第3章 同族会社の第二次納税義務

第3節 第二次納税義務の限度

(責任の限度)

74 同族会社から徴収することができる金額は、主たる納税者が有するその会社の株式等の価額を限度として、主たる納税者の滞納国税の全額である。

(株式等の価額の算定)

75 株式等の価額の算定等については、次により行う。

  1. (1) 主たる納税者の有する株式等の範囲
    • 主たる納税者の有する株式等のうち、当該滞納に係る国税の法定納期限(国税に関する法律の規定による国税の還付金の額に相当する税額を減少させる修正申告又は更正により納付すべき国税並びに当該国税に係る附帯税及び滞納処分費については、その還付の基因となった申告、更正又は決定があった日とし、過怠税については、その納税義務成立の日とする(徴収法35条1項)。以下同じ。なお、徴基通第35条関係8、9参照。)の1年前の応当日以前に取得した株式等は、第二次納税義務の限度を算定する場合に除外する。
       この場合の応当日については、通則法第10条第2項《期限の特例》の規定は適用されない(徴基通第35条関係10)。
      (注) 滞納者が租税特別措置法第70条の7第1項《非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除》又は第70条の7の5第1項《医療法人の持分に係る経済的利益についての贈与税の納税猶予及び免除》の規定による納税の猶予を受けた贈与税を滞納している場合には、当該贈与税に係る徴収法第35条の規定による第二次納税義務の適用に当たっては、当該贈与税に係る贈与の前に取得したものが第二次納税義務の対象から除かれることに留意する(租税特別措置法70条の7第14項7号、70条の7の5第10項6号)。
       なお、「取得」の時期については、次に留意する。
    • イ 相続等があった場合における株式等の取得の時期は、次による(徴基通第35条関係11)。
      • (イ) 相続により承継された国税と相続により承継した株式等との関係においては、被相続人が株式等を取得した日
      • (ロ) 相続人の固有の国税と相続により承継した株式等との関係においては、相続があった日
      • (ハ) 合併により承継された国税と合併により承継した株式等との関係においては、合併により消滅した法人が株式等を取得した日
      • (ニ) 合併後存続する法人又は合併により設立した法人の固有の国税と合併により承継した株式等との関係においては、合併のあった日
      • (ホ) 滞納者が、合併後存続する法人又は合併により設立した法人の株式等を有する場合において、その株式等の取得が合併により消滅した法人の株式等を有していたことによる場合は、合併があった日
      • (ヘ) 分割承継法人の固有の国税と当該分割をした法人から取得した株式等との関係においては、分割があった日
      • (ト) 分割承継法人の通則法第9条の3《法人の分割に係る連帯納付の責任》の規定による連帯納付の責任に係る国税と当該分割をした法人から取得した株式等との関係においては、その分割をした法人が株式等を取得した日
      • (チ) 分割承継法人の通則法第9条の3《法人の分割に係る連帯納付の責任》の規定による連帯納付の責任に係る国税と当該分割に係る他の分割をした法人から取得した株式等との関係においては、分割があった日
    • ロ 株式等の取得の調査については、次に掲げるものを除き、72《同族会社に該当するか否かの調査》に準じて行う。
      • (イ) 「相続があった日」については、原則として、戸籍簿により確認する(戸籍法13条、戸籍法施行規則24条、21条)。
      • (ロ) 「合併があった日」については、商業登記簿により確認する。
  2. (2) 株式等の価額の計算及びその時期
    • イ 株式等の価額は、次により算定する(徴収法35条2項)。
       A=E×((B−C)/D)
      A 滞納者の有する株式等の価額(第二次納税義務の限度となる株式等の価額)
      B その会社の資産の総額
      C その会社の負債の総額
      D その会社の株式等の数
      E 滞納者の有する株式等の数
    • ロ イの計算をする場合の「資産の総額」及び「負債の総額」は、納付通知書を発する日における貸借対照表又は財産目録を参考とし、債権の回収可能性や債務の発生の確実性等を考慮して、その日における会社の資産及び負債の価額によるものとする(昭和31.3.19高知地判、昭和31.8.16高松高判参照)。
       なお、納付通知書を発する日における会社の貸借対照表又は財産目録がない場合において、直前の決算期(中間決算を含む。)からその納付通知書を発する日までの間に、会社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす事象の生起もなく、また、資産及び負債について著しい増減がないなど、特に徴収上支障がない限り、その直前の決算期の貸借対照表、財産目録又は法人税の決議書を参考として行っても差し支えない(徴基通第35条関係13参照)。
       おって、上記の会社財産には、簿外資産及び簿外負債を含めるものとし、その範囲については、賦課関係資料、実地調査等により確認できるものにとどめるものとして取り扱う。
      (注) 上記の負債には、当該納付通知に係る第二次納税義務は含めないが、会社固有の納税義務は含めることに留意する。
    • ハ イの出資の数については、現物、労務又は信用をもって出資の目的とした場合には、出資の評価についての定款による価額又は評価の標準によって、主たる納税者の有する出資の価額を計算し、その価額を現金による出資の価額と同様に取扱って、出資の数を計算するものとする(徴基通第35条関係14)。
      (注) 持分会社の場合は、社員の出資の目的及び評価の標準が、定款の絶対的記載事項とされている(会社法576条1項6号)。

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