第4章 実質所得者課税の原則等の第二次納税義務

第1節 成立要件

(成立の要件)

76 次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、実質所得者課税の原則等(所得税法12条若しくは158条、法人税法11条又は消費税法13条に規定するものをいう。以下この章において同じ。)の規定により課された国税につき、77《第二次納税義務を負うべき者》に掲げる者は第二次納税義務を負う(徴収法36条1号、2号)。

  1. (1) 納税者が実質所得者課税の原則等の規定により課された国税を滞納したこと。
    • 所得税法第12条《実質所得者課税の原則》、法人税法第11条《実質所得者課税の原則》又は消費税法第13条《資産の譲渡等又は特定仕入れを行った者の実質判定》の規定により課された国税は、その所得税、法人税又は消費税が、申告、更正又は決定のいずれにより課されたかを問わないが(徴基通第36条関係4)、所得税法第158条《事業所の所得の帰属の推定》の規定により課された国税は、通則法第24条から第26条まで《更正、決定、再更正》の規定による更正又は決定に係る所得税に限られ、申告に係る所得税はこれに該当しない(徴基通第36条関係5)。
       また、消費税法第13条の規定により課された国税(同法2条1項8号《定義》に規定する貸付けに係る部分に限る。)は、同法第13条の規定により課された消費税のうち、事業として対価を得て行われる資産の貸付けに基因して課されたものに限られる(徴基通第36条関係6)。
       なお、実質所得者課税の原則等の規定により課された国税については、次に留意する。
    • イ 実質所得者課税の原則等の規定により課された国税が一つの国税の一部である場合の国税の額の算定方法
    • 実質所得者課税の原則等の規定により課された国税が、一つの国税(一つの申告又は更正若しくは決定の通知によって国税の額が確定したものをいう。以下同じ。)の一部であるときは、その国税の額の算定は次による(徴収令12条1項、徴基通36条関係2の(1)及び(2))。
       A=B×((C−D)/C)
      A 実質所得者課税の原則等の規定により課された国税の額
      B 国税の額
      C 国税の課税標準額又は納付すべき消費税の額
      D 実質所得者課税の原則等の規定により課された国税がないものとした場合における国税の課税標準額又は納付すべき消費税の額

      (注)

      1. 1 「課税標準額」とは、一つの国税の額に対応する課税標準額(例えば、国税の額が、更正によるものであるときは、更正により増加した部分の課税標準額)をいうことに留意する。
      2. 2 過少申告加算税、無申告加算税又は重加算税について計算する場合には、課税標準額又は納付すべき消費税の額は、これらの加算税の計算の基礎となった国税の課税標準額又は納付すべき消費税の額をいうことに留意する。
    • ロ 国税の一部が消滅した場合の処理(徴基通第36条関係2の(3)から(5)まで)
      • (イ) 国税の一部につき納付又は充当があったときは、その納付又は充当は、実質所得者課税の原則等の規定により課された国税以外の部分の金額についてされたものとする(徴収令12条2項)。
      • (ロ) 国税の一部につき免除があったときは、実質所得者課税の原則等の規定により課された国税以外の部分の金額について免除されたものとする(徴収令12条2項)。ただし、その免除が、実質所得者課税の原則等の規定により課された国税についてされたことが明らかであるときは、その部分について免除されたものとする。
      • (ハ) 国税の一部につき更正の取消し、軽減等があり、税額が減少した場合における実質所得者課税の原則等の規定により課された国税の額の計算は、(ロ)に準ずる。
    • ハ 実質所得者課税の原則等の規定により課された国税の調査
       滞納国税が実質所得者課税の原則等の規定により課されたものであるかどうかについては、課税決議書等により確認した上で決定するものとする。この場合においては、その事績を滞納処分票等に明確に記録する。
  2. (2) 滞納者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税の額に不足すると認められること。

(注) 徴収不足かどうかについての判定及び徴収不足の判定時期等については、21から24まで《徴収不足の判定》参照。

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