納税の猶予又は換価の猶予を適用した場合は、的確に履行状況の確認をするとともに、必要に応じてその者の実情を把握するための調査を行い、猶予の取消し、猶予期間の短縮、延長又は分割納付計画の変更をするものとする。

この章は、猶予の取消し、猶予期間の短縮、延長又は分割納付計画の変更をする場合について定めたものである。

第1節 猶予の取消し又は猶予期間の短縮

44 猶予の取消し又は猶予期間の短縮をする場合

納税者が次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、それぞれに定めるところにより、適切に処理する(通則法第49条第1項、徴収法第152条第3項、第4項)。

なお、納税の猶予について、その取消し又は猶予期間の短縮をする場合には、下記45(1)《弁明の聴取》により納税者から弁明を聴取する必要があることに留意する。

(1) 繰上請求の事由のいずれかに該当する事実(通則法第38条第1項各号)がある場合において、納税者が猶予に係る国税を猶予期間内に完納することができないと認められるとき(通則法第49条第1項第1号、徴収法第152条第3項、第4項)。

この場合には、猶予を取り消すものとする。ただし、保全措置が十分である場合等、直ちに滞納処分の執行に着手しなくても徴収上の支障が生じないと認められる場合において、納税者が今後も当初の納付計画どおりの履行を申し出ているときは、猶予を取り消さないこととして差し支えない。

(2) 納税の猶予許可通知書(納税の猶予期間延長許可通知書及び納税の猶予の納付計画変更通知書を含む。)又は換価の猶予(許可)通知書(換価の猶予期間延長(許可)通知書及び換価の猶予の納付計画変更通知書を含む。)により通知された分割納付金額をその分割納付期限までに納付しないとき(通則法第49条第1項第2号、徴収法第152条第3項、第4項)。

この場合には、猶予を取り消すものとする。ただし、税務署長がやむを得ない理由があると認めるとき(次のような事情があり、かつ、猶予を継続しても徴収上の支障がないと認められるとき)には、猶予を取り消さないこととすることができる(通基通第49条関係1)。
 なお、納税の猶予又は換価の猶予を受けている納税者から、分割納付を履行することが困難である旨の相談を受けた場合において、分割納付期限までに納付しない場合は猶予を取り消す旨の説明を行うときは、猶予の取消しの根拠条文(通則法第49条第1項第2号又は徴収法第152条第3項若しくは第4項)、要件及びその取消しが要件に適合する理由を説明する(行政手続法第35条第2項)。この場合において、納税者からその説明内容を記載した書面の交付を求められたときは、上記の事項を記載した書面(様式505000-002又は505000-003)を交付する。

  • イ 猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実であって、おおむね次に掲げるもの。)の発生により予定していた入金がなく、分割納付金額をその分割納付期限までに納付することができなかったとき。
    • (イ) 取引先に対する売掛金等の回収遅れ又は不能
    • (ロ) 取引先との継続的取引契約や資産の売買契約について、契約の相手方の都合による契約解除
    • (ハ) 災害、病気等による売上の減少
  • ロ 猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実に限る。)の発生により臨時の支出(事業の継続又は生活の維持に必要不可欠なものであって、おおむね次に掲げるもの。)を行ったため、分割納付金額をその分割納付期限までに納付することができなかったとき。
    • (イ) 事業用機械の故障による修理又は買換えのための費用の支出
    • (ロ) 病気等による医療費の支出
    • (ハ) 災害等による復旧費用の支出
    • (ニ) 仕入原価又は資材等の高騰による支出
  • ハ 分割納付期限までに納付することができなかった分割納付金額を、おおむね次回の分割納付期限までに納付することが可能であると認められるとき。

    (注)

    1. 1 上記ハについて、納税者に対し、次回の分割納付期限までに納付しない場合は猶予を取り消す旨の説明を行うときは、猶予の取消しの根拠条文(通則法第49条第1項第2号又は徴収法第152条第3項若しくは第4項)、要件及びその取消しが要件に適合する理由を説明する(行政手続法第35条第2項)。この場合において、納税者からその説明内容を記載した書面の交付を求められたときは、上記の事項を記載した書面(様式505000-006又は505000-007)を交付する。
    2. 2 やむを得ない理由があるとして猶予を取り消さないこととした場合には、下記47から49まで《分割納付計画の変更》に定めるところにより、納付計画の変更の要否について検討する(上記20(6)《他の国税の滞納》ロ参照)。
    3. 3 換価の猶予をしている場合において、上記の災害、病気等による売上の減少、病気等による医療費の支出、災害等による復旧費用の支出等があったときは、納税の猶予を適用することを検討する。
      なお、納税の猶予を適用することとした場合には、換価の猶予の取消しを行う。

(3) 税務署長の行った担保の変更等の命令に応じないとき(通則法第49条第1項第3号)。

猶予に係る国税につき提供された担保について、増担保の提供、保証人の変更等を命じた場合(通則法第51条、上記42(5)《担保の変更等》参照)において、指定した期限までに増担保の提供、保証人の変更等がされなかったときは、猶予を取り消すものとする。ただし、他に提供できる担保がないなどの事情(通則法第46条第5項、上記4(8)《担保の提供及び聴取》ロ(ハ)参照)により税務署長の命令に応じることができない場合は、「変更等の命令に応じないとき」に該当しないことに留意する(通基通第49条関係2)。

(4) 新たにその猶予に係る国税以外の国税を滞納したとき(通則法第49条第1項第4号)。

この場合には、猶予を取り消すものとする。ただし、税務署長がやむを得ない理由があると認めるとき(次のような事情があり、かつ、猶予を継続しても徴収上の支障がないと認められるとき)には、猶予を取り消さないこととすることができる(通基通第49条関係3)。
 なお、納税の猶予又は換価の猶予を受けている納税者から、新たに納期限が到来する国税の納付が困難である旨の相談を受けた場合において、新たに国税を滞納した場合は猶予を取り消す旨の説明を行うときは、猶予の取消しの根拠条文(通則法第49条第1項第4号又は徴収法第152条第3項若しくは第4項)、要件及びその取消しが要件に適合する理由を説明する(行政手続法第35条第2項)。この場合において、納税者からその説明内容を記載した書面の交付を求められたときは、上記の事項を記載した書面(様式505000-004又は505000-005)を交付する。

  • イ 猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実であって、例えば上記(2)イに掲げるもの)の発生により予定していた入金がなかったため、新たに納期限が到来した国税を納期限内に納付できなかったとき。
  • ロ 猶予をした時において予見できなかった事実(納税者の責めに帰することができない理由により生じた事実に限る。)の発生により臨時の支出(事業の継続又は生活の維持に必要不可欠なものであって、例えば上記(2)ロに掲げるもの)を行ったため、新たに納期限が到来した国税を納期限内に納付できなかったとき。
  • ハ 猶予をした時から新たに納期限が到来した国税の納期限までの期間が短く、その間に納付資金を確保することが困難であったなどの事情により、その新たに納期限が到来した国税を納期限内に納付できなかったとき。
  • ニ 新たに納付すべき国税を、おおむね次回の分割納付期限までに納付することができると認められるとき。

    (注)

    1. 1 上記ニについて、納税者に対し、次回の分割納付期限までに納付しない場合は猶予を取り消す旨の説明を行うときは、猶予の取消しの根拠条文(通則法第49条第1項第4号又は徴収法第152条第3項若しくは第4項)、要件及びその取消しが要件に適合する理由を説明する(行政手続法第35条第2項)。この場合において、納税者からその説明内容を記載した書面の交付を求められたときは、上記の事項を記載した書面(様式505000-008又は505000-009)を交付する。
    2. 2 やむを得ない理由があるとして猶予を取り消さないこととした場合には、新たに滞納となった国税についても、別途、猶予をすることを検討する。
    3. 3 換価の猶予をしている場合において、新たに滞納となった国税も含めて納税の猶予の要件に該当するときは、納税の猶予の適用を検討する。
      なお、納税の猶予を適用することとした場合には、換価の猶予の取消しを行う。

(5) 偽りその他不正な手段により猶予の申請又は猶予期間の延長申請がされ、その申請に基づき猶予をし、又は猶予期間の延長をしたことが判明したとき(通則法第49条第1項第5号)。

この場合には、猶予を取り消すものとする。

なお、「偽りその他不正な手段」とは、猶予の申請書(猶予期間延長申請書を含む。)又は添付書類につき、次に掲げるような虚偽の事実等を記載し、又は記載すべき事実等を記載しないことをいう(通基通第49条関係4)。

  • イ 猶予該当事実がないにもかかわらず、故意に猶予該当事実がある旨を記載すること。
  • ロ 故意に所有する資産を記載せず、又は存在しない負債を記載すること。
  • ハ 故意に事実よりも少ない収入金額又は事実よりも多い支出金額を記載すること。

(6) 財産の状況その他の事情の変化によりその猶予を継続することが適当でないと認められるとき(通則法第49条第1項第6号、通基通第49条関係5)。

この場合には、次に掲げる場合に応じて、適切に処理する。

  • イ 納税者の資力等が著しく減少したと認められる場合には、改めて納付能力調査を行い、その結果に基づき、分割納付計画の変更又は猶予の取消しをする。
  • ロ 納税者の資力等が著しく増加したと認められる場合には、改めて納付能力調査を行い、その結果に基づき、猶予期間の短縮又は取消しをするものとする。
  • ハ 猶予した国税について、還付金等又は交付要求により交付を受けた金銭の充当等があった場合には、必要に応じて猶予期間の短縮について検討を行うものとする。

45 猶予の取消し又は猶予期間の短縮の手続

(1) 弁明の聴取

  • イ 納税の猶予について、その取消し又は猶予期間の短縮をする場合には、通則法第38条第1項各号《繰上請求》のいずれかに該当する事実があるときを除き、あらかじめ納税者の弁明を聴取しなければならない(通則法第49条第2項本文)。ただし、納税者が正当な理由がなく弁明をしないときは、弁明を聴取することなく猶予の取消し又は猶予期間の短縮をすることができる(通則法第49条第2項ただし書)。
    この場合における「正当な理由がなく弁明をしないとき」とは、災害、病気による入院等、納税者の責めに帰することができないと認められる理由がないにもかかわらず弁明をしない場合をいう(通基通第49条関係6)。
  • ロ 弁明を聴取する場合は、納税者に対し、「納税の猶予の取消し(期間短縮)に対する弁明を求めるためのお知らせ」(様式307010-062)を送付する。
    なお、弁明の聴取は、口頭又は書面のいずれの方法によっても差し支えないが、口頭による場合には、その聴取した内容を明確に記録しておくものとする。

    (注) 「納税の猶予の取消し(期間短縮)に対する弁明を求めるためのお知らせ」において、弁明を聴取する期限を指定し、その指定日までに納税者から連絡等がない場合は、「正当な理由がなく弁明しないとき」に該当するものとして、弁明を聴取することなく猶予の取消し又は猶予期間の短縮をすることとして差し支えない。

(2) 換価の猶予の場合

職権による換価の猶予又は申請による換価の猶予について、その取消し又は猶予期間の短縮をする場合には、弁明を聴取する必要はない(徴収法第152条第3項、第4項、徴基通第152条関係8)ものの、滞納者について取消事由が生じた場合は、やむを得ない理由(上記44《猶予の取消し又は猶予期間の短縮をする場合》(2)及び(4)参照)の有無など、滞納者の実情を把握した上で、換価の猶予の取消し又は猶予期間の短縮を検討する。

(注) 滞納者の実情の確認は電話連絡等により行うが、滞納者が連絡の依頼に応じないなどによりその実情の確認を行うことができない場合には、「猶予中の納税について」(様式304000-005)等を送付し、指定日までに滞納者から連絡等がない場合は、やむを得ない理由はないものとして猶予の取消し又は猶予期間の短縮を行うこととして差し支えない。

(3) 猶予の取消し又は猶予期間の短縮の決議及び納税者等への通知

猶予の取消し又は猶予期間の短縮をした場合は、納税の猶予取消決議書(様式307010-031)、換価の猶予取消決議書(様式307010-069)又は納税(換価)の猶予期間短縮決議書(様式307010-052)により決裁を了した上、その旨を納税の猶予取消通知書(様式307010-033)、換価の猶予取消通知書(様式307010-071)又は納税(換価)の猶予期間短縮通知書(様式307010-054)により納税者に通知する(通則法第49条第3項、徴収法第152条第3項、第4項)。

なお、納税の猶予の取消しの決議又は納税の猶予の期間短縮の決議を了した場合には、その決議書の副本により、速やかに管理運営担当部門に連絡する。

また、保証人及び担保財産の所有者(納税者を除く。)がある場合には、これらの者に対して、納税の猶予取消通知書(保証人等用)(様式307010-035)若しくは換価の猶予取消通知書(保証人等用)(様式307010-073)又は納税(換価)の猶予期間短縮通知書(保証人等用)(様式307010-056)により猶予の取消し又は猶予期間の短縮をした旨を通知する(通基通第49条関係7)。

(注)

  1. 1 猶予期間の短縮をしたことによる分割納付計画の変更については、下記47から49まで《分割納付計画の変更》に定めるところによる。
  2. 2 猶予の取消し又は猶予期間の短縮は不利益処分であるため、納税の猶予取消通知書等にその理由を附記する必要がある(通則法第74条の14第1項、行政手続法第14条)。

46 取消し後の滞納処分

猶予を取り消したときは、原則として、あらかじめ納税者に納付の催告、差押えの予告等を行った上で滞納処分に着手する(徴基通第47条関係18参照)。

なお、徴している担保については、通則法第52条《担保の処分》の規定により処分を行う。

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