第6章 共同的な事業者の第二次納税義務

第1節 成立要件

(成立の要件)

90 次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、納税者のその事業に係る国税につき、91《第二次納税義務を負うべき者》に掲げる者は第二次納税義務を負う(徴収法37条)。

  1. (1) 納税者の配偶者等(91参照)が、納税者の事業の遂行に欠くことのできない重要な財産(取得財産を含む。以下この章において「重要財産」という。)を所有していること。
    • イ 納税者の事業の範囲
    • 納税者の事業については、その内容を問わない。したがって、例えば納税者が個人である場合には、その事業は所得税法第27条第1項《事業所得》に規定する事業の範囲に限られない。
      (注) 通則法第9条《共有物等に係る国税の連帯納付義務》に規定する「共同事業」に係る国税については、同条の規定が適用され、この章に定める第二次納税義務の対象とならないことに留意する。
    • ロ 重要財産
      • (イ) 重要財産の判定
      • 重要財産であるかどうかは、納税者の事業の種類、規模等に応じて判定すべきであるが、一般には、その判定の対象となる財産がないものと仮定した場合に、その事業の遂行が不可能になるか又は不可能になるおそれがある状態になると認められる程度に、その事業の遂行に関係を有する財産をいう(平成25.4.24東京高判参照)。
         なお、91《第二次納税義務を負うべき者》に掲げる者が2人以上いる場合には、納税者の事業に供しているこれらの者が有する財産を一体として考え、それが重要財産であるかどうかを判定する(徴基通第37条関係1)。
        (注) 「重要財産」とは、例えば、次に掲げるものをいうことに留意する。
        1. 1 材木の小売業を営む納税者(同族会社)が、その社員(代表取締役)から店舗を借り受けている場合において、当該店舗が唯一の営業所であり、かつ、納税者の事業遂行に寄与した度合いが極めて大きかったときのその店舗(昭和37.12.25東京地判)
        2. 2 清涼飲料の製造業を営む納税者が91《第二次納税義務を負うべき者》に掲げる者から、機械設備はもとよりビンに至るまで借り受けている場合におけるその財産
        3. 3 織物業を営む納税者が、91《第二次納税義務を負うべき者》に掲げる者から、事業の遂行に必要な大部分の織機その他の機械設備を借り受けている場合又はその事業に欠くことのできない特別の専用機械設備を借り受けている場合のその財産
      • (ロ) 重要財産の現況調査等
      • 重要財産については、あらかじめ滞納処分の場合の財産調査に準じてその現況を調査するが、特にその財産が滞納に係る国税の課税期間中において事業に供されていたかどうかについて念査する(昭和43.7.22松山地判参照)。
        (注) 取得財産の範囲及び調査については、81《異動により取得した財産の範囲》、82《異動により取得した財産の調査》及び83《基因して取得した財産の範囲と調査》参照。
      • (ハ) 重要財産が滞納処分のできない財産である場合
      • 重要財産には、滞納処分ができる財産だけでなく、滞納処分ができない財産も含まれる(徴基通第37条関係1のなお書参照)が、この場合には、次により処理する。
        • A 重要財産が滞納処分のできる財産と滞納処分のできない財産とで構成されている場合には、原則として滞納処分のできる財産を限度として第二次納税義務を負わせるものとする。
        • B 重要財産が滞納処分のできない財産のみである場合には、重要財産を所有する者に対しては原則として第二次納税義務を負わせないものとする。
  2. (2) 重要財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっていること。
    • イ 重要財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっている場合
       「重要財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっている場合」とは、重要財産から直接又は間接に生ずる所得が納税者の所得となっている場合及び所得税法その他の法律の規定又はこれらの規定に基づく処分により納税者の所得とされる場合をいうものとし、例えば次に掲げる場合をいう(徴基通第37条関係2、平成25.4.24東京高判)。
      • (イ) 所得税法第56条《事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例》の規定により、納税者と生計を一にする配偶者その他の親族がその納税者の経営する事業で不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべきものから対価の支払を受ける場合でその対価に相当する額が納税者の所得とされる場合
      • (ロ) 法人税法第132条《同族会社等の行為又は計算の否認》の規定により、同族会社の判定の基礎となった株主又は社員の所得が同族会社の所得とされる場合
      • (ハ) 同族会社の判定の基礎となった株主又は社員の所有する財産をその同族会社が時価より低額で賃借しているため、その時価に相当する借賃の金額とその低額な借賃の金額との差額に相当するものが同族会社の実質的な所得となっている場合(昭和48.10.15広島高(岡山支)判参照)
      • (ニ) 納税者と生計を一にする配偶者その他の親族が所有する公債、社債又は無記名の貸付信託の受益証券について、納税者が利子、配当、利益又は収益の支払を受けている場合
      • (ホ) 納税者の事業の収支計算では損失が生じているが、重要財産から直接又は間接に生ずる収入が納税者の収益に帰属している場合
    • ロ 重要財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっているかどうかの調査
    • 重要財産に関して生ずる所得が納税者の所得となっているかどうかは、賦課担当部門における課税決議書、納税申告書、所得調査カード等の賦課関係資料により確認する。
       この場合においては、その事績を滞納処分票等に明確に記録する。
  3. (3) 納税者が重要財産の供されている事業に係る国税を滞納していること。
    • イ 事業に係る国税の範囲
      • (イ) 重要財産の供されている事業に係る国税が、一つの国税の一部である場合のその事業に係る国税の額の算定は、76の(1)のイ及びロ《実質所得者課税の原則等の規定により課された国税》と同様である(徴基通第37条関係3)。
         なお、重要財産が供されている事業に係る国税は、その納税者の事業に係る国税のうち、その重要財産が供されていた期間に対応する部分の国税に限るものとし(平成25.4.24東京高判参照)、また、納税者の事業に係る国税の課税期間の中途で、徴収法第37条第1号又は第2号に掲げる者でなくなったとき(逆にこれらの者になったときを含む。)の事業に係る国税は、これらの者であった期間に対応する国税の額に限るものとする。
      • (ロ) この場合の事業に係る国税とは、納税者が同族会社であるときは全ての国税を、個人であるときは次に掲げる国税を、それぞれいうものとする(徴基通第37条関係4)。
        • A 所得税のうち所得税法第27条《事業所得》の事業所得に係るもの
        • B 所得税(源泉所得税を含む。)のうち、Aの事業所得に係る所得税以外の所得に係る所得税については、これらのうち事業に係るもの(例えば、納税者が小売業を経営している場合において、その事業に係る所得と譲渡所得とがある場合には、事業所得に係る所得税を、また小売業の従業員に係る源泉所得税と家事使用人に係る源泉所得税とがある場合には、その小売業の従業員に係るもの)
        • C 消費税等(消費税を除く。)については、重要財産が供されている事業に属する物品に係るもの
        • D 消費税
        • E 登録免許税、再評価税、地価税及び印紙税については、事業に係るこれらの国税
    • ロ 重要財産の供与の事実についての判定時期
    • 重要財産供与の事実の存否については、滞納国税の基礎となった所得発生の時を基準として判定する。したがって、それ以後納付通知時までに、その事実がなくなったとしても、この章の第二次納税義務には影響がない(昭和37.12.25東京地判参照)。
    • ハ 事業に係る国税の調査
       事業に係る国税の調査は、(2)のロと同様である。
  4. (4) 滞納者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税の額に不足すると認められること。

(注) 徴収不足かどうかについての判定及び徴収不足の判定時期等については、21から24まで《徴収不足の判定》参照。

第二次納税義務関係事務提要主要項目別目次