第8章 無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務

第3節 第二次納税義務の限度

(責任の限度)

103 第二次納税義務者から徴収することができる金額は、その者が親族その他の特殊関係者であるときは無償譲渡等の処分により受けた利益の額を、それ以外の第三者であるときは無償譲渡等の処分により受けた利益の現に存する額を、それぞれ限度として主たる納税者の滞納国税の全額である。

(第三者の責任の限度)

104 無償譲渡等の処分により受けた利益が現に存する額の計算は次により行うものとする。

  1. (1) 受けた利益が金銭以外のものである場合
  2. 受けた利益が金銭以外のものである場合の利益が現に存する額は、次のイによって算定した額からロによって算定した額を控除した額による。ただし、その額が、105《親族その他の特殊関係者の責任の限度》により算定して受けた利益の額を超えるときは、その受けた利益の額を限度とする(以下(2)においても同様とする。)(徴基通39条関係12参照)。
    • イ 受けたものの価額の算定は、次による。
      • (イ) 受けたものがそのまま現存する場合には、納付通知書を発する時の現況による受けたものの価額を算定する。この場合において、その価額の算定が最近時においてなされているときには、便宜それによることとして取り扱って差し支えない(以下(2)のニまでにおいて同じ。)。
        • (注) 受けたものから生じた果実(民法88条参照)は、現に存する利益の額には加えない。ただし、その果実が受益財産の一部となっている場合(例えば、みかんの木の贈与を受けた場合においてみかんが成熟し、木に付着しているとき。)には(ロ)により計算することに留意する。
      • (ロ) 受けたものが加工等により価額が増加した場合には、納付通知書を発する時の現況によるそのものの価額からそのものの価額を増加させるために要した費用(その金額が具体的に確定している未払費用を含む。)を控除した額を算定する。
        • (注) この場合の費用は、必要費(維持、修繕費)及び有益費(改良費等)のいずれであるかを問わないことに留意する。
      • (ハ) 受けたものについて、その後譲受人が設定等をした地上権等の用益物権、賃借権、抵当権等がある場合には、納付通知書を発する時の現況による受けたものの価額に、用益物権等の設定等に伴い得た利益(例えば、権利金、礼金、賃貸料等)のうち現に存するものの額を加え、用益物権等の設定等に伴い要した費用(例えば、契約の費用等)を控除した額を算定する。
         なお、「現に存するものの額」の算定は、その「得た利益」が受けた利益に当たるものとして、その種類に従い、それぞれ(1)から(4)までに準じて行う。
      • (ニ) 受けたものの全部又は一部が売買、贈与、毀損、盗難、火災等により現存しない場合には、納付通知書を発する時における残存する財産の価額に、現存しないこととなったことに伴い得た利益(例えば、売却代金、保険金、共済金、損害賠償請求権等)のうち現に存するものの額を加え、その利益を得るために要した費用(例えば、売買の費用、当該保険料、損害賠償請求のための通信費、交通費等)を控除した額を算定する。
         なお、「現に存するものの額」の算定は、(ハ)のなお書と同様である。

        (注)

        1. 1 利益を得るために要した費用は、現実に支払ったものに限らず、未払いのもの(具体的に金額が確定しているものに限る。)も含むことに留意する。
        2. 2 受けたものに自己の固有財産を加えたものを譲渡し、他の財産を取得した場合には、納付通知書を発する時の現況による取得した財産の価額に、譲渡した財産の総額のうち受けたものの価額(譲渡時の価額)が占める割合を乗じた額が、上記の「現存しないこととなったことに伴い得た利益のうち現に存するものの額」に当たることに留意する。
    • ロ イによって算定した額から控除するのは、次に掲げるものである。
      • (イ) そのものを譲り受けるために支払った対価の額
         対価の額が金銭で支払われた場合は、無償譲渡がされた時におけるその金額により、その他の財産の場合には、その時の価額による。
         また、この対価は、納付通知書を発しようとする時までに現実に支払われているものに限らず、その金額が具体的に判明している未払分についても、原則として控除するものとして取り扱う。
        • (注) 受けたものが、担保権付財産である場合に、譲受人が当該債務の引受けをしているとき又は実質的にその引受けがあったと認められるときを除き、当該債務を考慮しない(昭和45.2.24東京地判)。
      • (ロ) そのものの譲受けのために支払った費用及びこれに類するもののうち、そのものの譲受けと直接関係のあるものの額(例えば、契約に要した費用、贈与税、不動産取得税、登録免許税等(これらの租税に係る附帯税を除く。)、源泉徴収された所得税等があるが、保管料、譲受人に課された固定資産税、その譲受けに基因して課された市町村民税等はこれに当たらない(昭和51.10.8最高判参照)。)
        • (注) 納付通知書を発する時までに支払われていない費用及びこれに類するものの処理は、(イ)の対価の場合と同様である。
      • (ハ) そのものを譲り受けたことを直接の理由とする特別の消費(例えば、そのものを譲り受けたことを直接の理由として浪費した場合)及びこれに類する財産の減少の額(例えば、そのものを譲り受けたことを直接の理由として他のものを他人に贈与した場合)
         なお、減少した財産の額は、無償譲渡等の処分がされた時の価額による。
  3. (2) 受けた利益が金銭である場合
  4. 受けた利益が金銭である場合の現に存する利益の額は、受けた金銭の額から、(1)のロに掲げる額を控除したものによる。この場合には、次の事項に留意する(徴基通39条関係13参照)。
    • イ 算定した利益の額は、現に存するものと推定されること(明治39.10.11大判参照)。したがって、受けた利益が金銭である場合には、ハに掲げる事項等が明らかである場合を除き、現存についての特別の調査はする必要がないこと。
    • ロ 受けた金銭が特定されている間(例えば、贈与を受けた金銭を封筒に入れて封をしておいた場合)にその全部又は一部について喪失、盗難等により現存しないこととなった事実が証明されたときは、算定した額から現存しないこととなった額を控除すること。この場合においては、原則として書面によりその旨を証明させること。
    • ハ 金銭を受けたことを直接の理由として特別に財産を取得した場合(例えば、金をやるから土地を買っておけと言われ、金銭の贈与を受けて土地を購入した場合)には、算定した額からその取得に要した金銭の額を控除したものに、その取得した財産のうち現に存するものの額((1)のイの(ハ)のなお書参照)を加え、現に存する利益の額を算定すること(平成24.3.8名古屋地判参照)。
    • ニ 受けた金銭と自己の固有財産と合わせて財産を取得した場合には、納付通知書を発する時の現況による取得した財産の通常の時価に、その取得に要した財産の総額のうち受けた金銭の額が占める割合を乗じて計算した額が、ハの「現に存するものの額」に当たるものとすること。
  5. (3) 受けた利益が債務の免除である場合
  6. 受けた利益が債務の免除である場合には、債務者の支払能力、弁済期等を考慮し、その債権を換価する場合と同様に、その債務が免除された時のその債権の価額を算定し、その算定された額を(2)の「受けた金銭の額」に当たるものとして、現に存する利益の額を定める(徴基通39条関係14参照)。
     なお、この場合において、対価及び費用があるときは(1)のロに掲げる額を控除したものが現に存する利益の額となる。
  7. (4) 受けた利益が地上権の設定等である場合
  8. 受けた利益が地上権等の用益物権の設定、賃借権の設定、抵当権等の担保権の設定等である場合には、(1)に準じて現に存する利益の額を定める。
     この場合において、受けた利益が抵当権等の担保権の設定である場合には、物上保証をした者(滞納者)に通常支払われる保証料の額(信用保証協会の保証料を参考にする。)を基礎として、受けた利益の額を算定するものとして取り扱う(徴基通39条関係15参照)。

    (注)

    1. 1 抵当権等の担保権が実行された場合には、滞納者である物上保証人の有する求償権(民法351条、372条、462条等参照)を差し押さえることができることに留意する。
    2. 2 強制換価手続(徴収法2条12号)により換価した場合において、その買受人に対抗できない用益物権の設定等は、原則として「受けた利益」には当たらないことに留意する。

(親族その他の特殊関係者の責任の限度)

105 無償譲渡等の処分により受けた利益の額の計算は、(1)によって算定した額から、(2)によって算定した額を控除した額による(徴基通39条関係16の(1)参照)。
 なお、無償譲渡等の処分後において生じた事情、例えば受けた利益が滅失等により現存しない場合、受けた財産について費用を支出した場合、受けた財産に用益物権、担保権、賃借権等を設定した場合、受けた財産から生じた果実等がある場合等であっても、これらの事情は考慮しないことに留意する(徴基通39条関係16の(2)参照)。

  1. (1) 次により、それぞれの価額を算定する。
    • イ 受けた利益が金銭であるときは、その額とする。
    • ロ 受けた利益が金銭以外のものであるときは、無償譲渡等の処分がされた時の現況によるそのものの価額とする。
       なお、受けた利益が担保権付財産である場合の処理については、104の(1)のロの(イ)の(注)《受けた利益が金銭以外のものである場合》参照。
    • ハ 受けた利益が債務の免除であるときは、債務者の支払能力、弁済期等を考慮し、換価する場合に準じて算定したその債務が免除された時の現況によるその債権の価額とする。
    • ニ 受けた利益が地上権の設定等であるときは、その設定等がされた時の現況によるその地上権等の価額とする。
  2. (2) 104の(1)のロの(イ)及び(ロ)によって算定した額

第二次納税義務関係事務提要主要項目別目次