第1章 通則的事項

第5節 徴収不足の判定

この節は、第二次納税義務が主たる納税者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められる場合に限り負わせることができるものであることに照らし、徴収不足かどうかの判定に当たっての留意事項を定めたものである。

(徴収不足の判定)

21 徴収不足の判定は、主たる納税者に帰属する財産で滞納処分により徴収できるもの(第2編第8章の第二次納税義務の適用に当たっては、既に租税条約等(租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(以下「租税条約等実施特例法」という。)第2条第2号に規定する租税条約等をいう。以下同じ。)の規定に基づき、相手国等(同条第3号に規定する相手国等をいう。以下同じ。)に対し、徴収の共助の要請(租税条約等実施特例法第11条の2参照)をしていた場合には、その徴収の共助の要請により徴収できるものを含む。)の価額と主たる納税者の国税の総額(徴収不足の判定時までの延滞税、利子税、滞納処分費及び納期限未到来でも確定している国税を含む。)とを比較して行うが、この判定は、滞納処分を現実に執行した結果に基づいてする必要はない(徴基通第22条関係4、第39条関係1、昭和47.5.25最高判参照)。この場合において、主たる納税者に帰属する財産については、公簿上又は帳簿書類上の財産の任意的な調査に限定することなく、必要に応じて質問・検査又は捜索を行い、その把握に努めるものとする。
 なお、主たる納税者に帰属する財産には、国税につき徴している担保財産で第三者に帰属しているもの及び保証人の保証を含めるものとし、既に課している第二次納税義務(徴収法36条1号及び2号並びに41条1項の場合を除く。)は含めないものとして取り扱う。

(徴収不足の判定時期)

22 徴収不足かどうかの判定は、納付通知書を発する時の現況により行うものとするが(徴基通第22条関係4、第39条関係1、平成27.11.6最高判参照)、その判定が最近時においてされている場合には、便宜それによることとして差し支えない。

(判定事績の記録)

23 徴収不足かどうかの判定をした場合には、その判定事績を滞納処分票等に明確に記録する。

(徴収不足の判定の基礎となる財産の価額の算定)

24 徴収不足の判定の基礎となる財産(21参照)の価額は、平成26年6月27日付徴徴3―7「公売財産評価事務提要の制定について」(事務運営指針)(以下「評価事務提要」という。)に定めるところにより、見積価額(評価事務提要第1章第1節の2《見積価額の考え方》に定める見積価額をいう。以下27において同じ。)に相当する処分予定価額によるものとするが、明らかに徴収不足である場合など、徴収上支障がないと認めるときは概算による価額によっても差し支えない。
 なお、徴収不足の判定の基礎となる財産の価額の算定については、次の事項に留意する(徴基通第22条関係4のなお書、第39条関係1参照)。

  1. (1) 財産について、徴収法その他の法律の規定により主たる納税者の国税に優先する私債権、公課、地方税又は主たる納税者以外の者の国税がある場合には、その優先する債権額に相当する金額をその財産の処分予定価額から控除して財産の価額を算定する。
  2. (2) 徴収法第76条第5項《給与の差押禁止の特例》の規定により主たる納税者の承諾がある場合に限り差押えができる給料等がある場合には、原則として、その承諾が得られないものとしてその財産の価額を算定する。
  3. (3) 財産について、その取立てをすることとされている場合には、換価するものとしてその財産の価額を算定する。
  4. (4) 継続収入に係る債権又は将来生ずべき債権がある場合には、換価するものとしてその債権の価額を算定する(徴基通第62条関係1、平成21.9.29東京高判参照)。
  5. (5) 交付要求に係る財産がある場合には、直ちにその財産が換価されたとした場合において配当を受けることができると認められる金額を基準として、その財産の価額を算定する。
  6. (6) 滞納処分費を要すると認められる場合には、その見込額を控除して財産の価額を算定する。
  7. (7) 保証人の保証については、保証に係る国税の額の範囲内において、保証人に帰属する財産の価額を算定する。
  8. (8) 徴収の共助の要請により徴収できるものについては、相手国等の法令又は行政上の慣行により徴収の共助の要請に係る国税に優先する債権がある場合には、その債権の合計額に相当する金額をその財産の処分予定価額から控除して算定する方法その他その財産から徴収することができると認められる金額を算定する方法として適当な方法により財産の価額を算定する。

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