式交換契約において「株式交換がその効力を生ずる日(効力発生日)」を定めなければならないとされ(会社法7681六)、株式交換完全親株式会社は、効力発生日に、株式交換完全子会社の株式の全部を取得するとされている(会社法7691)。

8 株式移転により取得した株式

 株式移転により取得した株式の「取得をした日」は、所得税法第57条の4第2項に規定する株式移転完全親法人の設立登記の日としている。

(参考)

 会社法において、株式移転設立完全親株式会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の株式の全部を取得するとされ(会社法7741)、株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立するとされている(会社法49)。

9 取得請求権付株式の請求権の行使の対価として交付された株式

 取得請求権付株式に係る請求権の行使によりその取得の対価として交付された株式の「取得をした日」は、当該請求権の行使をした日としている。

(参考)

  会社法において、「取得請求権付株式」とは、株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求する ことができる旨の定めを設けている場合における当該株式をいい(会社法2十八)、株式会社は、取得請求権付株式の請求の日に当該請求に係る取得請求権付株 式を取得するとされている(会社法1671)。

10 取得条項付株式の取得対価として交付された株式

 取得条項付株式(取得条項付新株予約権及び取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債を含む。)に係る取得 事由の発生によりその取得の対価として交付された株式の「取得をした日」は、当該取得事由が生じた日(当該取得条項付株式を発行する法人が当該取得事由の 発生により当該取得条項付株式の一部を取得することとするときは、当該取得事由が生じた日と取得の対象となった株主等への当該株式を取得する旨の通知又は 公告の日から2週間を経過した日のいずれか遅い日)としている。

(参考)

  会社法において、株式会社は、取得条項付株式に係る取得事由が生じた日(当該取得条項付株式を発行する法人が当該取得事由の発生により当該取得条項付株式 の一部を取得することとするときは、当該取得事由が生じた日と取得の対象となった株主等への当該株式を取得する旨の通知又は公告の日から2週間を経過した 日のいずれか遅い日)に、取得条項付株式を取得するとされている(会社法1701)。

11 全部取得条項付種類株式の取得対価として交付された株式

 全部取得条項付種類株式に係る取得決議によりその取得の対価として交付された株式の「取得をした日」は、当該取得決議において定めた会社が全部取得条項付種類株式を取得する日としている。

(参考)

  会社法において、全部取得条項付種類株式を発行した種類株式発行会社は、株主総会の決議によって、全部取得条項付種類株式の全部を取得することができ、こ の場合においては、当該株主総会の決議によって「株式会社が全部取得条項付種類株式を取得する日(取得日)」を定めなければならないとされ(会社法1711三)、株式会社は、取得日に全部取得条項付種類株式の全部を取得するとされている(会社法1731)。