第7章 事業を譲り受けた特殊関係者の第二次納税義務

第1節 成立要件

(成立の要件)

93 次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、納税者の譲渡した事業に係る国税につき、94《第二次納税義務を負うべき者》に掲げる者は第二次納税義務を負う(徴収法38条)。

  1. (1) 国税の法定納期限の1年前の日後に納税者が生計を一にする親族その他の特殊関係者(95参照)に事業を譲渡したこと。
    • イ 国税の法定納期限の1年前の日
    • 事業譲渡が滞納に係る国税の法定納期限の1年前の応当日以前にされている場合は、第二次納税義務を負わない。この場合の応当日については、通則法第10条第2項《期限の特例》の規定は適用されない(徴基通第38条関係15)。
       なお、法定納期限の1年前の応当日後にされているかどうかの判定は、次により行う。
      • (イ) 事業譲渡の時は、現実に事業が譲渡された時によるものとして取り扱う。
      • (ロ) 現実に事業が譲渡された時の判定については、97のなお書と同様である。
    • ロ 生計を一にする親族その他の特殊関係者の判定については、97《生計を一にする親族その他の特殊関係者の判定時期》により行う。
    • ハ 事業の譲渡
      • (イ) 事業の譲渡の意義
         「事業の譲渡」とは、納税者が一個の債権契約で、一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部を納税者の生計を一にする親族その他の特殊関係者に譲渡することをいうが、一個の債権契約によらないものであっても、社会通念上同様と認められるものはこれに該当する。したがって、得意先、事業上の秘けつ又はのれん等を除外して、工場、店舗、機械、商品等の事業用財産だけを譲渡する場合には、事業譲渡には該当しない(徴基通第38条関係9、昭和40.9.22最高判、昭和41.2.23最高判参照)。
         なお、事業譲渡については、次に留意する。
        • A 社員が2人以上ある持分会社にあっては、定款に別段の定めがある場合を除き、事業譲渡につき社員の過半数による決定が必要である(会社法590条2項、650条3項)。
        • B 株式会社にあっては、原則として事業譲渡につき株主総会の特別決議によってその契約の承認を得ることが必要である(会社法467条1項、468条)。

          (注)

          1. 1 一人会社にあっては、招集手続がなくても、1人の株主の意思決定により解散決議をし得る(昭和44.3.18大阪地判、昭和46.6.24最高判参照)ことから、客観的事実(例えば、事業譲渡をした後に廃業しているような場合)に基づき、招集手続がなくても事業譲渡の特別決議があったと認定できる場合には、徴収法第38条の「事業の譲渡」に該当する。また、一人会社と実質的に同様と認められるような株式会社についても、同様である(昭和52.2.14最高判参照)。
          2. 2 株式会社が解散し特別清算をする場合において、清算株式会社が事業譲渡をするときは、裁判所の許可が必要である(会社法536条)。
          3. 3 会社更生法の適用を受けた株式会社が事業譲渡をする場合には、株主総会の特別決議を要せず、更生計画の定めによってすることができる(会社更生法167条2項、210条)。
        • C 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定により事業の譲受けにつき制限を受ける場合がある(同法16条参照)。
        • D 法人の分割(会社法757条、762条参照)によって事業の譲渡が行われた場合についても、徴収法第38条の「事業の譲渡」に該当する。
          • (注) 法人の分割(分社型分割を除く。)による事業の譲渡が行われた場合は、当該分割により事業を承継した法人に対して通則法第9条の3《法人の分割に係る連帯納付の責任》の連帯納付責任を追及することができる。
        • E 財産分与(民法768条、771条)として行われた事業譲渡について、その事業譲渡が財産分与として社会通念上相当と認められる場合には、徴収法第38条の規定を適用しないものとする。
      • (ロ) 事業譲渡につき株主総会の承認決議がない場合の処理
      • 株式会社の事業譲渡につき、株主総会の承認決議がなかった場合((イ)のBの(注)1から3までに掲げる場合を除く。)の処理は、次によるものとする。
        • A 当該事業譲渡は無効である(昭和14.8.31大判)から、徴収法第38条の規定の適用はできない。この場合においては、当該事業譲渡に係る財産を滞納者のものとして差し押さえるとともに、別に代表取締役等に対する損害賠償請求権(会社法423条)の発生の有無につき検討する。
        • B 当該事業譲渡をした後の臨時株主総会等で、その承認決議がされたときは、徴収法第38条の規定を適用して差し支えない。
      • (ハ) 事業譲渡の有無の調査
      • 事業譲渡があったかどうかについては、株主総会等の議事録、譲渡契約書等を調査してその事実を確認する。ただし、これにより難い場合には当事者に質問して、事業譲渡があったかどうかを確認し、必要に応じて質問てん末書等を作成する。
         なお、事業譲渡の内容については、単に工場、店舗、機械、商品等の事業用財産だけを譲渡しただけでは徴収法第38条の規定が適用されないので、得意先、事業上の秘けつ又はのれん等を含むその事業を一体として譲渡したものであるかどうか等をも調査して、その事実を確認する。
        • (注) 商号は営業と共にする場合又は営業を廃止する場合に限り譲渡することができることになっているから(商法15条1項)、事業譲渡の有無の調査に当たっては、商号続用の有無も併せて調査する。
  2. (2) 譲受人が同一又は類似の事業を営んでいること。
    • イ 類似の事業の範囲
       「類似の事業」とは、譲り受けた事業につき重要な事業活動の施設又は態様の変更をその事業内容に加えることなく事業活動が行われているような場合のその譲受け後の事業をいう(徴基通第38条関係11)。
    • ロ 同一又は類似の事業の調査
    • 同一又は類似の事業であるかどうかは、実地調査により確認する。
    • ハ 同一又は類似の事業の判定の時期
    • 同一又は類似の事業かどうかの判定の時期は、納付通知書を発する時の現況によるものとする(徴基通第38条関係12参照)。
  3. (3) 納税者が譲渡した事業に係る国税を滞納していること。
  4. 事業に係る国税の範囲及びその調査については、90の(3)のイ及びハ《事業に係る国税の範囲等》と同様である。
  5. (4) 滞納者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税の額に不足すると認められること。

(注) 徴収不足かどうかについての判定及び徴収不足の判定時期等については、21から24まで《徴収不足の判定》参照。

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