(問59)

連結子法人S社は連結事業年度終了の時(×1年3月31日)の資本金の額が1,000万円ですが、一括貸倒引当金繰入限度額の計算において、いわゆる法定繰入率を用いることができるのでしょうか。

【回答】

S社の連結親法人のその連結事業年度終了の時の資本金の額が1億円以下であるなど、一定の要件を満たす場合には、法定繰入率を用いることができます。

【解説】

連結法人の一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算は、原則として、その連結法人が連結事業年度終了の時に有する一括評価金銭債権(その連結法人と連結完全支配関係がある他の連結法人に対して有する金銭債権などを除きます。以下同じです。)の帳簿価額の合計額に貸倒実績率を乗じて計算することとなりますが(法81の31、522、令966)、次の連結法人については、貸倒実績率に代えて法定繰入率を乗じて計算することができます(措法68の591、措令39の863)。

  1. 1 連結事業年度終了の時に普通法人で、資本金の額が1億円以下(資本金の額が5億円以上である法人による完全支配関係があるものなどを除きます。)又は資本を有しないものなど一定の法人(相互会社を除きます。)に該当する連結親法人
  2. 21の連結親法人による連結完全支配関係にある連結子法人(その連結事業年度終了の時の資本金の額が1億円を超えるものなどを除きます。)

この場合の法定繰入率とは、その連結法人が営む主たる事業の次の区分に応じ、それぞれ次の割合となります(措令39の863)。

事業区分 割合
卸売及び小売業(飲食店業等を含み、割賦販売小売業を除きます。) 10/1,000
製造業(電気業等を含みます。) 8/1,000
金融及び保険業 3/1,000
割賦販売小売業等 13/1,000
上記事業以外の事業 6/1,000

なお、法定繰入率を用いて一括貸倒引当金繰入限度額の計算をする場合には、その計算の基礎となる一括評価金銭債権の帳簿価額から、その一括評価金銭債権に係る債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権と見られない部分の金額など一定の金額を除くこととなります(措法68の591、措令39の8612)。
 本件は、S社の連結親法人の連結事業年度終了の時(×1年3月31日)の資本金の額が1億円以下であるなど、その連結親法人が上記1の要件を満たす場合には、その連結親法人による連結完全支配関係にあるS社のその連結事業年度終了の時の資本金の額が1,000万円であることから、S社は上記2の要件を満たすこととなりますので、S社はその営む主たる事業の区分に応じて、上記の法定繰入率を用いることができます。

(参考)

連結法人が貸倒引当金の損金算入の規定を適用できる場合の要件や、一括評価金銭債権及び貸倒実績率の意義については、次のQ&Aを参照してください。

  1. 問58 貸倒引当金の繰入限度額を計算する場合における連結法人間の金銭債権の取扱い