第1章 通則的事項

第6節 物的第二次納税義務に関する留意事項

この節は、物的第二次納税義務(徴収法36条1号及び2号、37条並びに41条1項に規定する第二次納税義務をいう。以下同じ。)について、特に留意すべき事項を定めたものである。

(物的第二次納税義務者に対する滞納処分)

25 物的第二次納税義務者(物的第二次納税義務を負う者をいう。以下同じ。)に対する滞納処分は、当該第二次納税義務の追及の基因となった財産(以下「追及財産」という。)以外のものについては、することができない。ただし、追及財産と他の財産とが一つの財産を構成している場合には、その財産について滞納処分をすることができる(徴基通第32条関係16の(1))。
 なお、追及財産と他の財産とが一つの財産を構成している場合で、かつ、当該財産が不可分物でなく、しかも第三者が有する権利の目的となっていないときは、当該財産に対する差押えの前後を問わず追及財産と他の財産とに分割又は区分するよう勧奨し、その分割又は区分されたもののうち、追及財産の部分について滞納処分を執行するよう努めるものとする。この場合における分割又は区分の勧奨の事績については、滞納処分票等に明確に記録する。

(注) 上記なお書による分割又は区分の勧奨をしたが、なお物的第二次納税義務者が自発的な分割又は区分をしなかった場合においても、徴収職員による分割又は区分はできないことに留意する。

(追及財産と他の財産とに分割又は区分した旨の申出等があった場合の処理)

26 追及財産と他の財産とに分割又は区分されないまま差し押さえた場合において、物的第二次納税義務者から、当該財産を追及財産と他の財産とに分割又は区分した旨及び他の財産の部分の差押えを解除すべき旨の申出が公売期日等の前日までにあったときは、直ちに他の財産の部分の差押えを解除するとともに、既に換価手続を開始していたときは、その手続を中止する(徴基通第32条関係16の(1)のなお書参照)。この場合においては、再公売によらないで新たな公売に付さなければならない。

(追及財産と他の財産とを一つの財産として換価した場合の配当)

27 追及財産と他の財産とを一つの財産として換価した場合の換価代金の処理については、次により取り扱うものとする。
 なお、追及財産とその他の財産とに分割又は区分しないまま換価したときは、その事績を滞納処分票等に明確に記録する(平成20年6月13日付徴徴3−9ほか1課共同「換価事務提要の制定について」(事務運営指針)(以下「換価事務提要」という。)24の(3)なお書参照)。

  1. (1) 追及財産に係る換価代金は、一つの財産の見積価額のうちに占める追及財産の価額の割合を当該売却代金に乗じて計算する(換価事務提要41−2、43、124の(1)参照)。
  2. (2) 当該財産上に配当すべき質権、抵当権等の被担保債権がある場合及び交付要求がされている場合における換価代金の配当については、追及財産と他の財産とに分別することなく、一つの財産に係る換価代金として配当を行う。この場合において、当該財産に関して要した滞納処分費は、その全額を追及財産に係るものとして取り扱う。
     なお、上記の被担保債権は、換価代金のうちに占める追及財産の割合((1)参照)と、他の財産との割合とによって計算されたものからなっているものとして配当する。したがって、追及財産から配当を受ける物的第二次納税義務に係る国税は、(1)により計算した追及財産に係る換価代金から、当該国税に優先する質権、抵当権等の被担保債権のうち追及財産からなるものとして計算した金額を控除した金額の範囲内に限られる。
     上記による配当を計算例によって示せば、次のとおりである。

〔例〕

換価代金 500万円
追及財産の占める割合 5分の3
他の財産の占める割合 5分の2
優先抵当権の被担保債権 100万円

追及財産に係る換価代金の計算

500万円 × (3 / 5) = 300万円

他の財産に係る換価代金の計算

500万円 × (2 / 5) = 200万円

追及財産に係る換価代金から配当する優先抵当権の計算

100万円 × (3 / 5) = 60万円

他の財産に係る換価代金から配当する優先抵当権の計算

100万円 × (2 / 5) = 40万円

物的第二次納税義務に係る国税に配当すべき額

300万円 − 60万円 = 240万円

(3) 追及財産以外の部分に相当する換価代金については、物的第二次納税義務に係る国税に充てることはできないから、(2)により配当した残余の金銭は、原則として(徴基通第129条関係7から9まで参照)当該第二次納税義務者に交付する(徴基通第32条関係16の(1)の(注)参照)。
 なお、第二次納税義務者に交付する金額は、徴収法第129条《配当の原則》の規定による配当手続に準じて行う。

(物的第二次納税義務者が納付する場合)

28 物的第二次納税義務者から納付の申出があった場合の取扱いについては、次に掲げるところによる。

  1. (1) 徴収法第36条第1号若しくは第2号《実質課税額等の第二次納税義務》又は第41条第1項《人格のない社団等の財産の名義人の第二次納税義務》の規定による物的第二次納税義務者が納付する場合には、原則として追及財産の価額にかかわらず、当該第二次納税義務の基因となった主たる納税者の滞納に係る国税が存する限り、当該国税の額に相当する金額を納付しなければならない(徴基通第32条関係16の(2)本文)。
  2. (2) 徴収法第37条《共同的な事業者の第二次納税義務》の規定による物的第二次納税義務については、次によるものとする。
  3. イ 当該第二次納税義務者から納付の申出があった場合における納付すべき金額は、納付の申出があった時の現況の追及財産の価額による。この場合において、追及財産の価額が最近時において算定されており、かつ、その価額により納付させることとしても徴収上支障がないと認められるときは、便宜それによることとして取り扱って差し支えない。
  4. ロ 当該第二次納税義務者がイによる追及財産の価額に相当する金銭を一時に納付した場合で、徴収上特に支障がないと認められるときは、その後は、その第二次納税義務について追及しない取扱いとする(徴基通第32条関係16の(2)のただし書参照)。
     なお、「一時」とは、追及財産の価額に相当する金額を一回に納付することをいうものとするが、当該財産の価額に著しい変動が生じないと見込まれ、かつ、履行が確実であると見込まれる場合には、適宜の分割納付を認めても差し支えない。
(物的第二次納税義務者が還付金等の請求権を有する場合)

29 物的第二次納税義務者が還付金等の請求権を有する場合には、その請求権が追及財産であるときを除き、当該第二次納税義務者の意思に反する充当はしないこととして取り扱う(徴基通第32条関係16の(3))。
 なお、充当についての意思の確認は、適宜の方法により行って差し支えないが、その確認事績は明確にしておくことに留意する。

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