第7章 事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務

第2節 第二次納税義務を負う者

(第二次納税義務を負う者)

94 第二次納税義務を負う者は、納税者から事業の譲渡を受けた生計を一にする親族その他の特殊関係者である(徴収法38条)。

(生計を一にする親族その他の特殊関係者)

95 生計を一にする親族その他の特殊関係者とは、次に掲げる者をいう(徴収令13条1項)。

  1. (1) 納税者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)その他の親族で、納税者と生計を一にし、又は納税者から受ける金銭その他の財産により生計を維持しているもの
     なお、これらの者については、次に留意する。
    • イ 親族とは、民法第725条《親族の範囲》に規定する親族のうち六親等内の血族及び三親等内の姻族である(徴基通第38条関係3)。
    • ロ 生計を一にするとは、91の(1)のイの(イ)《生計を一にする者》と同様である(徴基通第38条関係4)。
    • ハ 生計を維持しているとは、給付を受けた金銭その他の財産及びその金銭その他の財産の運用によって生ずる収入を日常生活の資の主要部分(おおむね2分の1以上とする。)としていることをいう(徴基通第38条関係5)。
  2. (2) (1)に掲げる者以外の納税者の使用人その他の個人で、納税者から受ける特別の金銭その他の財産により生計を維持しているもの
     なお、納税者から受ける特別の金銭とは、給料、俸給、報酬、売却代金等の役務又は物の提供の対価として受ける金銭以外の金銭で、対価なく又はゆえなく対価以上に受けるものをいい、また、「その他の財産」についても、おおむね、これと同様である(徴基通第38条関係6)。
  3. (3) 納税者に特別の金銭その他の財産を提供してその生計を維持させている個人((1)に掲げる者を除く。)
     なお、財産を提供している場合には、財産を譲渡している場合のほか、賃貸等により利用させている場合も含まれる(徴基通第38条関係7)。
  4. (4) 納税者が法人税法第67条第2項《特定同族会社の特別税率》に規定する会社に該当する会社(以下この節において「被支配会社」という。)である場合には、その判定の基礎となった株主又は社員である個人及びその者と(1)から(3)までのいずれかに該当する関係がある個人
     なお、この場合において、納税者が被支配会社であるかどうかの判定については、法人税法の規定により被支配会社であるかどうかの判定を行うときの取扱いと同様の方法により判定するものとする。
  5. (5) 納税者を判定の基礎として被支配会社に該当する会社
     なお、この場合における被支配会社の判定は(4)と同様である。
  6. (6) 納税者が被支配会社である場合において、その判定の基礎となった株主又は社員(これらの者と(1)から(3)までに該当する関係がある個人及びこれらの者を判定の基礎として被支配会社に該当する他の会社を含む。)の全部又は一部を判定の基礎として被支配会社に該当する他の会社
     なお、「被支配会社に該当する他の会社」とは、具体的には次に掲げる会社をいう(徴基通第38条関係8)。
    • イ 下図のA1、A2、B1、B2、C1、C2、D1及びD2
    • ロ 下図のA、A1、B、B1、C、C1、D及びD1の全部又は一部を判定の基礎として被支配会社に該当する会社
       例えば、次に掲げる会社が該当する。
      • (イ) A、Bを判定の基礎として被支配会社に該当する会社
      • (ロ) C、D1を判定の基礎として被支配会社に該当する会社
      • (ハ) B1、C1を判定の基礎として被支配会社に該当する会社

被支配会社に該当する他の会社の図

(注)

  1. 1 上図のうちA(個人の場合に限る。)、B、C及びDは、徴収令第13条第1項第4号《納税者の特殊関係者の範囲》の特殊関係者に該当する。
  2. 2 徴収令第13条第1項第6号かっこ書《納税者の特殊関係者の範囲》のうちの前者の「これらの者」とは上図のAをいい、後者の「これらの者」とは上図のA、B、C及びDをいう。
  3. 3 徴収令第13条第1項第6号かっこ書《納税者の特殊関係者の範囲》の「被支配会社に該当する他の会社」とは、上図のA1、B1、C1及びD1をいう。

(生計を一にする親族その他の特殊関係者の調査)

96 生計を一にする親族その他の特殊関係者であるかどうかの調査は次による。

  1. (1) 納税者の配偶者その他の親族であるかどうかは、戸籍簿若しくは住民票又はこれらの謄本等により確認する。ただし、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者であるかどうかについては、実地調査により確認する。
  2. (2) 納税者と生計を一にしているかどうかは、実地調査により確認する。
     また、納税者から受ける金銭その他の財産により生計を維持しているかどうかについては、帳簿書類等によりその事実を確認することとするが、帳簿書類等によってその事実が確認できないときは、納税者又は当該者に質問してその事実を確認し、必要に応じ質問てん末書等を作成しておく。
  3. (注) 納税者から受ける金銭その他の財産により生計を維持している場合とは、例えば、次に掲げる場合等をいうことに留意する。
    1. 1 納税者の事業から生ずる製品の販売を任され、その一部又は販売代金の一部を報酬として受け、これにより生計を維持している場合
    2. 2 納税者の営む事業の使用人として納税者から給料を受け、これにより生計を維持している場合
    3. 3 納税者所有の不動産の管理を任され、その地代等の収入の全部又は一部を報酬として受け、これにより生計を維持している場合
    4. 4 納税者から生計費を受け、これにより生計を維持している場合
  4. (3) 納税者に特別の金銭その他の財産を提供して生計を維持させている個人であるかどうかの調査については、(2)に準ずる。
  5. (4) 被支配会社等の調査については、72《同族会社に該当するか否かの調査》に準ずる。

(生計を一にする親族その他の特殊関係者の判定時期)

97 生計を一にする親族その他の特殊関係者に該当するかどうかの判定は、納税者がその事業を譲渡した時の現況による(徴収令13条2項)。したがって、その後離婚、解雇等によって生計を一にする親族その他の特殊関係者に該当しないこととなっても、徴収法第38条の規定が適用されることに留意する(徴基通第38条関係1)。
 なお、「事業を譲渡した時」の判定は、原則として、譲渡契約書等において当事者が事業譲渡の効力発生時として定めた時による。ただし、この判定に当たっては、事業の譲渡の意義(93の(1)のハの(イ)《事業の譲渡の意義》参照)を踏まえ、譲渡人が有機的一体として機能する財産によって営んでいた営業的活動を譲受人に受け継がせたのがいつかという観点から、事業譲渡の有無の調査に当たり収集した資料(93の(1)のハの(ハ)《事業譲渡の有無の調査》参照)、不動産登記簿等の公簿における所有権移転の登記年月日、取引先に対する事業譲渡の通知年月日等、客観的な資料を参考として、当事者が事業譲渡の効力発生時として定めた時と異なる時をもって「事業を譲渡した時」と判定すべき場合があることに留意する。
(注) 事業譲渡契約において定められた効力発生日以後に株主総会の承認決議があった場合(93の(1)のハの(ロ)のB参照)における「事業を譲渡した時」は、その承認決議があった時を基準として判定する(民法119条参照)。

(財産分与として配偶者に事業譲渡がされた場合)

98 離婚による財産分与(民法768条、771条)として配偶者に事業譲渡がされた場合には、次により処理する。
 なお、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者が、その事実を解消し、財産の供与をした場合においても、同様に取り扱うものとする。

  1. (1) 財産分与としての事業譲渡が家庭裁判所により定められている場合には、徴収法第38条の規定を適用しない。
  2. (2) 財産分与としての事業譲渡が当事者の協議により定められた場合において、事業譲渡が財産分与として相当である場合には、徴収法第38条の規定を適用しない。
     なお、事業譲渡が財産分与として相当であるかどうかについては、婚姻生活中に得た財産状況、相手方の扶養料、子の養育費、離婚有責者の損害賠償等を考慮した上で、社会通念上財産分与として相当であるか否かにより判断するものとする。

第二次納税義務関係事務提要主要項目別目次