第3章 同族会社の第二次納税義務

第1節 成立要件

(成立の要件)

69 次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、同族会社(主たる納税者を判定の基礎となる株主又は社員として選定した場合に、法人税法2条10号《同族会社の定義》に規定する会社に該当する会社をいう。以下この章において同じ。)に対し、第二次納税義務を負わせることができる(徴収法35条1項)。

  1. (1) 主たる納税者が同族会社の株式又は出資(以下この章において「株式等」という。)を有していること。
     この場合において、持分会社の出資につきその出資義務の履行がされていないときは、上記の出資に含めない取扱いとする。

    (注)

    1. 1 「会社」とは、株式会社又は持分会社をいい(会社法2条1号)、相互会社(保険業法2編2章2節参照)は含まれないことに留意する(徴基通第35条関係1)。
    2. 2 「出資」とは、持分会社の持分をいう(徴基通第35条関係3)。
  2. (2) 主たる納税者が有する株式等につき次に掲げる事由があること。
    • イ 差し押さえた株式等を再度換価に付してもなお買受人がないこと(徴収法35条1項1号)。
       差し押さえた株式等について2回以上公売期日等を開いても買受人がないことが必要である。
       なお、上記の「買受人がない」とは、買受希望者が全くない場合はもちろん、入札等をしたが最高価申込者とならなかったため売却決定を受けた者がない場合、売却決定は受けたが買受代金を納付しなかった等のためその売却決定が取り消された場合等をいうことに留意する(徴基通第35条関係5参照)。
    • ロ 差し押さえた株式等の譲渡につき法律若しくは定款に制限があること又は株券の発行がないため譲渡することにつき支障があること(徴収法35条1項2号)。
      • (イ) 法律等に譲渡制限がある場合
        • A 持分会社の持分の譲渡制限
           持分会社の持分は、会社法第585条《持分の譲渡》の規定により、他の社員の全員(業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員の全員)の承諾がなければ譲渡することができないから、例えば、換価前に社員のうち1人(業務を執行しない有限責任社員については業務を執行する社員のうち1人)でも換価による持分の譲渡に反対の意思表示をした場合には、徴収法第35条第1項第2号に該当することに留意する(徴基通第35条関係6参照)。
        • B 株式の譲渡制限
           株式会社が、株式の譲渡について当該株式会社の承認を要する旨の制限を定款で定めている場合(会社法107条1項)及び会社法第217条第4項《株券不所持の申出》の規定により株券の発行がされていない場合には、徴収法第35条第1項第2号には該当しない。
      • (ロ) 株券が発行されていない場合
      • 徴収法第35条第1項第2号の「株券の発行がないため、これらを譲渡することにつき支障があること」とは、株券を発行する旨の定款の定めがある株式会社(会社法214条参照)について、株券の作成及び交付がされていないために、株式を差し押さえて換価することにつき支障があることをいう。ただし、合理的な期間内に株券が発行される(会社法215条参照)見込みがあるとき及び株式の申込証拠金領収証等の書面を株券に準じて差し押さえて換価できるとき(徴基通第56条関係15参照)は、徴収法第35条第1項第2号の事由に当たらないものとして取り扱う(徴基通第35条関係7)。
         なお、株券が発行されていない場合には、その株式を差し押さえた上で、その取立権に基づき株券の発行及び交付を請求する。この場合において、指定した期限までに会社が株券を交付しないときは、徴収法第35条第1項第2号に該当する(徴基通第35条関係7)。
      • (ハ) 譲渡制限についての調査
      • 株式等の譲渡制限の調査については、次に留意する。
        • A (イ)のAの場合においては、持分の譲渡に反対する社員について確認した上で、当該社員が換価による持分の譲渡に反対の意思表示をする旨を適宜の書面に記載して提出させるものとする。
        • B (ロ)の株券発行済の有無及び合理的な期間内に株券が発行される見込みの有無については、当該会社に対する聴取り等により確認する。
  3. (3) 滞納者に対して滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税の額に不足すると認められること。

(注) 徴収不足かどうかについての判定及び徴収不足の判定時期等については、21から24まで《徴収不足の判定》参照。

第二次納税義務関係事務提要主要項目別目次