経済産業省

15年7月28日

国税庁課税部審理室長 上斗米 明 殿

中小企業庁事業環境部企画課長 長尾 尚人

 中小企業再生支援協議会(以下協議会という)は、本年改正された産業活力再生特別措置法に基づき、中小企業の再建の支援を目的に設立されるものであり、順次各地で中小企業の再建支援を行う業務を開始しているところです。
 一般に、債権者である企業が取引先等を整理もしくは再建するために債権放棄等をした場合の税務上の取扱いについては、法人税基本通達9−4−1及び9−4−2において、既に明確化されているところであり、同通達9−4−2には、合理的な再建計画に基づく債権放棄等による損失であれば、税務上損金算入される旨が明らかにされています。
 現在まで協議会に寄せられている案件の中には、一定程度の債権放棄を行えば、再建の可能性が高いと考えられるものもあります。もとより、協議会を通じた再建支援においては、不採算部門からの撤退、営業譲渡、返済の繰り延べ等、他に様々に用意されている再建のための手法により対応されるものもあり、債権放棄による再建支援はあくまでも選択肢の一つであります。また、個別の事例について債権放棄が行われるかどうかについては、各金融機関等の債権者の判断によるものでありますが、中小企業庁としては、円滑な再建計画の策定のため、協議会の支援の下で策定された再建計画に基づき債権放棄が行われた場合の税務上の取扱いをより明確化しておくことが必要であると考えております。
 債権放棄を行うに当たっては、個別の事例について合理的な再建計画として関係者間で合意が得られるかどうかについて、それぞれの事例ごとの特徴も踏まえて十分な検討が行われる必要がありますが、中小企業に対する債権放棄においては、経営者が再建に不可欠な場合や、債務超過解消に必要なキャッシュフローが小さいこと、処理できる資産に限界があることなどの特徴がしばしば見られます。つきましては、そのような特徴を踏まえ、今後協議会の支援の下で策定される再建計画において債権放棄が行われた場合に、それが合理的な再建計画に基づく債権放棄であるか否かの判断に資するよう、別添のモデルケースに示された再建計画に基づく債権放棄に関する税務上の取扱いが下記のとおりで特段問題ないか、ご照会申し上げます。

1. 別添のA社及びB社のモデルケースにおいて、策定された再建計画に基づく債権放棄については、前提とする事実に変わりがない限り、法人税基本通達9−4−2にいう「合理的な再建計画に基づく債権放棄等」であると考えます。

2. なお、債務免除された債務者企業A社及びB社の税務上の取扱いについては、別添のモデルケースの事例では、債務者である企業からの要請に基づいて、利害が対立している複数の債権者が協議会の調整を経て合意をしているなど適切な手続きを踏んで、合理的な計画を立てているものであり、法人税基本通達12−3−1(3)にいう「債務の免除等が多数の債権者によって協議の上決められる等その決定についてし意性がなく、かつ、その内容に合理性があると認められる資産の整理があったこと」の内容にあたると考えられるので、法人税法59条《資産整理に伴う私財提供等があった場合の欠損金の損金算入》の適用があると考えます。