第1章 通則的事項

第4節 第二次納税義務者の財産の換価の制限

この節は、差押財産の換価が国税債権を確保する最終的な措置であること及び第二次納税義務の補充的性格に照らし、第二次納税義務者の差押財産の換価が制限される場合についての留意すべき事項を定めたものである。

(主たる納税者の差押財産の換価との関係)

19 第二次納税義務者の差押財産の換価については、次の事項に留意する。

  1. (1) 主たる納税者及び第二次納税義務者の差押財産がいずれも換価(金銭による取立ての方法により換価する場合を除く。以下この節において同じ。)をするものであるときは、第二次納税義務者の差押財産については、主たる納税者の差押財産についての公売期日等(公売により売却する場合には最高価申込者の決定の日を、随意契約により売却する場合にはその売却をする日をいう。以下同じ。)を経過した後(入札等の有無は問わない。)に公売公告をするものとして取り扱う。ただし、この処理をすることにより徴収上支障を来すと見込まれるときは、第二次納税義務者の財産については、主たる納税者の財産についての公売期日等を経過した後に売却決定ができるように公売公告をしても差し支えない。
     なお、第二次納税義務者の差押財産の価額が著しく減少するおそれがあると認められるときは、主たる納税者の差押財産の換価に着手しているかどうかを問わず速やかに当該財産について換価する。この場合において、第二次納税義務者に別の財産があり、その別の財産から第二次納税義務の額以上の金額を徴収することができるときは、その別の財産を差し押さえ、著しく価額が減少するおそれのある財産の差押えを解除する(徴収法79条2項1号及び2号)。
  2. (注) 「財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき」とは、差押財産を速やかに換価しなければその価額が著しく減少するおそれがあるときをいい、保存費を多額に要する場合が含まれることに留意する(徴基通第32条関係15)。
  3. (2) 主たる納税者の差押財産が換価をするもので、第二次納税義務者の差押財産が金銭を取り立てるものであるときは、(1)の制限は受けないが、支払督促の申立て、給付の訴えの提起等の強制的な取立ては、時効により消滅するおそれがある場合等やむを得ない場合を除き、行わないものとする(徴基通第32条関係14の(2))。
  4. (3) 主たる納税者の差押財産が金銭を取り立てるもので、第二次納税義務者の差押財産が換価するものであるときは、(1)の制限は受けないが、主たる納税者の債権につき履行請求(催告)をした上、その取立てが困難と認められる場合に限り、第二次納税義務者の差押財産の換価をするものとする(徴基通第32条関係14の(3)参照)。
     なお、上記の処理は、当該債権の弁済期が到来している場合(最近において到来する場合を含む。)に限られることに留意する(以下(4)において同じ。)。
  5. (注) 差押財産が金銭を取り立てるものである場合において、第三債務者の資力が十分でないとき又は差押えに係る債権の帰属につき争いがあるとき等においては、その取立てが困難であると認めて差し支えない。
  6. (4) 主たる納税者と第二次納税義務者の差押財産がいずれも金銭を取り立てるものであるときは、(1)の制限は受けないが、主たる納税者の債権につき履行請求(催告)をした上、その取立てが困難と認められる場合に限り(上記(3)の(注)参照)、第二次納税義務者の債権の取立てをする。この場合において、第二次納税義務者の債権について履行請求(催告)をしても取立てが困難なときは、その強制的な取立てはいずれの債権から行っても差し支えない。

(不服申立て等と換価制限)

20 第二次納税義務につき不服申立て又は訴えの提起があった場合における差押財産の換価については、次の事項に留意する。

  1. (1) 第二次納税義務について不服申立てがされたときは、その不服申立てについての決定、裁決又は取下げがあるまでは第二次納税義務者の差押財産の換価をすることができない。
     なお、当該財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき(19の(1)の(注))又は不服申立人(不服申立人が処分の相手方でないときは、不服申立人及び処分の相手方)から別段の申出があるときは、上記にかかわらず当該財産の換価をすることができる(通則法105条1項、差押えを解除することができる場合について、4(1)及び19の(1)参照)。
  2. (2) 第二次納税義務者が納付通知書による告知、納付催告書による督促又はこれらに係る国税に関する滞納処分につき訴えを提起したときは、その訴訟の係属する間は、当該国税につき第二次納税義務者の差押財産の換価はすることができない(徴収法90条3項、差押えを解除することができる場合について、4(1)参照)。
  3. (3) 主たる納税者の国税について不服申立て又は訴えの提起等がされている場合において、特に第二次納税義務者の差押財産の換価をしないことが適当と認められるときは、その解決に至るまでの期間は換価をしないものとする。
     なお、当該財産の価額が著しく減少するおそれがあるときは当該財産の換価をすることとする(差押えを解除することができる場合について、4(1)及び19の(1)参照)。
  4. (注) 主たる納税者の国税について、通則法第105条第2項又は第6項《不服申立てがあった場合の徴収の猶予等》の規定により徴収の猶予をした場合の第二次納税義務との関係については、5《徴収の猶予》参照。

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