第3節 猶予期間の延長

50 猶予期間の延長ができる場合

猶予期間の延長をすることができるのは、納税者に猶予期間の延長の事由がある場合であって、通常の納税の猶予、一定期間後に税額が確定した場合の納税の猶予及び申請による換価の猶予については、納税者から猶予期間延長の申請書が提出されているときである。

(注)

  1. 1 1年以内に完納が見込まれないことにより、1年を超える部分の金額を猶予期間の最終月の分割納付金額としているものについては、猶予期間が終了する前のおおむね1月以内に、適宜の方法により納税者と接触してその実情を確認し、延長申請が必要であると見込まれる者に対しては、猶予期間延長申請書の提出を勧奨するものとする。
  2. 2 職権による換価の猶予に係る猶予期間の延長については、滞納者の申請に基づくものではなく、税務署長が職権をもって行うものであるが、滞納者から猶予期間内に完納することができない事情の申出、新たな分割納付計画の提出等があった場合には、猶予期間の延長の適否につき検討する(徴収法第152条第3項、通則法第46条第7項)。この場合において、必要があると認めるときは、滞納者に対し、次に掲げる書類の提出を求めることができる(徴収法第151条第2項、徴収令第53条第1項、徴基通第151条関係13−2)。
    1. 1 分割納付計画書(様式307010-063-1)
    2. 2 財産目録(様式307010-005-1)
    3. 3 収支の明細書(様式307010-005-2)
    4. 4 担保関係書類
       なお、延長しようとする金額(未確定の延滞税を除く。)が100万円以下である場合には、上記2及び3に代えて、財産収支状況書(様式30700-005-3)の提出を求める。ただし、猶予期間の延長に当たって、当初の猶予に係る担保を引き続き担保として徴する場合には、上記4の書類の提出は必要ない。
       もっとも、猶予に係る国税の額を増額する付記登記を嘱託する必要がある場合は、この限りでない。
      (注)担保が第三者の所有財産又は保証人の保証である場合の当該物上保証人等への保証の意思の確認については、上記42(7)《猶予期間終了後の担保の取扱い》と同様である。

(1) 猶予期間の延長事由

猶予期間の延長の事由は、納税者が、猶予期間内に猶予に係る国税を納付することができない場合であって、その納付することができないことにつき、やむを得ない理由があると認められるときである(通則法第46条第7項、徴収法第152条第3項、第4項)。

この場合における「やむを得ない理由」とは、納税者の責めに帰することのできない理由をいい、具体的には、おおむね次に掲げる事情のある場合をいう(通基通第46条関係16参照)。

  • イ 上記44《猶予の取消し又は猶予期間の短縮をする場合》(2)イ又はロに掲げるような事情があって、猶予金額を猶予期間内に納付できなかった場合
  • ロ 猶予(分割納付計画の変更を含む。)に当たっての見込納付能力調査の結果、猶予に係る国税の完納までに要する期間が1年(分割納付計画の変更の場合は当初の猶予期間)を超えると見込まれた場合において、納税者の資力が、その調査において算定したところとおおむね同様の状態で推移していると認められるとき。

(2) 猶予期間の延長の申請

  • イ 申請書等の提出
    納税の猶予又は申請による換価の猶予を受けている納税者が猶予期間の延長を申請しようとするときは、納税の猶予期間延長申請書(様式307010-007)又は換価の猶予期間延長申請書(様式307010-056-12)(以下52までにおいて「申請書」という。)に所定の書類を添付して税務署長に提出しなければならない(通則法第46条の2第4項、徴収法第152条第4項)。
    なお、申請書については、既に猶予を受けている期間内に提出されるよう、延長を要すると見込まれる者に対しては申請書及び添付書類を作成するのに通常要すると認められる期間(おおむね1月程度)を見込んで、申請書の提出を指導する。
  • ロ 記載事項
    申請書には、次の事項を記載しなければならない(通則令第15条の2第6項、徴収令第53条第4項)。
    • (イ) 猶予期間の延長を受けようとする国税の年度、税目、納期限及び金額
    • (ロ) 猶予期間内にその猶予を受けた金額を納付することができないやむを得ない理由及びその猶予の延長を受けようとする期間
    • (ハ) 分割納付の方法により納付を行うかどうか(分割納付の方法により納付を行う場合にあっては、分割納付期限及び分割納付金額を含む。)
      なお、換価の猶予の延長を申請する場合は、分割納付期限及び分割納付金額
    • (ニ) 猶予期間の延長を受けようとする金額が100万円を超え、かつ、猶予期間の延長を受けようとする期間が3月を超える場合には、提供しようとする担保の種類、数量、及び所在(担保が保証人の保証であるときは、保証人の氏名及び住所又は居所)その他担保に関して参考となるべき事項又は担保を提供することができない特別の事情
  • ハ 添付書類
    申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない(通則令第15条の2第5項)。ただし、通常の納税の猶予(通則法第46条第2項第1号、第2号、第5号(同項第1号又は第2号に該当する事実に類する事実に係るものに限る。)に係るものに限る。)をしている場合の猶予期間の延長申請に当たり、震災、風水害等の災害等による書類の滅失、病気等による入院など、納税者の責めに帰さないやむを得ない理由により添付書類を提出することが困難であると税務署長が認めるときは、下記(イ)及び(ロ)の書類については添付する必要はない(通則法第46条の2第5項、通則令第15条の2第7項)。
    • (イ) 財産目録(様式307010-005-1)
    • (ロ) 収支の明細書(様式307010-005-2)
    • (ハ) 猶予期間の延長を受けようとする金額が100万円を超え、かつ、猶予期間の延長を受けようとする期間が3月を超える場合には、通則令第16条の規定により提出すべき書類

      (注)

      1. 1 猶予期間の延長を受けようとする金額(未確定の延滞税等を除く。)が100万円以下である場合には、上記(イ)及び(ロ)の書類に代えて、財産収支状況書(様式307010-005-3)を添付して提出する。
      2. 2 猶予期間の延長に当たって、当初の猶予に係る担保を引き続き担保として徴する場合には、上記(ハ)の書類の提出は必要ない。ただし、猶予に係る国税の額を増額する付記登記を嘱託する必要がある場合は、この限りでない。
         なお、担保が第三者の所有財産又は保証人の保証である場合の当該物上保証人等への保証の意思の確認については、上記42(7)《猶予期間終了後の担保の取扱い》と同様である。
  • ニ 提出された申請書に係る国税が振替納税の対象である場合の取扱いは、上記29(3)《管理運営担当部門への連絡》と同様である。
  • ホ 申請書等の補正及びみなし取下げ
    申請書が提出された場合の申請書等の補正及びみなし取下げに係る手続は、上記32《申請書等の補正》及び33《みなし取下げ》に準ずる。
    なお、書面により補正を求める場合は、「納税の猶予期間延長申請書及び添付書類に関する補正通知書」(様式307010-007-2)又は「換価の猶予期間延長申請書及び添付書類に関する補正通知書」(様式307010-056-14)により納税者に通知し、猶予の延長申請を取り下げたものとみなされる場合は、「納税の猶予期間延長申請のみなし取下げ通知書」(様式307010-007-5)又は「換価の猶予期間延長申請のみなし取下げ通知書」(様式307010-056-16)により納税者に通知する。

51 延長期間

猶予を延長できる期間は、それぞれの猶予ごとに、既に猶予している期間と合わせて2年を超えない期間である(通則法第46条第7項ただし書、徴収法第152条第3項、第4項)。この場合における具体的な猶予の延長期間及び延長期間中における毎月の分割納付金額等については、下記63から66まで《現在納付能力調査》及び下記67から70まで《見込納付能力調査》に定める納付能力調査の結果に基づいて定めるものとする。

(注) 通則法第46条第7項の要件を満たす場合(徴収法第152条第3項又は第4項において準用する場合を含む。)において、納付能力調査の結果、延長後の猶予期間内に納付することができないと認められる金額があるときは、その納付することができないと認められる金額を延長後の猶予期間の最終月の分割納付金額とする。
なお、延長後の猶予期間内に完納が見込まれない場合には、換価の猶予の「納税についての誠実な意思」の判定に当たって、滞納国税の早期完納に向けた経費の節約、借入金の返済額の減額、資金調達等の努力が適切になされているかどうかについて、的確に判断することに留意する。

52 猶予期間の延長の許可又は不許可の決議及び納税者等への通知

(1) 猶予期間の延長の許可

猶予期間を延長する場合には、納税の猶予期間延長許可決議書(様式307010-041)、換価の猶予期間延長許可決議書(様式307010-056-27)又は換価の猶予期間延長決議書(様式307010-074)により決裁を了した上、延長に係る国税の年度、税目、納期限、金額及び延長期間等を納税の猶予期間延長許可通知書(様式307010-043又は307010-044)、換価の猶予期間延長許可通知書(様式307010-056-28又は307010-056-29)又は換価の猶予期間延長通知書(様式307010-076)により納税者に通知する(通則法第47条第1項、徴収法第152条第3項、第4項)。

なお、納税の猶予の期間延長の許可の決議を了した場合には、その決議書の副本により、速やかに管理運営担当部門に連絡する。

また、保証人及び担保財産の所有者(納税者を除く。)がある場合には、これらの者に対して、納税の猶予期間延長許可通知書(保証人等用)(様式307010-046)、換価の猶予期間延長許可通知書(保証人等用)(様式307010-056-31)又は換価の猶予期間延長通知書(保証人等用)(様式307010-078)により猶予期間を延長した旨を通知する(通基通第47条関係1)。

(注) 次に掲げる場合は、申請に対する一部拒否処分に当たるため、納税の猶予期間延長許可通知書又は換価の猶予許可通知書にその理由を附記する(通則法第74条の14第1項、行政手続法第8条)。

  1. 1 申請書に記載された猶予期間の延長を受けようとする金額よりも少ない金額で猶予期間の延長を許可する場合
  2. 2 申請書に記載された猶予期間の延長を受けようとする期間よりも短い期間で猶予期間の延長を許可する場合
  3. 3 申請書に記載された分割納付計画と異なる内容の分割納付計画により猶予期間の延長を許可する場合

(2) 猶予期間の延長の不許可

納税の猶予又は申請による換価の猶予を受けている納税者から申請書が提出された場合において、その延長を認めないときは、納税の猶予期間延長不許可決議書(様式307010-047)又は換価の猶予期間延長不許可決議書(様式307010-056-32)により決裁を了した上、その旨を納税の猶予期間延長不許可通知書(様式307010-049)又は換価の猶予期間延長不許可通知書(様式307010-056-33)により納税者に通知する(通則法第47条第2項、徴収法第152条第4項)。

なお、納税の猶予の期間延長の不許可の決議を了した場合には、その決議書の副本により、速やかに管理運営担当部門に連絡する。

また、保証人及び担保財産の所有者(納税者を除く。)がある場合には、これらの者に対して、納税の猶予期間延長不許可通知書(保証人等用)(様式307010-051)又は換価の猶予期間延長不許可通知書(保証人等用)(様式307010-056-35)により猶予期間の延長を認めない旨を通知する(通基通第47条関係3)。

(注) 納税の猶予の延長不許可又は申請による換価の猶予の延長不許可は申請に対する拒否処分であるため、納税の猶予不許可通知書等にその理由を附記する必要がある(通則法第74条の14第1項、行政手続法第8条)。

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