第1章 通則的事項

第2節 主たる納税義務と第二次納税義務との関係

この節は、第二次納税義務と主たる納税義務(第二次納税義務の追及の基因となった納税義務をいう。以下同じ。)とは法律的にはそれぞれ別個の納税義務であるが、第二次納税義務は、主たる納税義務に対していわゆる付従性と補充性とを有するものである点に照らし、その適用に当たっての留意事項を定めたものである。

(督促)

2 第二次納税義務者に対する納付通知書は、主たる納税者に対する督促の有無を問わず発することができる(昭和41年8月22日付徴徴4−13ほか5課共同「国税徴収法基本通達の全文改正について」(法令解釈通達)(以下「徴基通」という。)第32条関係2の(注)1)。

(差押え、交付要求)

3 第二次納税義務者の財産についての差押え及び交付要求(参加差押えを含む。)をすること並びに交付を受けた金銭を受け入れて充当することは、主たる納税者(主たる納税義務を負う者をいう。以下同じ。)の財産の差押えに着手する前に行っても差し支えない(徴基通第32条関係17参照)。ただし、第二次納税義務者の財産に対する差押えは、なるべく主たる納税者の財産を差し押さえた後に行うものとする。

(納税の猶予)

4 主たる納税者の国税についての納税の猶予をした場合と第二次納税義務との関係は、次による。

  1. (1) 主たる納税者について納税の猶予をしている間は、その国税の第二次納税義務について納付通知書による告知、納付催告書による督促、繰上請求又は滞納処分(交付要求書による交付要求を除く。)をすることができない(徴基通第32条関係18参照)。
     なお、主たる納税者の国税について納税の猶予をする前に第二次納税義務者の財産を差し押さえている場合において、その猶予期間中に当該財産の価額が著しく減少することを防ぐために多額の費用を要するため、その財産から配当を受ける見込みがないときは、当該財産の差押えを解除する(国税徴収法(以下「徴収法」という。)79条1項2号)。
  2. (2) 第二次納税義務者の財産につき差押えをしている場合において、国税通則法(以下「通則法」という。)第48条第2項《納税の猶予の効果》の規定により主たる納税者の財産の差押えを解除したときにおいても、上記(1)のなお書に該当する場合を除き、第二次納税義務者の財産の差押えは解除する必要がない。

(徴収の猶予)

5 主たる納税者の国税について通則法第105条第2項若しくは第6項《不服申立てがあった場合の徴収の猶予等》又は同法第23条第5項ただし書《更正の請求があった場合の徴収の猶予》の規定により徴収の猶予をした場合と第二次納税義務との関係については、4《納税の猶予》に準ずるものとする。

(換価の猶予)

6 主たる納税者の国税につき換価の猶予をした場合においても、その国税の第二次納税義務について納付通知書による告知、納付催告書による督促、繰上請求又は滞納処分をすることは妨げない(徴基通第32条関係19)。ただし、第二次納税義務者の財産の換価は、原則として主たる納税者の財産を換価に付した後でなければ、行うことができない(19参照)。

(滞納処分の続行の停止等)

7 主たる納税者の国税について通則法第105条第2項若しくは第6項《不服申立てに係る滞納処分の続行の停止等》又は行政事件訴訟法第25条第2項《執行停止》の規定により、滞納処分の続行の停止又は執行の停止がされた場合と第二次納税義務との関係については、6《換価の猶予》に準ずるものとする。

(会社更生法の中止命令等)

8 主たる納税者につき会社更生法第24条第2項《滞納処分の中止命令等》に規定する滞納処分の中止命令がされた場合においても、その国税の第二次納税義務について納付通知書による告知、納付催告書による督促、繰上請求又は滞納処分をすることは妨げない。ただし、第二次納税義務者の財産の換価は、原則として、主たる納税者の財産を換価に付した後でなければ、行うことができない(19参照)。
 また、主たる納税者につき会社更生法第50条第2項《滞納処分の中止等》の規定により滞納処分の中止がされている期間についても上記と同様である(昭和45.7.16最高判参照)。

(破産手続開始の決定)

9 主たる納税者につき破産手続開始の決定がされた場合においても、その国税の第二次納税義務について納付通知書による告知、納付催告書による督促、繰上請求又は滞納処分をすることは妨げない。この場合においては、次に留意する。

  1. (1) 主たる納税者の財産につき破産手続開始の決定前に滞納処分がされているときは、第二次納税義務者の財産の換価は原則として主たる納税者の財産を換価に付した後でなければ行うことができない(19及び破産法43条2項参照)。
  2. (2) 主たる納税者の財産につき破産手続開始の決定前に滞納処分がされていないときは、破産手続開始の決定後は主たる納税者の財産に対する滞納処分は行うことができず、交付要求をすることとなる(徴基通第47条関係40参照)。したがって、第二次納税義務者の財産に対する換価は何らの制限を受けない。

(納付等)

10 主たる納税者の国税について、納付、充当、税額を減少させる更正等によりその国税の額の一部が減少したときにおいても、なお主たる納税者の国税の残額の範囲において、その第二次納税義務者の第二次納税義務は存続する(徴基通第32条関係20)。
 なお、主たる納税者に対する納税義務の免除は、その納税義務が第二次納税義務の範囲に含まれている限り、その効力が及ぶ(徴基通第32条関係21)。

(滞納処分の停止)

11 主たる納税者の国税についての滞納処分の停止は、第二次納税義務者についても滞納処分の停止事由がある場合に限り行うものとする。したがって、第二次納税義務者から主たる納税者の国税の徴収ができる場合には、当該国税については、滞納処分の停止をしないことに留意する(徴基通第153条関係7本文参照)。
 なお、滞納処分の停止については、次により取り扱うものとする。

  1. (1) 主たる納税者の国税について滞納処分の停止をしている間に、当該国税につき第二次納税義務を負うべき者に対し、納付通知書による告知をしようとするときは、滞納処分の停止を取り消した上で告知する。この場合における滞納処分の停止の取消事由は、「第二次納税義務を負わせる者があるため」とする。
  2. (2) 主たる納税者と第二次納税義務者の双方について滞納処分の停止をした後に第二次納税義務者から徴収ができることとなった場合には、双方の滞納処分の停止を取り消す(徴基通第154条関係2参照)。この場合における主たる納税者についての滞納処分の停止の取消事由は、「第二次納税義務者から滞納国税の徴収をすることができることとなったため」とし、第二次納税義務者についての滞納処分の停止の取消事由は、通常の滞納処分の停止の取消しの場合と同様とする。
     なお、主たる納税者と第二次納税義務者の双方について滞納処分の停止をした後に主たる納税者から徴収ができることとなった場合には、主たる納税者についての滞納処分の停止を取り消せば足り、第二次納税義務者についての滞納処分の停止を取り消す必要がない。
  3. (3) 第二次納税義務者について滞納処分の停止の事由がある場合には、主たる納税者に関係なく、滞納処分の停止をすることができる(徴基通第153条関係7のなお書)。この場合において、第二次納税義務が徴収法第153条第4項又は第5項《滞納処分の停止に係る納税義務の消滅》の規定により消滅した場合においてもその効力は主たる納税者に及ばない(徴基通第32条関係23)。

(時効)

12 主たる納税者について生じた時効の完成猶予及び更新の効力は、第二次納税義務者に及ぶものとする(徴基通第32条関係28)。
 なお、時効については、次の事項に留意する。

  1. (1) 第二次納税義務者がある場合において、主たる納税者の納税義務が時効の完成により消滅するおそれがあるときは、主たる納税者の納税義務の存在確認の訴えの提起等時効の完成猶予及び更新の措置をとるものとする(徴基通第32条関係28なお書、昭和44.2.4福岡地判、昭和47.10.17静岡地判、平成6.6.28名古屋地判参照)。
  2. (2) 主たる納税者の国税の時効が進行しない間(通則法73条4項、会社更生法50条10項等)に、当該第二次納税義務者につき時効の完成猶予及び更新の措置が必要である場合には、(1)と同様の措置をとるものとする。
  3. (3) 第二次納税義務者について生じた時効の完成猶予及び更新の効力は、主たる納税者の国税には及ばない(徴基通第32条関係28)。

(限定承認等)

13 主たる納税者の相続人が限定承認をした場合又は主たる納税者が会社更生法第204条《更正債権等の免責等》の規定により国税の納付義務について免責された場合においても、第二次納税義務の額には増減がない(徴基通第32条関係25、26)。

(第二次納税義務者の納付等)

14 第二次納税義務者による納付又は第二次納税義務者について過誤納金等の充当等があったときは、主たる納税者の国税はその範囲内において消滅する(徴基通第32条関係20)。
 なお、第二次納税義務者について納税の猶予、換価の猶予等がなされても主たる納税者には影響はない(徴基通第32条関係18、19参照)。

(第二次納税義務者に対する免除)

15 第二次納税義務者に対する第二次納税義務の免除は、主たる納税者に対してはその効力を及ぼさない(徴基通第32条関係21)。

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